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社員に長期休暇を取ってもらうには?取得率アップの企業事例を詳しく解説

社員に長期休暇を取ってもらうには?取得率アップの企業事例を詳しく解説

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更新日|2023年11月28日
所長|いくた
この記事の概要

長期休暇とは、週末や祝日とは異なる、比較的長期間(一般的に1週間以上)の休みのことです。社員に長期休暇をうまく利用してもらえれば、企業のイメージアップや社員のリフレッシュなど、さまざまな効果が期待できます。しかし取得率がアップせずに、悩む経営者や人事担当者は少なくありません。この記事では長期休暇とは何かに触れた上で、メリット・デメリット、取得率アップを実現した各企業の導入事例などを紹介します。

目次

いくた所長、最近、社員の長期休暇の取得率がなかなか上がらないんですよね。どうしたらもっと休暇を取ってもらえるようになると思いますか?

確かに、忙しくて長期休暇を取るのをためらっている社員が多いよね。他の企業ではどうしているんでしょう?

実は、他社の取得率アップのための施策を調べていたんです。面白い事例がいくつかありましたよ。

ありがとう! ぜひ教えてください。

長期休暇とは?

旅行に向かう男性

長期休暇とは、週末や祝日のような短期的な休息日ではない、長い休息期間のことを長期休暇と呼びます。期間はときに数週間から数カ月、長い場合は数年におよぶ場合もあります。

目的が指定されていない限り、長期休暇中の時間の使い方は基本的に社員の自由です。家族や親しい仲間とともに過ごしたり、旅行へ出かけるなど、さまざまな時間の使い方がなされます。中には本業以外の個人的なプロジェクトを始める人もいます。

長期休暇の主な目的は、仕事とは離れた環境でリラックスすることで、精神的および肉体的な健康を回復することです。労働者のストレスを軽減し、生産性とクリエイティビティを高めてくれる効果が期待できるでしょう。ただし、長期休暇がどのような形態のものになるか、あるいは長期休暇の可用性は、国・産業・雇用契約などによって大きく異なります。そのため、同じ職種や同じ企業であっても、同程度の長期休暇が付与されるとは限りません。

長期休暇の種類

長期休暇にはさまざまな種類があります。以下に代表的なものを紹介します。

「サバティカル休暇」は、教育機関や研究職などでよく見られる、社員の職業的(教育的)あるいは個人的成長を主な目的として与えられる休暇です。教育機関や研究職など以外の分野においても、ウェルビーイングや職務満足度の向上を目的に採用されている場合があります。

なお、教育を目的とするなら「教育休暇」という休暇形態もあります。研修や講義の受講などによって、職業的なスキルの獲得や追加の学位取得を目的とした休暇です。休暇を付与することによって、社員が自発的に職業能力の向上を目指すことを促します。

長期休暇は社員のワークライフバランスの向上にも用いられます。「育児休暇」は社員の育児支援に付与される休暇です。育児休暇があれば、赤ちゃんとの絆を深めたり、新しい家庭環境に適応する時間を持つことができます。育児休暇に類する休暇の取得および制度の設定は、多くの国において法律で保証されています。

「長期病気休暇」は長期に渡っての療養が必要な場合に付与される休暇です。社員の健康問題だけでなく、家族に療養などのケアが必要なときにも与えられることがあります。

長期休暇は何日から?

カレンダー

厚生労働省労働基準局は長期休暇の日数と休暇の取り方について「1週間程度を最低単位として2週間程度の休暇が、労使の負担を著しく増やすことなくとれるように」、社会のルールとして普及・定着するよう取り組むことを「長期休暇制度と家庭生活の在り方に関する国民会議」において提案しています。

つまり、厚生労働省では長期休暇とは「最低で1週間以上」と考えているといえるでしょう。ただし、長期休暇の日数に決まった定義が決まっているわけではありません。

なお、民間企業の調査によれば日本人の長期休暇の取得日数は以下の通りとなっています。夏場の長期休暇の平均は5.6日です。最多は7日で19.3%。次いで5日が多く全体の18.3%を占めます。冬場の長期休暇は平均6.1日です。最多は7日で全体の約30.0%を占めています。次いで6日が全体の21.3%となっています。最低で1週間以上の長期休暇の取得は普及・定着しているとはいえません。

参考/厚生労働省HP
参考/indeed「【アンケート】夏と冬の長期休暇は何日間?長期休暇の過ごし方は?」

海外の長期休暇について

フランス

海外の長期休暇事情はどのようなものなのでしょうか。ドイツでは5月から9月の間に有給を消化して長期休暇を取るのが一般的です。ドイツでの長期休暇は通常2週間から3週間ほどです。ドイツでは平均27日間の有給が与えられており、それを長期休暇に消費するのが通常となっています。

また、アメリカやフランスには「サバティカルイヤー」「バカンス法」と呼ばれる長期休暇があります。「サバティカルイヤー(sabbatical year)」は、主にアメリカの大学教員に、一定の年数ごとに与えられる有給の長期休暇です。通例では7年ごとに、半年から1年の休暇が与えられます。ちなみに、アメリカの大学における長期休暇は非常に長く、およそ3カ月間の夏休みがあります。しかし、冬休みと春休みは夏季ほどには長くありません。冬休みは家族と過ごすクリスマスを含む1週間ほど、春休みは2月末から3月上旬に2週間ほど取るのが一般的です。

「バカンス法」は、フランスにおいて1936年に制定された有給休暇に関わる法律です。3度の改正を経て、1年間に5週間の長期有給休暇取得が認められるようになりました。フランスではバカンス法を利用して夏に2週間以上まとまった休みをとることが通例となっています。

長期休暇のメリット

メリット

長期休暇の制度を用意し、社員に取得させることには、数多くのメリットが存在します。以下に代表的なメリットを紹介します。

リフレッシュできる

長期間休暇を取得すれば、社員は十分な休息が得られるので、心身ともにリフレッシュできます。継続的な労働は、疲労の蓄積によって過労の原因となります。時には燃え尽き(バーンアウト)症候群やうつ病などのストレス疾患を引き起こすことも。

長期休暇の取得によって心身をリフレッシュさせれば、過労や疾患の回復や予防が期待できます。また、長期休暇中には新しい趣味や活動に参加する機会が増えます。それによって心身の健康が向上する可能性も高まるでしょう。

家族との時間を確保できる

時間に余裕ができるので、家族や親しい友人と過ごす時間を持てるようになります。

特に長期休暇は子育て世代の社員には大切な制度です。子どもが成長していく時間に立ち合い、思い出となる時間を共有することで、家族の絆を深められるからです。そのため、長期休暇制度の採用は、社員の家族関係の改善にも役立つとされています。

プライベートが充実する

仕事に触れない時間ができるため、個人的な興味や趣味に時間を割く余裕が生まれます。自分の好きなものに打ち込むようになれば、自己実現の感覚が得られ、生活の満足度が高まるでしょう。

人によっては新しいスキルや自己改善に取り組むかもしれません。なお、趣味を持つようになると、仕事と趣味の時間を意識的に切り替えるようになるため、仕事にメリハリが生まれやすくなります。仕事と趣味の好循環が生まれれば、仕事のモチベーションが維持しやすくなるでしょう。

仕事内容を共有できる

長期休暇を取る場合には、休暇の間の仕事や責任をチーム内で分散して共有する必要があります。これによって業務の透明性の向上が期待できます。

社員の業務知識の共有や仕事の連携も向上するでしょう。さらに仕事内容の共有は、業務における潜在的なボトルネックや依存関係を特定する良いチャンスともなります。

企業のイメージアップを図ることができる

長期休暇の制度を採用し、社員が制度を活用できている企業は、社員のワークライフバランスが取れていて幸福度が高いと判断されやすくなります。

社員の生活を大切にしているイメージは、市場における企業のブランドイメージを向上させる効果が期待できます。魅力的な就業先と判断される機会が増えるため、才能ある人材の雇用がしやすくなるでしょう。また、高まったブランドイメージによって、社員の満足度とロイヤリティを高める効果も期待できます。

長期休暇のデメリット

デメリット

長期休暇をうまく活用するにはデメリットをあらかじめ知っておくことが大切です。以下に長期休暇の主なデメリットを紹介します。

生活リズムが狂う

長期休暇によって日常的な生活パターンから離れることによって、生活リズムや日課が崩れてしまう場合があります。

睡眠時間・食事時間・運動習慣が乱れてしまうと、休暇後に仕事への復帰が難しくなりかねません。仕事への復帰がうまくいかないと、生産性を低下させる原因となりかねないので注意が必要です。

職場に混乱が生じる

社員が長期休暇に入ると、担当しているプロジェクトの進捗に影響を与えたり、仕事に混乱をきたすおそれがあります。特別なスキルや資格などを持っている社員が長期休暇に入る場合には、特に注意しなければなりません。

その社員が不在となることで、業務の遅延や効率低下を招く場合があるからです。対策としては、休暇までに業務についての情報を周囲と共有し、重要な判断について決定する者をあらかじめ指名しておくことが大切です。

代替要員の確保に伴う人件費の増加

社員が休んでいる間は、誰かが業務を補わなければなりません。一時的な代替要員を雇用する必要がある場合には、追加の人件費がかかります。

さらに、追加した人員の採用費・訓練費・管理費なども必要です。これらの費用が企業の予算を圧迫する可能性があるので、注意しなければなりません。また、採用した人員が戦力となるまでには、十分なリソースと時間がかかります。長期休暇の制度を採用する場合には、十分な余裕をもって、人員の確保や訓練を行うようにしましょう。

長期休暇を導入している企業事例

アイデア

長期休暇を導入している企業では、どのようにして社員に休暇を取得してもらっているのでしょうか。実際に長期休暇がいかに運用されているか企業事例を通してみていきましょう。

全日本空輸

2021年4月より、全日本空輸株式会社(ANA)ではサバティカル休暇を導入しており、最大2年間の長期休暇取得が可能です。

従来よりANAでは進学や留学を目的とした休暇制度が設けられていましたが、それらをまとめてサバティカル休暇として一新。さらに休暇取得に事由を問わないようにしました。同時にANAでは、短時間・短日数勤務制度も事由問わず適用できるようにしています。これによってANAの企業内ではより休暇が取得しやすくなる環境が整ったといえるでしょう。

なお、ANAのサバティカル休暇は有給ではありません。しかし、1年以上の休暇を取得する場合には補助金が20万円支払われます。社会保険料はANAが負担します。

ヤフー

2013年より、ヤフー株式会社では最長3カ月のサバティカル休暇制度を採用しています。自らの働き方を見つめ直し、キャリアや経験を考えることによって、さらなる成長へと結びつけることを目的としています。

休暇の取得条件は勤続10年以上の社員であることです。ヤフー株式会社ではサバティカル休暇中でも無給にはなりません。基準給与の1カ月分の休暇支援金が支給されるからです。そのため、サバティカル休暇の取得がしやすくなっています。

ヤフー株式会社ではサバティカル休暇以外にもさまざまな休暇制度を設けています。例えば、社会の課題を解決するためのボランティア活動を目的とした「課題解決休暇」、専門的知識を習得するための「勉学休職制度」などです。ほかにも、配偶者出産休暇・子女結婚休暇・マタニティー休暇・子の看護休暇・介護休暇など、各種特別休暇制度も設けています。ワークライフバランスに配慮した休暇環境が充実しているといえるでしょう。

ソニー

2015年より、ソニー株式会社はフレキシブルキャリア制度を採用しています。この制度はキャリア展開のための制度です。「配偶者の海外赴任や留学に同行して知見や語学・コミュニケーション能力の向上を図るための休職」の場合には最長5年、「専門性を深化・拡大させる私費就学のための休職」なら最長2年の休暇が取得できます。休暇中は無給です。ただし、社会保険料はソニー株式会社が負担してくれます。また、50万円を上限に私費就学の初期費用が支給されます。

ソニー株式会社は、社員が休職中にさまざまな経験を積んだりスキルを磨いたりすることは、社員の成長を促すだけでなく、キャリアの幅を広げると考えています。場合によっては企業に新たな発想をもたらすかもしれません。そのため、休暇の取得を社員に推奨しています。フレキシブルキャリア制度は2020年までに、配偶者同行が50名、就学では20名の方が利用しました。

心幸グループ

従来より飲食業界は休みが取り難く、働く者のモチベーションやリフレッシュについての課題を多く抱えていました。心幸グループ(心幸ホールディングス株式会社)は、飲食業に携わる者でもしっかり休みを取って仕事へのモチベーションが高められるように「10連休取得推奨制度」を設けました。制度の対象は、企業内食堂「心幸キッチン」で働く従業員です。希望があれば誰でも10連休の取得が可能です。

また、制度採用にあたっては、業務が滞らないように人員配置と職場環境を見直し、従業員が長期休暇を取得しやすくなるように準備しました。制度は従業員にもおおむね好意的に受け入れられており「初めて家族旅行に行くことができる」「趣味を大いに楽しみたい」と長期休暇取得への意気込みを語る者も少なくありません。

参考/心幸グループ、飲食店従業員を対象に「10連休推奨制度」を本格導入

長期休暇を取りやすい企業の特徴

笑顔の社員たち

以下は、長期休暇を取りやすい企業の特徴です。長期休暇をなかなか取得させることができない企業は参考にしてみてください。

企業独自の休暇制度がある

一部の企業は、標準的な有給休暇に加えて、サバティカルのような独自の休暇制度を導入しています。これらの制度は、従業員が長期の休暇を取得できるように設計されており、通常はリフレッシュ、個人的な成長、または家族との時間のために利用されます。

これらの制度は従業員の満足度を高め、エンゲージメントと忠誠心を向上させることができます。

繁忙期と閑散期の差が大きい

特定の業界や企業では、年間を通じてビジネスのピークとオフピークがはっきりしています。例えば、会計士は税務申告期に非常に忙しく、それ以外の時期は比較的落ち着いています。

このような業界で働く企業は、閑散期に従業員が長期休暇を取得することをより受け入れやすい傾向があります。

有給休暇の取得を義務付けている

有給休暇の取得を義務付ける企業文化は、従業員が実際に休暇を取ることを奨励します。これにより、バーンアウトの予防、生産性の維持、職場での幸福感の向上が促進されます。

従業員が休暇を取得することを奨励または義務付けることは、バランスの取れた生活を重視する健全な職場環境の証とも言えます。

年間休日が120日以上ある

年間休日が多い企業は、従業員により柔軟な休暇の取得を可能にします。120日以上の休日がある場合、従業員は長期の休暇を取るための余裕ができ、それでいて短期の休暇や緊急時の休暇を取ることもできます。

これにより、従業員のストレスレベルが低下し、仕事と私生活のバランスがとりやすくなります。

大企業で社員数が多い

社員数が多い大企業では、個々の従業員が長期休暇を取得した場合の影響が小さくなる傾向があります。リソースと人員が豊富なため、一人ひとりの不在がプロジェクトや日常業務に与える影響を最小限に抑えることができます。

また、大企業はしばしば従業員の福利厚生プログラムにより多くのリソースを割り当てることができ、これには長期休暇のオプションが含まれる場合があります。

長期休暇の過ごし方

映画

いざ長期休暇を取得しても、何をして良いか分からない、という方もおられるようです。

一般的には、旅行、筋トレやダイエット、副業、読書、資格取得の勉強、ゆっくりした時間を満喫する、普段は会えない人と会う、などを行うことがありますが、他にも家でできることとして、読書、ドラマや映画を観る、ゲームをする、大掃除をする、料理を作ってみる、写真のデータをアルバムにする、DIYで部屋を改造。さらに、体を整えることとして、美容改善、歯のメンテナンス、整体・マッサージ、また、自己成長のために、今後の目標を立てる、勉強などがあります。

リフレッシュ休暇との違い

トランクケース

リフレッシュ休暇と長期休暇ではどのような違いがあるのでしょうか。

通常、リフレッシュ休暇は数日から1週間ほどの短期休暇です。日常のストレスからの一時的な解放による社員のリフレッシュを目的としています。

対して長期休暇は言葉の通り長期に渡る休暇のことです。最低でも1週間以上の期間が休暇にあてられます。長い場合には数カ月から数年に渡ることもあります。また、休暇の目的は、社員のリフレッシュ・個人の成長やプロジェクトの実行・異なる経験やスキルの獲得などさまざまです。

どちらの休暇も、ワークライフバランスと健康に寄与する休暇ではありますが、その期間と目的が異なるといえるでしょう。

サバティカル休暇とは?

大学

長期休暇制度を採用する多くの企業で用いられている「サバティカル休暇」とはどのような休暇なのでしょうか。

厚生労働省はサバティカル休暇を「従業員の行動変容のきっかけづくりとなる特別休暇」として捉えています。サバティカル(sabbatical)とは長期有給休暇や特別研究期間を意味する英単語です。

もともとのサバティカル休暇は主に教育機関で採用されており、一定の勤続年数を経過した大学教授などに与えられる「研究休暇」を意味していました。次第にサバティカル休暇はその意味や使われ方を変容させていき、民間企業にも広がります。

その結果、必ずしも「研究休暇」に絞られない休みとなりました。多くの企業が採用するサバティカル休暇は、基本的に休暇期間の目的は従業員が自由に設定でき、その期間は1カ月以上であることが一般的となっています。

メリット多数の長期休暇!取得しやすい制度作りを心がけよう

長期休暇は主に1週間以上の休暇を意味し、社員のリフレッシュやワークライフバランス向上を促進してくれます。社員の離職防止・ブランドイメージの向上・新しい知識やスキルの獲得といったメリットがありますが、業務に支障をきたすケースも。制度導入には十分な下準備が必要です。

また、制度は利用されなければ意味がありません。各企業の事例を参考にして、取得しやすい長期休暇制度を用意するように心がけましょう。

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