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長時間労働の対策8選|残業を減らすヒントは、企業の労働時間の適正管理にあり

長時間労働の対策8選|残業を減らすヒントは、企業の労働時間の適正管理にあり

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公開日|2023年11月9日
所長|いくた
この記事の概要

日本では2019年に「働き方改革関連法」が施行され、一定以上の残業は罰則が科せられるようになりました。多くの企業が長時間労働の是正に向けて本格的に取り組んでいますが、すぐに改善される問題ではないというのも現実です。長時間労働・残業問題の解決には、企業側で「適切な労働時間管理の体制を整える」ことが求められます。本稿では長時間労働発生の原因や対策について詳しく述べるので参考にしてみてください。

目次

長時間労働とは?

夜の街

日本で長らく問題視されている「長時間労働」ですが、実はこの言葉自体には明確な定義がありません。○○時間以上働いたら長時間労働であるというハッキリした基準が設けられていないことが、判断を曖昧にして労働環境の悪化に繋がっているとも言えるでしょう。

しかしこれは「長時間労働が法的に定義されていない」というだけのことであり、労働時間の長さを推し量る目安がない訳ではありません。長時間労働解決の第一歩は長時間労働と見なされる目安を把握し、課題に対する理解を深めていくことなのです。

長時間労働は過労死や精神障害増加の原因になるなど、日本においては社会問題と化して世間からの注目度も高まっています。職場での一時的な問題ではなく、従業員の健康や生活の質にまで悪影響が及んでしまうのです。根本的な解決を目指すべく国単位では法改正が、企業単位では働き方改革への積極的な取り組みが進められています。

長時間労働が引き起こされるメカニズムは単純なものではなく、それぞれのケースで原因が異なるというのも厄介なポイントです。問題が起きている現場ではまずその原因を解明し、適切な対策を打ち出すことが重要になります。長時間労働の原因は1つとは限らず、複数の要素が複雑に絡み合っているケースもあるので留意しておきましょう。一般的に長時間労働の原因となり得る可能性が高いものには、次のような要素が挙げられます。

・企業風土
・業務内容
・タスク量
・管理者側のマネジメントスキル
・従業員の意識
・業務遂行に関するスキル
・労使関係

一つ一つ解決していくことが大切になります。

法律で定められている労働時間の限度について

女性社員

長時間労働そのものが定義されていないとは言え、日本で労働時間に関する規定が存在しない訳ではありません。雇用者としては「労働基準法」の内容を押さえた上で、適切な管理体制を敷く必要があるでしょう。ここでは労働基準法の中で述べられている労働時間について、特に重要な3つのポイントを解説します。

法定労働時間

労働基準法第32条では労働者の就業時間を「1日8時間・週40時間以内」と定めています。1ヶ月を大まかに4週間とすると、1ヶ月あたりの上限労働時間は原則として約160時間です。

しかし働き手不足が慢性化している日本において、各従業員の月間労働時間を160時間以内に収めながら業務を回すのが難しいケースも少なくありません。

そのため企業がとある協定を従業員との間で結び、なおかつ所管の労働基準監督署へ届出ることで一定の時間外労働が認められています。

「36協定」で定められた時間外労働(残業)

前述した労使間での協定は一般的に「36協定(さぶろくきょうてい)」と呼ばれています。これは同協定が労働基準法の第36条によって定められているためです。

36協定では「月45時間以内・年360時間以内」の時間外労働を認めています。企業が従業員を残業させる場合は原則として36協定の内容を厳守する必要があり、違反が判明すると6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるので十分に注意しましょう。労使間での合意と労働基準監督署への届出が必要である点も忘れてはいけません。

「特別条項付き36協定」で定められた時間外労働(残業)

業界によっては繁忙期や緊急時の仕事量が大幅に増加し、36協定の範囲内では対応しきれない場合があります。「特別条項付き36協定」はこうした実情を踏まえた上で、労使間での締結および監督署への届出によって「年間720時間以内まで」の残業を認めるというものです。

ただし特別条項付き36協定を適用するにはいくつかの条件を満たす必要があります。まず「時間外労働+休日労働の合計が月100時間未満」であること、加えて「2・3・4・5・6ヶ月間における平均時間外労働時間がすべて80時間以内」であることが前提です。また、月間の時間外労働が45時間を超えて良いのは年間6ヶ月までとされています。

従来の特別条項付き36協定には時間外労働の上限が設定されておらず、「45時間以上の時間外労働は年間で6ヶ月まで」という制限のみでした。その事実が長時間労働の温床になっているという判断から、働き方改革関連法では具体的な上限が設けられる運びとなったのです。

2019年4月からは大企業で、翌2020年4月からは中小企業でも適用されています。違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金対象です。

健康に害を及ぼす可能性のある長時間労働とは?

残業中

従業員が長時間労働によって健康や精神状態を害した、という報道を見聞きしたことのある人も多いでしょう。実害が認められたものは裁判に発展するケースも多く、報道の内容は他人事ではありません。一般的に長時間労働が健康を害するラインとしては、以下のような点が基準にされています。

過労死ライン

慢性的な長時間労働は最悪の場合、従業員の死亡に繋がる可能性があります。取り返しのつかない事態を避けるためには、労働時間の過労死ラインを把握しておくことも重要です。過労死は業務上の過度な負担による脳血管疾患・心臓疾患、あるいは精神疾患に起因する自殺が主とされています。

「発症前の1ヶ月間に約100時間を超える時間外労働」もしくは「発症前の2~6ヶ月間で1ヶ月当たり約80時間を超える時間外労働」2つが、過労死が発生する可能性の高いラインです。

もちろん、この2つの基準までは従業員を働かせても良いという訳ではありません。あくまでも危険水域の目安であり、これらのラインに近い状況ほど緊急の対応が求められます。

業務に起因する精神障害の基準

人間の精神状態は健康に大きく影響をおよぼします。慢性的な長時間労働は従業員に身体的・心理的な負担を強いるだけでなく、十分な休息やプライベートの時間までも奪ってしまうでしょう。

リフレッシュの機会を失った従業員は仕事の疲れやストレスを取ることができず、どんどん精神的に追い詰められてしまう可能性があります。長時間労働が精神障害の原因としては認定されるラインは、以下の基準が一般的に知られています。あくまで目安であり、以下の基準に該当しない場合でも状況によっては過労死として認定されるケースもあるので留意してください。

・発病直前1ヶ月間に約160時間以上の時間外労働
・発病直前3週間に約120時間以上の時間外労働
・発病直前の2ヶ月間に連続して1ヶ月あたり約120時間以上の時間外労働
・発病直前の3ヶ月間に連続して1ヶ月あたり約100時間以上の時間外労働

日本の労働時間や残業に関する現状

夜の街

世間ではよく「日本人は働き過ぎだ」と言われており、長時間労働による過労死や精神障害が発生しているのも事実です。では実際のところはどのような状況になっているのか、ここでは労働時間にまつわる様々なデータを見ていきます。

日本の総実労働時間

厚生労働省による「令和4年版過労死等防止対策白書(第一章労働時間やメンタルヘルス対策等の状況)」では、日本における2021年時点の平均総実労働時間は年間で「1633時間」という結果が出ています。単純計算で1ヶ月あたりの実労働時間を算出すると1633÷12=約136時間となり、1週間あたりだと34時間です。

ちなみに1993年時点の総実労働時間は1920時間となっており、前年比こそ微増であるものの基本的に労働時間は年々減少傾向にあります。同調査では「一般労働者」と「パートタイム労働者」に分けてそれぞれの実労働時間も算出しました。一般労働者の1993年時点における総実労働時間は2045時間、2021年時点では1945時間です。一方パートタイム労働者を見てみると1993年時点の総実労働時間は1184時間、2021年時点では946時間となっています。

ただし、全体の総実労働時間が減少しているのは「パートタイム従業員の割合」が大きく影響している点にも留意しておきましょう。1993年に全体の14.4%だったパートタイム労働者の割合は、2021年までに31.3%まで上昇しました。企業の取り組みや行政による働きかけがあったことも事実ですが、短時間労働者が占める割合は約30年間で2倍以上に膨れ上がっているのです。

長時間労働問題は根本的な解決に至っていないのが現実となっています。また、2019年から2020年にかけて比較的大きな平均労働時間の減少が見られますが、これには新型コロナウイルスの流行が影響していると言えるでしょう。

参考/厚生労働省「令和4年版過労死等防止対策白書(第一章労働時間やメンタルヘルス対策等の状況)」

長時間労働する人の割合

総務省の「労働力調査」では業務が忙しくなりがちな月末1週間において、週60時間以上働いている雇用者の割合を調査しています。同調査によると、月末1週間で「就業時間が35時間以上60時間未満」の人は1993年時点で全体の67.1%、2021年時点では60.8%となりました。

「週60時間以上」と回答した人は1993年で11.0%、2021年は5.0%です。年齢・性別ごとに見ると30~39歳および40~49歳の男性が多く、新入社員や若手よりも中間管理職世代の残業が目立つ形となりました。また、月末1週間の就業時間が40時間以上になる人のうち「就業時間60時間以上」に該当する人は2021時点で8.8%でした。1993年に16.6%だったことを考慮すると、残業を行う人のの割合は順調に減少傾向であると言えます。

参考/総務省「労働力調査」

リモートワークによる影響

長時間労働問題を語る上で見落としがちなのが、リモートワークによる影響です。日本でも2020年初頭に本格的な流行が始まった新型コロナウイルスによって、多くの企業でリモートワークやテレワークの導入が進められました。こうした動きは時間や場所を問わず自由なワークスタイルを実現させるため、働き方改革に一定の効果をもたらしたとされています。しかし職場で業務に従事しないということは「管理者の監督が行き届きにくい」ということも意味しているので注意が必要です。

日本労働組合総連合会が実施した「テレワークに関する調査2020」によると「通常の勤務よりも長時間労働になることがあった」と回答した人は51.5%、「時間外・休日労働をしたにも関わらず申告していない」という回答は65.1%となりました。さらに「時間外・休日労働をしたにも関わらず勤務先に認められない」の回答が56.4%にも上っている点は深刻です。その主な理由としては「申告しづらい雰囲気だから(26.6%)」「時間管理がされていないから(25.8%)」などが挙げられています。リモートワークはただ実践するだけでなく、企業側の理解や管理体制構築が重要と言えるでしょう。リモートワークは知らないうちに従業員が長時間労働へ陥っているパターンが多いので要注意なのです。

参考/日本労働組合総連合会「テレワークに関する調査2020」

海外との比較

厚生労働省の「労働時間やメンタルヘルス対策等の状況」では、日本の労働時間を諸外国と比較する調査も行われました。労働環境や経済事情は各国で異なるため数字だけを比べても正確な実情は分かりませんが、自国を理解するために比較対象を設けるのは有効なアプローチです。同調査ではまず日本と諸外国における「年平均労働時間の推移」が示されています。これによると日・韓・米・英・仏・独の6カ国中、日本の年平均労働時間は2021年時点で上から3番目です。経年の推移を見ると欧米諸国はおおむね横ばいですが、日韓では2012年から右肩下がりの減少傾向が見られます。

同調査では「週労働時間が49時間以上の者の割合」についても日本を諸外国と比較していますが、この項目では日本が韓国に次いで上から2番目という結果になりました。日本は全体の15.1%が週に49時間以上働いている結果となり、そのうち半数以上が男性です。3位のアメリカは14.6%なので僅差であるものの、日本で週49時間以上働く人の割合はフランスの約2倍・ドイツの約3倍ということが分かります。総合的に見ると日本は諸外国と比較して年平均労働時間が長く、長時間労働者の割合も高いという結果になりました。

参考/厚生労働省「労働時間やメンタルヘルス対策等の状況」

なぜ長時間労働が改善されないのか(残業が削減されない背景)

時計と計画表

労使の双方にとって根深い問題となっている長時間労働ですが、解決が難しいと言われる理由には様々なものが挙げられます。本稿の冒頭でも軽く触れましたが、ここからは長時間労働が改善されない理由について深く掘り下げていきましょう。

業務量の増加

日本では多様なサービスが展開されるようになり、消費者の利便性は大きく向上していると言えるでしょう。しかしその反面、現場が業務過多に陥って長時間労働が発生しているケースも珍しくありません。

新しいサービスを始めたりサービス品質を向上させたりすると、現場では新しい業務が必要になる場合が多いです。しかし既存の業務を整理しないまま新しいタスクが追加されると、当然業務量は増える一方になります。

また、本来は不要な打ち合わせ・資料作成・朝礼などが慣例的に継続されている場合も業務量増加の大きな原因です。業務内容や納期がタイトに組まれたスケジュールでは、従業員が所定の労働時間内に仕事を終わらせることが難しく残業が増加します。

人手不足

日本のビジネスでは特に人手不足が深刻な問題とされています。総務省の「人口推計(2022年)」によると、高度経済
成長期に70%近くだった生産年齢人口の割合は2022年時点で59.4%まで落ち込みました。

この数字は統計開始から2022年の間で過去最低となっており、企業が人材確保に苦しむ大きな原因です。業務量に変化がないもしくは増えているにも関わらず現場の人手が足りなければ、当然従業員1人あたりの仕事量が増えるため長時間労働の慢性化に繋がります。

また、業務内容によっては専門的な知識やノウハウが求められるものもあるでしょう。必要なスキルや知識を持った人材が社内で不足していると、既存のスタッフがその役割を補うために過労となるケースも少なくありません。

参考/総務省「人口推計(2022年)」

企業文化

企業はそれぞれ独自の経営方針に基づいて事業活動を展開しており、重視するものや社内習慣も異なります。しかし場合によっては企業文化が長時間労働の解決を阻害している可能性があるので注意が必要です。

例えば日本には古くから「何かに長時間取り組むことは努力の証」という風潮が根付いています。この価値観が労働の現場で肥大化すると残業が「勤勉」「献身的」と評価されるようになり、本来必要ではない残業や長時間労働そのものが美化されしまうのです。若い頃にたくさん残業した世代の人が経営・管理する企業では特にこうした風潮が強く見られます。

マネジメントの管理不足

従業員の長時間労働は、現場でのマネジメントが不足している可能性も高いです。例えば上司・マネージャーとチームとの間でコミュニケーションが不足していると、業務の重複や誤解が生まれて効率的に仕事が進まないことがあります。一部の従業員に業務量が偏っていたり、チーム全体の労働時間が不透明になっていたりといった状況を管理職が見過ごしてしまうケースも少なくないのです。

また、長時間労働は中間管理職当人にとっても他人事ではありません。働き方改革への対応や不足している人手のカバーなど、管理職の業務量も増加傾向にあるためです。こうした問題を根本から解決するためには、管理職だけでなく人事部の力も必要になってくるでしょう。

技術やツールの不足

技術の世界は日進月歩であり、日々便利なツールが開発されてビジネスシーンへも導入されています。業務の自動化や管理効率化に役立つツールが現場に不足していると、いつまで経っても従業員の負担は軽減せず長時間労働問題も解決しません。

サービス品質を向上させるためにはまず現場の環境改善が重要であり、業務効率化に成功して初めて道が開けます。テレワークの導入が進んでからは特に技術やツールの導入が必要性を増していると言えるでしょう。

報酬体系

社内の報酬体型に問題があると、従業員の長時間労働が慢性化するリスクがあるので注意してください。このパターンでは「基本給が安い」「残業手当が高い」の2パターンが考えられます。

基本給が安ければそれを補うために従業員が進んで残業する傾向があり、また残業手当が高い場合も経済的なゆとり欲しさに残業が常態化する可能性があるでしょう。どちらも「従業員が自分から望んで残業している」というやや特殊なケースですが、結果的に長時間労働問題が発生している事実は変わりません。

本人の意識の甘さ

マネジメント体制や就業規則を整えても、結局のところ現場で働くのは従業員当人たちです。したがって、長時間労働に対する当人の意識が甘ければ問題の解決は遅々として進みません。

例えば「最初から残業ありきで業務スケジュールを組んでいる」「残業代目当てに時間外労働している」「皆残業しているから」といったケースが多いです。長時間労働の解決には労使が足並みを揃えることが重要であると言えます。

8つの対策で長時間労働を解決

チーム

長時間労働問題を解決するためのアプローチは、それぞれの現場で有効なものが異なります。以下では8つの対策を紹介していくので、自社に適したものを見極めて導入を検討してみてください。

タスクの明確化と優先順位の設定

長時間労働の原因が業務過多の場合には、タスクを明確化して優先順位を決めるのが有効なアプローチです。毎日行うような業務は習慣として現場に根付いているため、実際どのくらいのボリュームになっているのか把握できていないケースも珍しくありません。

まずは管理性を向上させるために具体的なタスクリストを作成して各業務を視覚化し、その上で不要なものがあれば工数の削減や業務そのものの廃止を検討しましょう。この作業は管理職が独断で行うのではなく、現場の従業員と協議しながら進めるのがベターと言えます。プロジェクト管理ツールを使用すればチームメンバー全員との情報共有が容易になるのでおすすめです。

効果的なコミュニケーション

現場の状況が把握しきれていないケースでは、積極的なコミュニケーションも長時間労働解決に効果的です。良質なコミュニケーションはチームの生産性を向上させるために不可欠な要素であり、ビジネスの基本と言っても過言ではありません。

ここで大切なのは一方的な指示伝達ではなく、従業員と管理職の間で交わされる「双方向のコミュニケーション」です。従業員は管理職からの問いかけに対して適切に応答し、管理職は従業員からの報告・相談に対して真摯に耳を傾けることが求められます。お互いの頻繁かつ明瞭なフィードバックこそが、誤解や作業重複の削減を実現して労働時間短縮に繋がっていくのです。

適切な人材の配置と教育

現場の業務が効率的に進まないようであれば、人材の配置と教育体制を見直してみてください。適切なスキルを持った人材を適切な業務に配置すれば、従来よりもスムーズに仕事が進むようになる可能性が高いです。

そのためにはまず、個々の従業員が持つスキルや業務適性を正確に把握する必要があるでしょう。普段の業務成績・アンケート・ヒアリングなどを通じて情報を集めて、当人たちの希望を考慮した上で適材適所の配置を心がけてみてください。必要に応じて継続的な教育やトレーニングを実施することで、スキルセットの拡充および従業員のモチベーションアップにも効果が期待できます。

最新技術の導入

毎日同じことを繰り返す定型業務が多い現場では、最新の技術やツールの導入が効果的に働く可能性が高いです。単純作業はコンピューターによって自動化できるタスクが多いため、ツールによって業務完了までの時間が大幅に短縮されれば従業員はコア業務へリソースを割けるようになります。

また、人間の判断が必要になる業務であってもITツールやAIシステムのサポートが効果的です。ツール導入にはコストがかかるため、社内の予算と相談しながら検討してみてください。

フレックスタイムの導入

業務による従業員への精神的負担が大きいケースでは、フレックスタイム制の導入がおすすめです。フレックスタイム制ではコアタイムと呼ばれる時間帯に現場で勤務していれば、出社および退社の時間を従業員が自由に設定できます。

多様性が重視されるようになった現代社会では、人々のライフスタイルにも多様化が見られるようになりました。フレックスタイム制は各人が自分の状況に合わせて柔軟な働き方を実現できる制度であり、ストレス軽減や生産性向上に効果が期待されています。

健康とウェルビーイングの推進

従業員の健康管理を促進し、ウェルビーイングの意識を高めてもらうことも結果的に長時間労働問題の解決に寄与します。仕事の資本は身体であり、健康的な心身は仕事のパフォーマンスや生産性を向上させてくれるでしょう。

健康的に働ける職場は従業員満足度も高く、離職率低下にも効果が期待できます。「ゆとりのある休憩時間を推奨する」「快適なリフレッシュスペースを設ける」「フィットネス空間を設置する」「栄養に配慮した社食を充実させる」といった取り組みが、疲労蓄積防止策の一例です。

参考/健康経営サポートサービス「オフけん」

報酬体系の見直し

人件費に業務の進捗や成果が伴っていないのであれば、報酬体系の見直しを検討しましょう。給与は従業員の生活水準に直結するため、労働態度やモチベーションに大きく影響するポイントになります。

ここで大切なのは、報酬体系の見直しで従業員に「不公平感」を感じさせないことです。報酬が見直されたことで手取り収入が減ってしまえば従業員から不平・不満が出るのは目に見えています。したがって、適切な労働時間や働き方を実現していれば従来と収入は変わらない、あるいは従来よりも収入アップが見込めるような報酬体系がベストです。

例えば高い残業手当を削減する代わりに、成果に応じた評価やインセンティブを与えるといったアプローチが考えられます。報酬体系が最適化されれば、適切な労働時間と高い生産性の両立が期待できるでしょう。

有給休暇の取得を促進する

日本の労働問題でしばしば課題に挙げられるのが「有給休暇の取得・消費」についてです。有給休暇は法律で認められた従業員の権利ですが、現場では「申請しにくい雰囲気」「忙しくて休めない」といった理由から未消化に終わるケースも少なくありません。

有給休暇の取得が当たり前になれば自ずと総労働時間が減少するため、長時間労働問題の解決に効果が期待できます。休みの間に心身をリフレッシュしてもらえれば、仕事のパフォーマンスにも良い影響が出てくるでしょう。有給休暇取得を促すためには「職場の理解」「業務の属人化防止」「適切な業務量配分」などが求められます。

長時間労働による企業へのデメリット

従業員の長時間労働は企業にとっても様々なデメリットやリスクをもたらすので要注意です。問題の深刻さや危険性を改めて認識するために、ここでは5つのデメリットについて解説します。

従業員の健康問題

言わずもがな、長時間労働によって最も大きな影響を受けるのは従業員当人です。長時間労働が慢性化すれば身体的・精神的健康が害されるリスクが高まり、業務に従事することさえ困難になる可能性があります。

最初のうちはストレス・過労・不眠などの症状が出ますが、長期化すれば心疾患やうつ病など命に関わる事態になってしまうのです。病気休暇・早期退職といった事態の増加は、企業にとって人的資源損失に留まらず医療費負担増加といった経済的な負担にも繋がります。

生産性の低下

長時間労働は従業員の生産性を低下させるため、作業効率や製品・サービスの品質低下を招きます。生産性とは一般的に「どのくらいのリソースを投入して、どの程度のものができたか」を示す指標です。

仕事のパフォーマンスが低い状態が続けば、成果物の品質や業務スピードが上がらないのはもちろんのこと現場で仕事のノウハウが蓄積されにくくなります。つまり、次世代を担う若手や新入社員が仕事のノウハウ・知識・スキルを効率的に見に付けられなくなるのです。

過労状態ではケアレスミスが増えるリスクも高まり、総体的・中長期的に見て企業全体のパフォーマンス低下に繋がっていきます。

従業員のモチベーションの低下

長時間労働による従業員のモチベーション低下は、事業活動における様々な場面に悪影響をおよぼします。いくら働いても片付かない仕事を毎日こなしていると、次第に従業員は嫌気がさして仕事に対する姿勢が投げやりになる傾向が強いです。

業務効率化が上がらないどころかミスの増加や顧客からのクレームにも繋がるため、従業員のモチベーション維持は企業にとって優先順位の高い要素と言えます。人間はゴールや終わりが見えない時ほどモチベーションの維持が難しくなるので、適切なタスク管理を心がけましょう。

企業イメージの低下

労働問題は世間的な関心も高く、ニュースで取りあげられることも珍しくありません。報道されなくても離職率や休職率は求人サービスに公開することが多いため、求職者に筒抜けになります。

長時間労働が慢性化している状態が外部に伝われば、「従業員を大切にしない企業」というイメージが付きまとってしまうでしょう。企業イメージの低下は採用活動で優秀な人材を確保できなくなったり、取引先や顧客との信頼関係悪化を招いたりと企業に深刻なダメージをもたらします。

法的リスクの増加

長時間労働の常態化は労働基準法やその関連法に違反しているケースが多く、行政指導や従業員からの訴訟といった法的リスクを増加させます。

裁判ともなれば報道される可能性は高く、社会的な信用を失うことになるでしょう。一度失われた社会的信用を取り戻すには、長い時間と膨大な労力を必要とします。長時間労働問題は企業が未然に防ぐためにできることも多いので、最善を尽くして従業員や社会からの信用を守りましょう。

従業員の長時間労働防止は企業の健康経営に不可欠!必要な取り組みやサービス導入を積極的に検討しよう

日本のビジネスシーンにおいて根深い問題となっている長時間労働ですが、企業単位でできる取り組みは少なくありません。社内の実情を正確に把握した上で改善策を打ち出し、必要であれば外部サービスの力も借りましょう。

例えば心幸グループによる「オフけん」の健康経営サポートサービスは、「健康経営優良法人」認定取得サポート・出前からだ測定会・各種健康セミナー・禁煙補助・スポーツジム運営・体調管理アプリなど多角的な視点から企業を支援しているのでおすすめです。

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