はたらく人を元気にするウェブマガジン 福利厚生研究所 by SHINKO

改めて理解!働き方改革とは?いつから始まった?具体例を一挙紹介

改めて理解!働き方改革とは?いつから始まった?具体例を一挙紹介

改めて理解!働き方改革とは?いつから始まった?具体例を一挙紹介のアイキャッチ画像
更新日|2023年7月28日
所長|いくた
この記事の概要

「働き方改革」とは、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などといった日本が直面する課題への対応策を総称したものです。実効性を伴う法整備が進み、2019年4月1日には働き方改革関連法として施行されたことで、中小企業を含むすべての事業所が課題解決への対応を迫られています。今回は、今さら聞けない「働き方改革」の基本から具体策まで、詳しく解説していきます。

目次

働き方改革とは?

女性社員

「働き方改革」とは、従業員一人ひとりの多様な働き方を可能にすることで、「一億総活躍社会」を実現するための取り組み全般を指します。具体的には、長時間労働の是正や非正規雇用労働者の処遇改善など、労働制度を抜本的に改善しようとする施策のことです。

働き方改革の目的は、主に「生産性の向上」「労働者のワークライフバランスの向上」「人材の確保・育成」の3点に絞ることができ、これらはすべて日本が直面している喫緊の課題です。働き方改革を推進することで成長と分配の好循環を構築し、すべての就労者にとって、より良い将来への展望に向けた道筋をつけることが改革の大きな狙いとなります。

働き方改革に向けた具体的な取り組みとしては、「労働時間の短縮」「テレワークやフレックスタイムの導入」「労働者のスキルアップの促進」「多様性の尊重」などさまざまな視点が考えられます。

過労死や健康の悪化を防止するためには、長時間労働の是正や労働時間の管理に重点を置いた取り組みがまず欠かせません。また、生産性を上げながら従業員のライフワークバランスを改善しようとすれば、時間や場所にとらわれない働き方の導入が必要ですが、一つの方法としてテレワークやフレックスタイムの導入は効果的な取り組みといえます。

ジェンダーや年齢、国籍など、さまざまな背景を持った人たちが働きやすい職場を作るなど、多様性への配慮も求められます。さらに、従業員が新たな技能を身につけてキャリアアップを形成することに対して、教育や訓練という形で支援を行うことも欠かせない視点です。

これらの取り組みが組織全体に生産性の向上や雇用の安定、職場環境の改善などをもたらし、従業員一人ひとりの自己実現の達成につながります。このように、働き方改革は、社会全体が健康で豊かな生活を送るために不可欠な取り組みだといえるのです。

いつから始まった?

働き方改革が法的な制度としてスタートしたのは2019年4月1日、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(通称、働き方改革関連法)」が制定されました。大企業先行で適用が開始され、中小企業については個別の事情に配慮しながら助言指導を行う猶予期間を設けたことで、2020年4月1日からの施行となりました。

法律の施行に伴い厚生労働省はガイドライン「働き方改革~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~」を発表し、改革実現に必要な取り組みについての要旨をまとめて施策の浸透を図っています。

この中で、実現に向けた具体的なプランがロードマップのかたちでまとめられており、働き方の現状と課題、その対策について示したうえで、2026年度までの施策実行の予定が示されました。各企業は、このロードマップに沿って改革を進めていくようになりますが、とりわけ重点的に取り組むポイントとして「同一労働同一賃金」「副業・兼業の推進」「テレワークの推進」「労働時間法制の見直し」の4つが示されています。

働き方を推進する背景

オフィスビル

そもそも、なぜ働き方改革を推進する必要があるのでしょうか。その背景には日本が直面している社会的な問題が隠されています。その問題を端的に言えば、このまま何もしなければ働き手が足りなくなるということです。その現状は「少子高齢化」や「働き手のニーズの変化」といったキーワードで浮き彫りにされてきます。

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少

少子高齢化が急速に進行する日本では、今後、深刻な労働力不足に陥ることが懸念されています。労働力の主体となる「生産年齢人口」は、1990年代をピークに下降の一途をたどり、2040年には1200万人、約20パーセント減少するという試算もあります。

このままいけば企業の労働力が不足し、それをカバーするために長時間労働が慢性化するという負のスパイラルに陥ることは明白です。働き方改革は、生産年齢人口がもたらすこのような負の連鎖を断ち切るために必要とされます。

育児や介護との両立など、働く人のニーズの多様化

高齢化社会の進展は、家族内での介護負担を増加させています。これにより仕事と介護の両立が困難になり、働き手が介護のために離職しなければならない事態も生じてきました。

また、女性の社会進出が進んだことで、男性も育児に参加するケースは増えてきていますが、完全に両立できる段階には至っておらず、介護や育児を行っている人にとって、従来の労働形態のままでは対応しきれないニーズが増えています。

根底には仕事と私生活の両方を充実させることで、相互に良好な相乗効果を生み出す「ワークライフバランス」という考え方があり、これらに対応するためにも、柔軟な働き方が可能な環境を整備することが必要となっています。

働き方改革関連法とは

国会議事堂

働き方改革を支えるのが、2019年から順次施行された「働き方改革関連法」です。とはいえ、これは働き方改革のために新たに制定された新法ではなく、関連する既存の8つの法律を改正するための法律を指します。すなわちこれら一連の法的変更が働き方改革を推進するエンジンとなされているというわけです。働き方改革とその関連法によって改正が進められる法律は以下の8つになります。

・労働基準法
・労働安全衛生法
・労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
・じん肺法
・雇用対策法
・労働契約法
・短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)
・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)

働き方改革関連法における11の変更点

チェンジ

働き方改革を推進するために改正された8つの働き方改革関連法のうち、特に重要なポイントとして既存の法律に変更が加わった点があります。それが次に紹介する11の変更点です。

(1)時間外労働の上限規制の導入

1947年に労働基準法が制定されて以来、今回初めて時間外労働に上限規制が設けられました。労働者の働き過ぎ防止の観点から、原則として時間外労働は「月45時間かつ年360時間以内」となります。

臨時的な特別の事情があって労使が合意した場合でも「月100時間未満、年720時間以内、複数月の平均残業時間が80時間」が条件になり、これを超えると刑事罰が科せられます。例外措置として、建設業など一部業種では2024年までの猶予期間が設けられましたが、それ以降はすべての事業所に対して規制が適用されるようになります。

(2)勤務間インターバル制度の導入促進

勤務間インターバル制度とは、勤務が終了した時点から翌日再び出社するまでの間に、一定時間以上の休息時間を確保する仕組みのことをさします。

「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」の改正に伴って、この制度の導入促進が企業の努力義務として定められました。

(3)年5日の年次有給休暇の取得

有給休暇が10日以上付与されている労働者に対して、使用者は最低5日間の年次有給休暇を取得させなければならないと義務付けられました。

労働基準法を改正したことによる新たな規定で、守らない場合は刑事罰が科せられます。

(4)月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ

残業をはじめとした時間外労働が、月60時間を超える場合は割増賃金率を50パーセントに引き上げることが定められました。

中小企業に関しては25パーセントとされていましたが、2023年の4月からは中小企業も含めて50パーセントが適用されています。

(5)労働時間の客観的な把握

健康管理の徹底などの観点で、使用者には労働者の勤務時間の状況を客観的に把握しておくことが義務付けられるようになりました。

対象となる労働者は、管理職や裁量労働制適用者も対象となります。

(6)「フレックスタイム制」の清算期間延長

始業や就業の時間を労働者が自由に決めることができるフレックスタイム制は、これまで最大1カ月の適用しか認められませんでしたが、清算期間が3カ月まで延長されました。

これにより、繁忙期や閑散期、また各自の都合に合わせた労働時間の調整が行いやすくなりました。

(7)高度プロフェッショナル制度の導入

高度な専門知識を持ち、一定以上の年収を有する労働者は、職務範囲が明確であるという条件のもとで、労働時間規制や割増賃金支払いといった労働基準法の規定の対象外として扱うことができる「高度プロフェッショナル制度」が導入されました。

ただし前提として本人の同意と労使委員会の決議が必要になります。

(8)産業医・産業保健機能の強化

労働者の健康管理とその維持・確保の観点から、管理職や裁量労働適用者にいたるまで、すべての労働者に関する労働時間の把握が義務付けられるとともに、産業医やカウンセラーなどを積極的に導入して、長時間労働者への面接指導を行うなどする産業保健機能の強化が求められるようになりました。

(9)不合理な待遇差の禁止

同一企業内における正社員と非正規社員に待遇の面で差をつけるなど、雇用形態による不合理な待遇差を解消するよう、禁止事項が設けられました。

非正規社員とは、パートなどの短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者などをさすものです。

(10)労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規社員に対する待遇に関しての説明は、これまでパートなどの短時間労働者と派遣労働者については義務化されてきましたが、有期雇用労働者に対しては説明義務がありませんでした。

今回の改正で短時間労働者や派遣労働者と同様に、有期雇用労働者にも待遇の説明義務が規定されました。

(11)行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争手続(行政ADR)の規定の整備

待遇や賃金などをめぐって、労働者と事業主との間で何らかの紛争が生じるケースがあります。これらのトラブルを裁判所で解決するのではなく、都道府県労働局が間に入って調整するものを裁判外紛争手続き、通称行政ADRといいます。

同時に、行政が事業主に対して助言や指導を行うこともあり、これは行政による履行確保措置といわれます。行政ADRや行政による履行確保措置はこれまで有期雇用労働者への適用がありませんでしたが、関連法による改正で適用規定が整備されました。

働き方改革での中小企業の定義

働き方改革関連法では、大企業と中小企業とで適用開始時期が異なるものもあります。自社がどちらの分類に属するのかを判断する目安として、中小企業の定義を確認しておきましょう。中小企業の定義は業種によって異なっており、中小企業基本法によって業種ごとに以下のように定められています。

・製造・運輸・建設業、その他の業種:出資金もしくは資本金の総額が3億円以下、または常時使用する従業員数が300人以下
・卸売業:出資金もしくは資本金の総額が1億円以下、または常時使用する従業員数が100人以下
・小売業:出資金もしくは資本金の総額が5000万円以下、または常時使用する従業員数が50人以下
・サービス業:出資金もしくは資本金の総額が5000万円以下、または常時使用する従業員数が100人以下

「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」が見極めのポイントになります。

働き方改革を進めるメリット

メリット

働き方改革は、程度の差はあれ企業運営に何らかの変化を強いることになりますので、大変だと感じられるかもしれません。しかし、その趣旨をよく理解して施策をうまく導入していけば、次のような点で企業にとって多くのメリットをもたらすことが期待されます。

生産性の向上

働き方改革の重点ポイントとしても挙げられていますが、柔軟な働き方の導入や適切な労働時間の管理は、マンネリ化したルーチンワークに変化をもたらします。残業時間が規制されて労働時間が短縮される傾向になれば、従業員自らが時間の使い方を工夫せざるを得なくなります。

これにより、ボトムアップの効率化が進むとともに、長時間労働から解放された柔軟な働き方が従業員のモチベーションも向上させて、結果的に生産性の向上につながっていくことが期待されます。

離職率の低下

労働生産人口が低下していくことで働き手不足が全業種的に加速するため、人材確保は企業の存続を左右する重要施策になるといっても過言ではないでしょう。従来通りの労働環境のまま手をこまねいていると、離職率のアップが大いに懸念されます。

働き方改革を導入することで、従業員が就労しやすい職場環境が提供されれば、職場への魅力を感じて定着し、結果的に人材の安定確保と欠員採用に向けた獲得コストの削減をはかることができるようになります。

採用力の向上

働き方改革を推進すれば離職率の低下を防ぐことができるのと同じ理由で、魅力的な職場環境に人材は集まってきます。今いる従業員の離職防止を守りの人事戦略であるとすれば、優秀な人材を新たに確保するのは攻めの人事戦略であり、提供する条件次第で採用力は向上していくでしょう。

新たな人材確保に向けては、多様で柔軟な働き方の幅を広げることが大切で、フレックスタイムやテレワークなど、人材を引き付けるような就労環境を提供することで、採用競争に勝ち抜くことが可能になります。

企業イメージの向上

働き方改革は、大企業・中小企業で適用時期に若干の違いはあるものの、全ての事業所がチャレンジしていくオールジャパンの取り組みです。

国家的課題にどのように取り組んでいるのかは、衆人の注視するところであり、働き方改革に先進的な施策を導入することは社会的に責任を果たす企業としてのイメージを向上させ、ひいては顧客や投資家からの信頼を得ることにつながります。その意味でも、働き方改革への取り組みは大きなチャンスの一つと捉えるべきでしょう。

労働者の健康管理

これまでの考え方では、職場における健康管理は労働者自身で行うものだとされていました。働き方改革では、この健康管理を事業者に義務付けています。これは健康経営という考え方の一環として理解することができます。

労働者の健康の維持・増進を目的とした健康経営は、心身ともに健康な状態で就労することにつながり、集中力を高め生産性を向上させます。労働時間の適切な管理やリモートワークの導入など、働く人の健康維持に積極的に関与することは、結果的に長期的な生産性を保つことができるようになるのです。

働き方改革の具体例

女性社員3人

働き方改革では、事業所の実情に即した実効性のある取り組みを行うことが必要ですが、次に紹介するのは、比較的汎用性が高く、どの職場でも応用することが可能な具体例になります。

リモートワークの導入

決められた場所に出社して就労する伝統的な労働集約型勤務体系は、組織力の連携強化といった点でメリットがありましたが、ワークライフバランスが重視されるにしたがって、労働者の自由な働き方を阻害するといった弊害も見られるようになりました。

そこで注目されるようになったのがリモートワークの導入です。リモートワークとは、自宅やカフェなど、オフィス以外の場所で仕事をする働き方であり、通勤時間の削減や、ワークライフバランスの改善に有効な働き方として期待されます。新型コロナウイルスの影響により、この働き方が広く認知され、導入を進める企業が増えています。

フレキシブルワーク

労働者が自分で場所や時間を決めて働く就労形態として、フレキシブルワークも浸透し始めています。就労場所は自宅やカフェなどに限らず、旅行先やホテルなど自由に決められる点が一般的なリモートワークとの違いです。

出勤時間や退勤時間を自由に設定できるのも特徴で、自分のライフスタイルを重視する人や、育児や介護など家庭状況と仕事の両立をはからなくてはならない人にとって、大きな恩恵を得られることが期待されます。

ジョブシェアリング

ジョブシェアリングとは、通常はフルタイム勤務者が一人で担当する職務を複数人で分け合う新しい仕組みの働き方です。一つの仕事を複数の人が分担することで、労働時間の短縮やスキルの補完をはかることができます。

一人当たりの仕事の分担が減るので、介護や保育など、家庭での事情を抱えている人にとっては気持ちの負担が軽くなり、労働者がより専門的な業務に集中することができるようになることで、企業側にとっても生産性の向上が期待されます。

成果主義

日本の人事制度は、終身雇用制や年功序列の考え方がもとになって給与や待遇の内容を決定するスタイルが主流でしたが、働き方改革の導入で、生産性の向上が課題として浮き彫りにされて以降、仕事で成し遂げた成果や成績、実力によって処遇を決める成果主義を重視する企業も増えてきました。

コロナの影響でテレワークが増え、対面での人事評価が難しくなったという点で、成果によって評価を行うという公平性も成果主義の導入に拍車をかける一因となっています。

事業内保育所の開設

出産を経て職場復帰をする女性従業員にとって、最も頭の痛い問題の一つは、赤ちゃんの保育を頼める場所が見つからないということです。待機児童が解消できていない社会環境の中で、仕事を続ける意欲はあっても、実際問題として預ける場所がないために退職しなくてはならないというケースは少なくありません。

この問題を解決する方法として企業内保育所の設置があります。自社内に保育所を設けることで、社員が育児と仕事を両立させることを目指すものですが、企業内に保育所ができれば、子育て中の労働者が仕事を続けやすくなることはもちろん、近隣の待機児童を受け入れることで、企業のイメージアップにも繋がるメリットがあります。

パートから短時間勤務の正社員への転換

働き方改革の中の「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」では、パートタイム労働者や有期雇用労働者の正社員への転換措置を義務づけています。

これは、パートタイムの従業員が一定の条件を満たせば、短時間でも正社員となることができるという制度です。この仕組みを自社内で制度化すれば、事業者側は優秀なパート職員を戦力として正社員に迎えることができ、パートタイム労働者の立場に立てば安定した雇用を得られることが期待されます。

ダイバーシティ・インクルージョン

「多様性」を意味するダイバーシティは、就労の場では「国籍や性別、年齢、宗教などさまざまな属性」といった内容を示し、インクルージョンとは「包括する」という意味で用いられます。

ダイバーシティ&インクルージョンというひとまとまりの言葉で使われることが多く、二つをつなげて「国籍や性別、年齢、宗教などさまざまな属性を等しく認め、それぞれの個性を生かしながら、能力に応じた適材適所での活躍の場を提供する」といった考え方になります。

生産労働人口の減少やビジネスのグローバル化といった社会事情を背景に、働き方改革では重視される理念の一つであり、これによって企業の持続可能な成長と社会の包摂性のさらなる促進が期待されます。

男性社員の育児休暇取得促進

働き方改革では、出産後の女性が職場に復帰しやすい環境づくりを推進するとともに、男性の育休取得率の向上が必要であるとされています。

厚生労働省の調査によると、2020年度の男性の育児休業取得率は男性は7.48%と低迷しました。これらの結果も踏まえて、2022年に「改正育児・介護休業法」が施行され、「出生時育児休業(産後パパ育休)」制度の新設に至りましたが、これは男性が子の出生から8週間の間に合計4週間分の育休を取得することを制度化したものです。

このように男性も育児に参加し、家庭と仕事の両立をはかる取り組みは広く浸透しつつあります。これにより、育児を担当するのが女性だけでなく男性も参加することで、ジェンダー平等が進むことが期待されます。

女性社員の育児休暇明けの職位保障

出産した女性労働者が育児休業を取得している間は、他の人が業務をする必要があります。育児休業中にその仕事分担が定着すると、育休明けで復帰した際、担当していた仕事がそのまま他の人に引き継がれ自分の仕事がなくなっていた、という事態は少なからず生じる問題です。

このように、育児休暇明けに以前の職位が保障されないことは労働者のモチベーションを低下させ、生産性を著しく損なう恐れもあります。

そこで設けられたのが、育児休暇から戻った女性労働者に以前と同等の職位を保障する制度です。これにより、女性が出産や育児によってキャリアを断念することなく、安心して働き続けられることが期待されます。

親子出勤制度

出産後まもなくは産休で子どもと一緒にいられるとしても、育休明けは保育園に預けたり、社内保育所を利用したりする必要が生じてきます。

特に子どもに持病があったり、何らかの事情でよその保育園に預けることが困難であったりした場合は、ある程度大きくなった子どもでも一緒に職場に連れて行き、社内保育所などを利用しながら勤務を続けるのが親子出勤制度です。

これにより、親が子育てと仕事を両立しやすくなることが期待され、この出勤制度を定着させるために社内保育所の設置を推進する企業もあります。

時短勤務制度

育児や介護などといった家庭の事情を抱えた労働者が、所定労働時間よりも短い時間で勤務できる仕組みが、短時間勤務制度です。2009年の「育児・介護休業法」によって順守が義務付けられたもので、原則として1日6時間勤務に短縮することが認められるという内容です。

この制度により、介護や育児といった家事をこなしながら仕事を両立させることが可能となり、労働者は健康上も無理することなく仕事と生活のバランスを保つことができるので、事業所にとっても人材の流出を食い止められるというメリットが期待されます。

働き方改革における課題

積み木が積みあがる

働き方改革の導入は、労働者にとってはもちろんのこと、人材の確保や生産性の向上をはかりたい事業所にとっても非常に大きなメリットが見込まれます。しかし、改革を実現するためにはぜひとも解決していかなくてはならない課題もあります。それが「長時間労働の改善」「正規・非正規の格差解消」「高齢者の就労促進」「介護・子育て世代へのサポート」の4点です。

長時間労働の改善

日本の経済発展は、勤勉な勤労意識によって支えられてきました。そのため「誰よりも長く働くこと」「休日出勤もいとわず仕事すること」といった奉仕の精神が過度に美徳とされる風潮があり、これが長時間労働を常態化させて、健康問題を引き起こしたり、最悪の場合には過労死さえも引き起こす要因となっています。

これを改善するためには、まず働き方に対する意識改革を行って、働く時間の上限設定や、適切な休憩時間の確保などといった具体的な行動に繋がる最初の一歩を踏み出していくことが必要です。

正規・非正規の格差解消

正規雇用と、パート・アルバイト・派遣などの非正規雇用との間には、賃金や待遇面でいわれのない格差が存在しているケースが多いものです。これら雇用形態に関わらない公平な待遇の確保も、意識的に解決するべき喫緊の課題の一つです。

正規雇用と同じ仕事をしているのに支払われる報酬がまったく異なるのであれば、モチベーションの低下にもつながって、生産性の低下を招く恐れも生じてきます。これらの格差を解消し、すべての労働者が平等に働ける環境を作ることが求められています。

高齢者の就労促進

原則として65歳までは事業主の雇用継続が義務付けられている高齢者ですが、65歳を過ぎても意欲的で能力のあるシニアは決して少なくありません。労働力不足を解消する人材としての戦力化はもちろん、経験やスキルを活かした職場の活性化に向けて高齢者の就労促進をはかるメリットは大きく、働き方改革がめざすダイバーシティの実現にも貢献します。

高齢者が健康であれば働き続けることができるように、まずは雇用の機会を提供したり、働きやすい環境を作ったりすることから始めるのが大切なポイントになります。

介護・子育て世代へのサポート

人材の確保を阻害する大きな要因の一つに、子育てや介護による孤立化があります。仕事を続けたい意欲はあっても、子育てや介護に時間を取られ、両立することが物理的に無理だと分かれば仕事を辞めざるを得ません。事業所としては、このような家庭の事情を抱えて悩む世代へのサポートをできるだけ厚くする必要があります。

具体的には、育児・介護休暇の取得を企業内で制度化したり、テレワークや時短勤務などに社内ルールを設けたりすることで柔軟な勤務形態を提供し、労働者の負担を軽くしていくという方法があります。また、子育て世代をサポートする点では職場内の保育施設の設置なども非常に効果的です。

働き方改革とウェルビーイング

笑顔の親子

「働き方改革」のことを言う場合、「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉がよく引き合いに出されます。働き方改革とウェルビーイングは密接に関連しています。

ウェルビーイングとは、「よく生きること」や「健康で満足した生活を送ること」を意味し、物理的、精神的、社会的な健康の全体的な状態を指すものです。

一方の働き方改革は、企業が労働者の生産性を向上させ、その結果として企業のパフォーマンスを向上させるための取り組みです。当然ビジネス上の損得勘定が働きます。

しかしそうとは言いながら、働き方改革はやはり従業員のウェルビーイングを向上させることを目指すべきです。例えば、過度な労働時間の短縮、適切な休憩時間の確保、柔軟な勤務時間の導入、リモートワークの適用などは、従業員のストレスを軽減し、仕事と私生活のバランスを改善することが可能です。また、ダイバーシティ・インクルージョンを重視し、従業員一人ひとりが自分は尊重されるべき存在で、ここなら安心して働けると思える職場環境を作り出すことも、ウェルビーイングの向上に十分つながっていきます。

結果として、従業員のウェルビーイングが向上すれば、そのモチベーションやエンゲージメントが高まり、組織全体の生産性やパフォーマンス向上に寄与することになるのです。働き方改革とウェルビーイングは、このように相互に強く影響し合う関係にあります。

働き方改革を推進しよう

働き方改革とは、日本が直面している働き手の減少や、働き手のニーズの多様化といった課題への対応策です。労働時間に上限を設けるなどして労働者のワークライフバランスを高める一方、事業者にとっても、離職率の低下などのメリットが感じられる取り組みでもあります。

働き方改革を推進するにはしっかりした施策を講じることが大切ですが、効果的な方法の一つとして、心幸グループの福利厚生支援サービスの利用をおすすめします。外部のサービスを利用することで、効率的に働き方改革を推進することができるでしょう。

はたらく人を元気にする会社

メルマガ会員登録

メルマガに登録して、
最新の情報をキャッチ!

  • 福利厚生研究所の記事更新のお知らせ
  • 福利厚生や健康経営のおすすめ情報
  • 心幸グループ(運営元)のキャンペーン情報
  • 健康経営サポートオンラインセミナーのご案内 等

メールのアイコンMAIL MAGAZINE

    メールアドレス*