会社の家賃補助の相場とは?ないデメリットとは?メリットも含めて解説
企業独自の福利厚生には、さまざまなものがあります。その中で、従業員のモチベーションや企業のブランドイメージの向上などのメリットをもたらすものの一つが「家賃補助」です。一方で、家賃補助がなければメリットが得られないだけではなく、デメリットが生じる可能性も高まるでしょう。本記事では、会社の家賃補助の相場から税金の有無、支給条件、積極的な導入によるメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。
目次
会社から支給される家賃補助とは?
家賃補助とは、従業員の住宅にかかる費用の一部を福利厚生として会社が支給する制度です。賃貸住宅の場合には名称の通り、家賃の一部を補助として給与に上乗せする形で会社が従業員へと支払います。
家賃補助と表現する場合でも、持ち家の従業員に対しては住宅ローンの一部を補助する会社が大半です。住宅手当といった表現もみられますが、明確に区別されているケースは少ないでしょう。制度の詳細な内容は、会社ごとに異なります。
家賃補助などの住宅手当は全ての会社にある?
福利厚生には、法律で定められている法定福利厚生と、会社が自由に制度を設けられる法定外福利厚生があります。家賃補助は法定外福利厚生にあたるため、取り入れていない会社も少なくありません。
厚生労働省が実施した「令和2年就労条件総合調査」によると、「住宅手当など」を取り入れている会社は全体の47.2%という結果でした。300人以上の規模の会社では60%以上が導入しているものの、全体では半数以下にとどまるようです。全ての会社にあるどころか、半数に迫る割合とはいえ、家賃補助などの住宅手当のある会社は少数派といえるでしょう。
会社の家賃補助の相場
家賃補助は法定外福利厚生のため、その内容も会社が自由に決定できます。実際に支給する金額も同様です。令和2年就労条件総合調査では、住宅手当などの平均支給額も公表されています。
それによると、従業員1人あたりの月の平均支給額は、1万7800円という結果でした。家賃補助の支給額は、同制度を導入している会社の割合と同様に、事業規模が大きくなるほど増える傾向がみられます。
同調査によれば、従業員1000人以上の会社では毎月1人あたり平均で2万1300円が支給されているようです。同様に、300〜999人の会社では1万7000円、100〜299人の会社では1万6400円、30〜99人の会社では1万4200円となっています。会社ごとに差はあるものの、月に1〜2万円程度の支給額が家賃補助の相場といえそうです。
家賃補助と住居手当・社員寮・社宅はどう違う?
ここまで、家賃補助と住宅手当を同様の制度として捉え、厚生労働省のデータなどもあわせて紹介しました。同様の制度は、他にも住居手当と表現されることがありますが、従業員の住居にかかる費用を補助しているのであれば、家賃補助や住宅手当などと意味合いは変わりません。
会社や人によって表現方法に違いがあるといった程度の認識で問題ないでしょう。違いがあるとすれば、賃貸住宅の家賃の補助を目的としたものが家賃補助であり、それに加え持ち家の住宅ローンへの補助も行う制度が住居手当となる点です。ただ、賃貸住宅に住んでいる従業員のみに補助をする会社は多くはないと考えられるため、やはり、同じ意味で使われるケースが大半であるといえます。
従業員の住居に対しての補助を目的とする会社の福利厚生には、他にも社員寮や社宅などがあります。社員寮と社宅は、どちらも会社が借りた物件や会社が所有する物件を従業員へと貸し出したり無償で提供したりするものです。社員寮と社宅はいずれも相場よりも安く住めるため、従業員にとってはメリットの大きい福利厚生となるでしょう。
社員寮と社宅も、明確な定義の違いはありません。あえて違いを挙げるとすれば、社員寮が単身者向けであり、社宅が家族も含めた世帯向けの住宅であると使い分けられるケースがある点です。ただ、こちらも厳密に使い分けられているわけではなく、会社や人ごとに表現が異なると認識しておいて問題ないでしょう。
家賃補助には税金がかかる
日本では、会社から給与を支給された場合、従業員はその金額に応じて税金を納めなければいけません。福利厚生による手当の一部は給与にあたり、これには家賃補助も含まれます。
つまり、会社から家賃補助を受け取った従業員は、家賃補助の分、多く税金を納める必要が生じます。上記で紹介した社員寮や社宅も従業員の住居にかかわる福利厚生です。
これらは、ルールに沿って算出された賃貸料相当額と呼ばれる一定額の家賃か、それ以上を従業員が会社へと支払っていれば、給与としての課税対象とはなりません。しかし、無償で提供したり賃貸料相当額を下回っていたりすると、給与として課税されます。
会社の家賃補助の支給条件
家賃補助は法定外福利厚生のため、制度内容は会社が自由に決められます。その際に重要なのが、家賃補助の支給条件です。ここでは、制度設計の際にポイントとなる条件を解説します。
雇用形態
いわゆる正社員のみを雇用している会社もあれば、非正規社員を雇用している会社もあるでしょう。家賃補助は、正社員のみを支給対象としている会社が大半です。
しかし、正社員への登用を見込んでいる場合や労働時間が長い場合などは、非正規社員であっても家賃補助などを支給している会社もあるようです。
勤務年数
勤務年数を家賃補助の支給条件の一つとして設定している会社もあります。勤務年数が一定を超えたら家賃補助の支給が受けられたり、勤務年数が多くなるほど補助金額が増えたりする制度としている会社もあるでしょう。
勤務年数を会社への貢献度と捉えるところでは、特にこのような傾向がみられます。
世帯主かどうか
従業員が世帯主であれば家賃補助を支給し、世帯主でなければ支給対象外としている会社もあります。ただし、世帯主かどうかのみを支給の条件として設けてしまうと、会社のために懸命に働いている世帯主以外の従業員からは不満が噴出する恐れもあるでしょう。
同じ会社に夫婦で働いている場合などに適用する条件とすれば、夫婦で一緒に住む住宅に対し家賃補助を支給できるため、そうした不満が出づらくなります。
持ち家?賃貸?
家賃補助という表現であっても、持ち家の従業員にも住宅ローンの補助として支給されるのが一般的です。しかし、一部の会社では、持ち家か賃貸住宅かで支給額や支給の有無が変わるケースもあるようです。
単に持ち家か賃貸住宅かで家賃補助の有無を決めてしまうと、やはり従業員から不満が出かねません。可能な限り多くの従業員が公平に受けられる制度にするのが重要なポイントです。
会社から自宅までの距離
会社から自宅までの距離を支給条件の一つとして設けている会社もあります。距離だけではなく、駅の数を設定している会社もあるようです。一般的には、会社から自宅までの距離が近いほど、家賃補助の金額が高くなります。
あるいは、会社から一定の距離以内に住んでいる従業員のみを対象に、家賃補助を支給している会社もあるでしょう。従業員の住む家からの距離が近いほど、会社としてはメリットが大きいためです。
家賃補助のメリット
家賃補助は従業員にとってはもちろんのこと、福利厚生として導入する会社にとっても多くのメリットをもたらします。ここでは、従業員へともたらすメリットと会社が得られるメリットを、それぞれ解説します。
従業員のメリット
まずは、従業員へともたらすメリットです。これらのメリットが得られれば、従業員の企業へのエンゲージメントが向上し、結果的には、会社にも恩恵をもたらすでしょう。
経済的負担の軽減
多くの人にとって、住居にかかる費用は負担の大きな固定費となります。家賃補助が得られれば、従業員の月々の固定費は減少するでしょう。固定費の削減は自由に使えるお金を増やし、従業員はそれを他の生活費や投資、貯蓄に回せます。
特に、まだ給与があまり高くはない若い世代にとって、家賃補助による経済的負担の軽減効果は決して小さくはありません。仕事へと活かせる資格取得やその他の学習にお金を回す従業員が生まれる効果も期待できます。
住宅の選択肢が増加
一般的に、都心部や駅から近いエリアなど利便性の高いところにある物件は、家賃が高い傾向がみられます。家賃補助が受けられれば、そのようなエリアにある物件へと住める従業員が増えるでしょう。学校や病院、買い物ができる場所などが近くにあれば、家族で暮らす従業員にとっては大きなメリットとなります。
また、さまざまなタイプの物件の中から、好みに合ったところに住める可能性が高まる点もメリットです。ワークライフバランスも整えやすくなり、仕事にも集中しやすくなる効果も期待できます。
勤務地へのアクセス
多くの会社は、都心部など交通の便のよい場所にあります。家賃補助により、そのようなエリアに住めれば、会社へのアクセスがよくなるでしょう。通勤時間の短縮にもつながり、通勤によるストレスの軽減も期待できます。
それらの効果は、やはりプライベートとの両立を実現するメリットももたらします。通勤にかかる費用が削減できる点もメリットです。
安定した生活
家賃補助の制度は、従業員の経済的な安定をもたらす一つの手段となり得ます。経済的安定は、精神的安定にもつながるでしょう。家賃やローンの支払いへの負担が減れば、その分、生活の基盤が固まりやすくなる点がメリットです。
経済的にも精神的にも余裕が生まれ、それを仕事へと活かす従業員が出てくる効果も期待できます。経済的不安からの無理な借り入れや過度なギャンブルなども避けられ、安定した生活を送りやすくなるでしょう。
モチベーションの向上
経済的負担や精神的負担の軽減により安定した生活が送れれば、自然と仕事へのモチベーションも向上するでしょう。また、会社が従業員の生活をサポートしてくれているといった強い実感により、会社へのエンゲージメントや所属感、帰属意識なども高められます。
モチベーションの低下が原因で体調を崩すケースが少なくなる効果も期待できます。
会社のメリット
つづいて、家賃補助が会社へともたらすメリットを紹介します。従業員にとってのメリットは、そのまま会社にも恩恵をもたらしますが、特にどのような点についてのメリットが大きいのかみてみましょう。
採用力アップ
家賃補助は、特に新卒者や若い年代の従業員にとってメリットの大きな福利厚生の一つです。給与に加え、福利厚生の内容を重視し、就職先や転職先を選定する人も少なくありません。
家賃補助制度を設けることで若い求職者にとって魅力的な企業となり、人手不足の解消や優秀な人材の獲得がしやすくなる可能性が高まります。採用活動の際のアピールの一つとしても有効活用できるでしょう。
従業員の定着率向上
福利厚生に対する満足度が高ければ、安易に転職を考える従業員は減るとみられます。特に、家賃補助のような経済的なサポートが受けられる環境では、他の企業へと転職する動機が少なくなる可能性があります。少なくとも、福利厚生への不満が原因で離職を考える従業員はあまり出てはこないでしょう。
結果的に、従業員の定着率向上へとつながり、人材やノウハウ等の流出も防げます。採用や育成にかかるコストの削減効果をもたらす点も大きなメリットです。
勤怠改善
家賃補助により従業員の通勤時間が短縮されれば、遅刻や欠勤が減少する可能性が高まります。結果、他の従業員や管理職の負担も軽減されやすくなる点は大きなメリットの一つです。
また、会社全体の効率や生産性の向上も期待できるでしょう。従業員の勤怠改善は人事の勤怠管理のしやすさにもつながります。
従業員の生産性向上
賃貸補助によって従業員の生活が安定し、住環境も充実すると、仕事の質や生産性にもよい影響を及ぼす可能性が高まります。通勤によるストレスの軽減も、同様の効果をもたらすでしょう。
肉体的にも精神的にも安定した従業員が増えれば、集中力も持続し、会社全体の活性化にもつながります。
企業のブランドイメージ向上
家賃補助は法定外福利厚生のため、特に設ける必要はありません。しかし、従業員の生活をサポートするこの福利厚生は、外部からの評価や企業のブランドイメージを向上させる一つの要因となり得ます。
人材の獲得のみならず、顧客やビジネスパートナーからの信頼を得られる効果も期待できるでしょう。
家賃補助がない会社のデメリット
家賃補助の福利厚生がないと、いくつかのデメリットが生じる恐れがあります。ここでは、家賃補助がない会社に起こりかねないデメリットやリスクをまとめます。
採用の競争力低下
家賃補助は、多くの従業員にとって魅力的な福利厚生の一つといえます。特に、地価を含めた物価の高い都市部などのエリアでは、この福利厚生が従業員のみならず、求職者にとっても重要なものとなります。
家賃補助のない会社は、それだけで魅力が低下するといっても過言ではないでしょう。業務内容や給与などが他の会社とさほど差がない場合、より人材の確保が困難となる可能性が高まります。求職者の応募先の選択肢から除外されるなど、採用に関する競争力の低下は免れません。
従業員のモチベーション低下
従業員の経済的な負担は、業務にも悪影響を及ぼす恐れがあります。経済的負担の原因はそれぞれですが、毎月の家賃や住宅ローンの返済が、それにあたる従業員も少なくないでしょう。
家賃補助の制度がないために、家賃などの負担が原因で経済的不安を抱える従業員は、業務への集中力やモチベーションが低下しかねません。成績や成果があげられなければ会社の業績悪化にもつながり、ときには、大きなトラブルや事故を招くリスクすら生じます。
離職率の増加
家賃補助がないことによる経済的な負担や、会社への満足度、エンゲージメントの低下は、離職や他社への転職を促進させる要因となり得ます。
特に、優秀な従業員は能力も高いため、不満があれば躊躇なく転職を検討・決意するでしょう。離職率が増加すれば、新たな人材の獲得や研修にかかるコストも増加します。業務の遅延や知識・技術の喪失など、会社に多くのデメリットをもたらします。
生産性の低下
経済的な負担に加え長い通勤時間や通勤中のストレスは、業務とは無関係のところでの疲労を増加させます。結果的に、それが業務の効率やクオリティの低下へとつながる可能性を高めてしまうでしょう。
生産性の低下を招き、会社全体の業績悪化を招く恐れも出てきます。コミュニケーションや社内の雰囲気の悪化ももたらし、場合によっては組織が適切に機能しなくなるリスクすらあります。
企業イメージの悪化
家賃補助を導入している会社は、全体の半分ほどといわれています。それでも、家賃補助や、それと同様な役割を持つ福利厚生のない会社は、求職者や業界内から、労働者の権利や健康などを十分に考慮していないとみなされかねません。
会社のブランドやイメージ、評価に悪影響を及ぼし、場合によっては採用や契約、交渉にもデメリットをもたらすでしょう。
緊急時の対応の遅れ
家賃補助により、会社の近くに住む従業員が増える可能性があります。急な業務変更時や緊急事態の発生時に、会社の近くに多くの従業員が住んでいれば、迅速な対応が可能です。
住居にかかる費用を安く抑えようと会社のある都市部から離れたところに住む従業員が多ければ、トラブルの発生時などに対応が遅くなってしまうでしょう。顧客や契約先などにも迷惑をかけてしまいかねない点は、大きなデメリットでありリスクです。家賃補助がない会社は、そのようなリスクを常に抱えていることになります。
家賃補助を含めた福利厚生で従業員の満足度や生産性の向上を図ろう
従業員の住宅費用の一部を会社が負担する家賃補助は、従業員や求職者にとって魅力的な福利厚生の一つです。会社のイメージや業績にもかかわる福利厚生ですが、具体的な制度や導入方法に頭を悩ませる担当者も少なくはありません。
そのような会社や担当者は、福利厚生支援サービスを提供している外部サービスへと問い合わせてみましょう。自社にマッチした福利厚生の導入により、従業員満足度や企業イメージの向上を図ることができます。
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