プレゼンティズムが企業に与える影響と対策!改善方法を導く健康経営とは?

プレゼンティズムが企業に与える影響は、ときに軽視されがちですが、現実には大きなデメリットが存在します。
この記事では従業員におけるプレゼンティズムの改善方法や、健康経営こそがプレゼンティズムを防ぐのに欠かせない取り組みである理由を解説します。
目次
プレゼンティズムとは?

「プレゼンティズム」はWHO(世界保健機関)が提唱する健康問題に起因したパフォーマンスの損失を示す言葉で、近年、企業にとっても見過ごすことのできない問題として注目されています。
なお、経済産業省の『企業の「健康経営」ガイドブック』では、プレゼンティズムの測定方法にまつわる指標が示されています。
「プレゼンティズム(プレゼンティーイズム)」の定義を解説
「プレゼンティズム(Presenteeism)」とは、従業員が病気や体調不良、精神的な不調を抱えながらも出勤をし、十分なパフォーマンスを発揮できない状態を指す言葉です。
一見すると欠勤ではなく職場にいるために問題がないように見えますが、実際には生産性が低下して「ミスが増える」「業務の効率が悪くなる」といった影響が出ているケースが少なくありません。
近年では健康経営の観点からプレゼンティズムが企業の生産性に与える影響や損失が注目されていて、従業員個人の問題にとどまらず企業としての対策が求められています。
「アブセンティズム」(アブセンティーイズム)との違い
プレゼンティズムと対になる概念として「アブセンティズム(Absenteeism)」があります。「プレゼンティズム」と「アブセンティズム」は比較されることも多いので、その違いを正しく認識しておきましょう。それぞれの用語の定義を比較します。
プレゼンティズム・・・出勤はしているが、健康問題などでパフォーマンスが低下している状態
アブセンティズム・・・病気やストレスなどで欠勤・遅刻・早退している状態
大きな違いとして、アブセンティズムは「不在」であるために目に見えて問題を把握しやすい一方で、プレゼンティズムは「出勤している」ために、問題が見過ごされたり軽視されたりしがちです。
また、アブセンティズムのほうが企業への影響が大きいイメージもありますが、長期的な結果としてはプレゼンティズムのほうが企業の生産性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
プレゼンティズムが発生する原因とは?

プレゼンティズムが発生する要因は、ひとつではありません。
代表的なものを、大きく3つの視点から解説します。
従業員の身体的・精神的な健康問題
従業員の健康問題は、プレゼンティズムの典型的な原因のひとつです。風邪や頭痛、アレルギー、腰痛や関節痛などの慢性的な疾患によっても発生します。
また睡眠不足や生活習慣の乱れによっても体調が不安定になり、プレゼンティズムを引き起こします。
さらに、身体的な問題だけでなく精神的な健康問題によっても起こる場合があり、ストレスや“うつ病”、不安障害のほか、なんらかの事情によるモチベーションの低下や“燃え尽き症候群”によっても発生します。
職場の文化や環境の問題
長時間労働や過重労働、さらには同僚や上司、取引先からのパワハラやセクハラといった職場における人間関係の問題も本人の不快感や不安感が増大するにつれて、プレゼンティズムを招きやすくなるでしょう。
「休むのは悪い」という職場文化が存在したり、人手不足による欠勤しづらい環境が文化として根付いていたりすると、休みたくても休めない状況が続き、プレゼンティズムを引き起こしがちです。
日本では長年にわたって「休む=怠けている」と捉えられてしまう風潮があったために、令和になった現代においても、無理をして出勤する人が多い傾向にあります。
仕事に対するプレッシャー
業務への過度なプレッシャーや評価制度への不安も、プレゼンティズムを引き起こします。
従業員は「休むことができない」「早く終わらせなければ」という環境に置かれるために、無理をして出勤しがちなためです。
仕事へのプレッシャーが高い環境ほど、評価への不安や同僚との競争意識、根性論などが影響して、体調が悪くても言い出せず、休息をとりにくい状況になりやすいでしょう。
プレゼンティズムの状態が個人に与える損失や影響とは?

プレゼンティズムは、単に「体調が悪い状態で働く」だけではなく、長期的には個人の健康やキャリアにも大きな影響を及ぼします。3つの視点から詳しく解説します。
疲労の蓄積が続く
体調が悪くても無理をして働き続けると、慢性的な疲労が蓄積して免疫力の低下や生活習慣病のリスクが高まります。例えば睡眠不足が続くと、高血圧・心疾患・糖尿病のリスクが上昇して将来的に健康を損なう可能性が指摘されています。
また疲労が抜けない状態が続くと、気分が落ち込みやすくなりストレスが増加します。ストレスはうつ病や不安障害を引き起こす原因にもなり、仕事だけでなくプライベートにも悪影響を及ぼしやすいでしょう。
体調不良が慢性化すると、最終的にはアブセンティズム(欠勤)に繋がるリスクも高まります。
集中力低下によるミス発生リスク
体調が悪い状態では、脳のパフォーマンスが低下します。具体的には、作業スピードが落ちたり注意力が散漫になったりしやすいでしょう。
最初は小さなミスでも、次第にミスが増えるにつれて重大なエラーや事故に繋がることもあります。
ミスが増えると自己評価が下がり、もっと頑張ろうと無理を重ねてしまって、さらに疲労が溜まる悪循環にも陥りがちです。
仕事への意欲低下
プレゼンティズムの状態が続くと“やる気はあるのに、思うように動けない状態”になりやすく、フラストレーションが溜まる原因にもなりえます。
やがて「頑張っても成果が出ない」や「もうどうでもいい」と感じてしまうほどに無理を続けると、仕事への意欲も急速に低下します。
本来のパフォーマンスが発揮できない状態が続くと、仕事の成果が出にくくなり評価が下がることから、昇進・昇給のチャンスまで逃すといった負のスパイラルにも陥りやすいでしょう。
取り組みは不可欠!プレゼンティズムの状態が企業・会社に与える影響や課題とは?

プレゼンティズムは個人だけでなく、企業にも大きな悪影響を及ぼします。
3つの視点から詳しく解説します。
生産性の低下による損失が発生する
従業員が体調不良や精神的ストレスを抱えながら働くと、作業スピードが落ちてミスが増えがちです。結果的に、生産性は大きく低下します。
また疲労による集中力の低下や判断ミスが生じれば、業務の手戻りが発生して効率も悪くなります。
1人の従業員のプレゼンティズムが続くと、他のメンバーがフォローをすることになり、チーム全体の業務負荷が増加しやすい面も否めません。さらには特定の従業員をフォローする側の従業員にもストレスがかかってしまい、最終的に職場全体のモチベーションが低下するリスクも軽視できません。
結果として人事コストが増える
プレゼンティズムの従業員が社内に増えると、慢性的な体調不良やメンタル不調を抱える社員が増加します。これによって、メンタルケアやリハビリ支援などの企業が負担する健康管理のコストも増えやすいでしょう。
またプレゼンティズムによって従業員の業務パフォーマンスが低下すると、企業はその分の補填要員を採用する必要が出てきます。新しい人材を育成するための研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)のコストもかかります。
関連する離職率が上昇する
プレゼンティズムが続くと従業員の心身の健康は悪化し、離職を考えるようになりがちです。長時間労働が常態化している職場や休みづらい雰囲気の企業では、離職者が増えやすい傾向にもあります。
また優秀な人材ほど、早く離職しやすい面もあり、スキルの高い従業員ほど他社への転職がしやすいため、同僚や上司にやる気がないなと職場環境に不満を持つとすぐに辞める可能性が高いのも現実です。一方で、企業に不満があっても転職が難しい人ほど残りやすいので、組織の活性化が失われるリスクも低くありません。
プレゼンティズムを防ぐために個人で取り組むべきこととは?

プレゼンティズムを防ぐためには「無理をして働く状況を作らないこと」が重要です。
個人ができる対策を紹介します。
休息をしっかりとる
睡眠不足は疲労の蓄積を招き免疫力の低下や集中力の低下につながります。そのため、最低でも6〜7時間の睡眠を確保し、就寝前はスマホを控えて、リラックスできる環境を整えましょう。
長時間集中し続けると作業効率が低下しやすいので疲れたら適度に休憩をとったり、「ポモドーロ・テクニック」(25分作業+5分休憩)を取り入れたりして工夫しましょう。
健康管理を徹底する
栄養バランスの乱れは免疫力の低下や疲労の原因につながるので、タンパク質・ビタミン・ミネラルはしっかり摂取するとともに、ジャンクフードや加工食品はなるべく控えて食生活を整えましょう。
また、適度な運動を習慣にして、健康診断も定期的に受けましょう。
適切にストレスを発散する
趣味や好きなことに没頭する時間をつくると、仕事のストレスを軽減できます。また家族や友人、同僚と気軽な会話を楽しめると、気分がリセットされてストレスも軽減されやすいでしょう。
精神的な安定を保ちストレス耐性を向上させるには、瞑想や深呼吸、ヨガなどのリラックス方法を取り入れるのも一案です。
プレゼンティズムを改善するための企業の取り組みを解説

企業がプレゼンティズムを改善するためには、積極的な取り組みが求められます。
3つの視点から解説します。
従業員の健康管理・保健意識をサポートする仕組みづくり
健康管理を「自己責任」にせず、企業全体でサポートする仕組みをつくるのは効果的な取り組みです。
健康診断やメンタルヘルス対策を充実させ、定期健康診断の実施だけでなく、ストレスチェックやメンタルヘルス相談窓口を設置していくのも効果的でしょう。
また、オフィス内にリラクゼーションスペースや仮眠室を設置して従業員が気軽にリフレッシュできる環境をつくったり、フィットネス補助金などで従業員の運動習慣をサポートしたりといった取り組みも有益です。
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短期的な戦略から長期的な戦略まで、効果を感じられる取り組みをご提案しています。後ほど詳しく解説します。
休暇をとりやすい職場環境の整備
最低でも年5日の有給休暇取得を義務化しそれ以上の取得も推奨する取り組みや、「リフレッシュ休暇」や「バースデー休暇」などの特別休暇を設け、休みをとりやすくする工夫も有効です。
古い価値観を持ったままの上司や管理職の意識改革も大切ですので、管理職が率先して休暇を取得して「休むのは悪いことではない」という文化を浸透させるのも効果的でしょう。
また「誰かが休むと仕事が回らない」という雰囲気をなくすために、業務の分担や調整を適切に行う取り組みも必要です。
業務の属人化を防ぐ仕組みづくり
特定の人しかできない仕事をなくして、誰でも対応できるように業務マニュアルを整備するなど業務の標準化やマニュアル化の推進には一定の効果が期待できます。
「この人がいないと仕事が進まない」という状態をつくらないために、業務を複数人で分担するよう徹底するほか、業務の自動化(RPA・AIの導入)やデジタルツールの活用で、負担の偏りを減らすのも効果的です。
結果重視!心幸の「健康経営」がプレゼンティズム対策になる理由

心幸の「健康経営」は従業員の健康をサポートでき、プレゼンティズムの対策にも有効です。企業が抱える課題に対して期待できる効果を解説いたします。
出前からだ測定会
従業員の健康状態を把握する『出前からだ測定会』は、健康リスクの早期発見と予防に役立ちます。
従業員は自身の健康状態を理解して、適切な対策を講じやすくなるメリットがあります。健康状態の改善は、業務中のパフォーマンス向上につながりプレゼンティズムの予防にも寄与します。
生活習慣改善セミナー
『生活習慣改善セミナー』は、従業員が健康的な生活習慣を身につけるための知識を提供する機会です。適切な食事や運動、睡眠の習慣は、心身の健康を維持して業務中の集中力や効率を高めるのに効果的で、プレゼンティズムのリスクを低減します。
体調管理アプリ
『体調管理アプリ』は、従業員が日々の健康状態を記録・管理するツールとして機能します。
アプリを通じて従業員は自身の体調の変化に気付きやすくなり、早期の対応が可能になるほか、企業側も従業員の健康データを把握して適切なサポートを提供できます。
従業員の健康意識を高める取り組みには、プレゼンティズムの発生を防ぐ効果があります。
まとめ:プレゼンティズムへの企業側の対策は不可欠

従業員におけるプレゼンティズムの影響を企業側が軽視すると、“疲労が蓄積し集中力が低下して、ミスが増える”という悪循環に加えて、仕事が嫌になる状況にも陥りやすいことから、早期の取り組みが欠かせません。
「個人の問題であって、会社は関係ない」と軽視せずに、プレゼンティズムは健康面・精神面・キャリア面のすべてにおいて悪影響を及ぼしますので、企業側も従業員の健康を守るために、休みやすい環境づくりや適切な業務負担の調整を進めていきましょう。