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健康経営は健康診断が基本!従業員に受診してもらえないときの対策も解説

健康経営は健康診断が基本!従業員に受診してもらえないときの対策も解説

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更新日|2024年3月26日
所長|いくた
この記事の概要

従業員の健康を守り安定した経営を行うための「健康経営」は企業にとって欠かせません。その最初のステップとなるのが健康診断です。健康経営にハードルの高さを感じる担当者もいるでしょうが、まずは健康診断についての理解を深めることが重要なポイントとなります。本記事では、健康経営において健康診断が重要である理由や健康診断の基礎知識、従業員に健康診断を受診してもらえないときの対策などについて詳しく解説します。

目次

そもそも「健康経営」とは

健康的な社員たち

健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。

従業員の健康面に配慮し、人を資本として捉えるマネジメントが実現できれば、従業員の仕事に対するモチベーションや生産性の向上が可能です。結果的に、経営面の成果にもつながると期待されています。

健康経営のために健康診断が重要な理由

健康マーク

健康経営の基本方針として、従業員の健康の維持や促進があります。これらを満たすためのアプローチとして健康診断の実施と、従業員に受診させることが欠かせないのはいうまでもありません。

そもそも、企業による従業員に対しての健康診断の実施は労働安全衛生法により定められています。企業が健康診断の実施を怠ると労働基準監督署からの勧告や指導を受けたり、場合によっては50万円以下の罰金が課せられたりするため注意が必要です。健康診断は、従事する職務等により複数種類あります。企業は、タイミング等も含め種類や内容を確認し、法に則り実施しなければなりません。

企業の従業員に対する健康診断の実施は法律で定められていますが、一方で、従業員が受診するか否かは基本的に自由です。少なくとも法的な義務はなく、従業員が受診しない場合の罰則等は特に定められてはいません。そのため、従業員の受診率を上げるには、企業側が積極的に働きかける必要が生じます。健康経営の実現には企業と従業員の双方の協力が欠かせず、従業員への周知を徹底したり、受診のハードルや抵抗感を下げるための工夫をしたりすることが不可欠です。

また、健康経営が注目を集めている背景には、経済産業省による「健康経営優良法人認定制度」の存在もあります。これは、従業員の健康に着目し、そのためのマネジメントを積極的に取り入れ実践している企業を顕彰する制度です。この制度では、とりわけ健康経営に対し優れた取り組みを行った企業を「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」として認定。2022年度の健康経営銘柄や大規模法人部門および中小規模法人部門の健康経営優良法人の認定条件には「定期健康診断の受診率100%」が定められています。つまり、健康経営優良法人の認定を受けるためには、健康診断の整備と受診の促進が欠かせません。受診率を高めることで、はじめて真の健康経営が実現できるといえるでしょう。

健康診断を従業員に受診してもらえないときの対策

呼びかけ

企業が健康診断を実施しても、積極的に受診しない従業員もなかにはいるでしょう。「業務が忙しい」「体調が悪くなったら病院に行けばよいという考え方」などが主な理由として挙げられます。しかし、企業としては受診してもらわなければ健康経営の実現がかないません。このような場合、従業員に対しどのような働きかけを行えばよいか、頭を悩ませる企業も多いようです。ここでは、健康診断を受診しない従業員がいる場合の対策について解説します。

社員の義務であることを説明する

健康経営や、その実現に不可欠である健康診断への理解を深める必要があります。前述のように、企業による従業員への健康診断の実施は、法律により義務付けられています。まずは、その点を丁寧に説明してみましょう。従業員個人には法的な義務が課せられていないため、受診しなくても罰則等はありません。しかし、検査項目や時期なども含め法律も絡めながら説明することにより、従業員の意識を高められる効果は期待できます。

また、受診を業務命令の扱いとするのも一つの方法です。雇用契約の際に盛り込んでおけば、受診を拒否された際には処分を科すことも可能です。就業規則で健康診断の受診を義務付け、受診しなかった際の処分内容もあらかじめ決定しておきます。それらに同意したうえで雇用契約を結べば、法律上は義務ではなくても、企業内の義務とすることができます。もちろん、処分内容には注意しなければなりません。処分の内容や手法によっては、それ自体が法律に違反する可能性も出てきます。法的に問題のない就業規則を定めることが大切です。

会社全体で、あるいは部署ごとに受診日を決め、一斉に受けさせる方法も効果が期待できるでしょう。受診スケジュールがあれば、健康診断を受けなくてはならない雰囲気を作り出せます。上司など責任のある立場の人が積極的に受診するのも重要です。同僚も受診していたり上司から直接指示があったりすれば、さらに受診する人を増やせます。

そのうえで、受診後には、部署やチームごとに健康診断について話し合う場を設けることも一案です。周囲に自身の診断結果を伝える行為や、見た目と診断結果にギャップのある社員の把握などは、さらに健康への意識を高める効果も期待できます。どのような方法で健康の改善を図るかなども、従業員同士で話し合えるでしょう。ただし、実施の際には、個人情報を知られたくない従業員への配慮が不可欠です。強制ではなく、あくまでも健康への意識の醸成を目的としたコミュニケーションの一環としての導入が求められます。

メリットを明示する

健康診断を受けなくても、体調が悪くなったら病院に行けばよいと考える人は一定数います。従業員数が多くなるほどに、このような考え方を持つ人は増えるでしょう。しかし、心身の不調は無自覚のまま進行することも少なくなく、「気づいたときには手遅れだった」というケースも珍しくはありません。定期的な健康診断は、本人が自覚する前の早期発見につながります。病気や問題が早期発見できれば、治療や療養にかかる時間や費用などのコストも削減可能です。このようなメリットを従業員へと明確に伝えることにより、受診率を上げられる可能性が高まります。

また、健康診断は、自身の生活習慣の問題点を認識できる機会にもなります。具体的な検査結果をもとに体のどこに問題があるのか、あるいは問題が生じやすそうなのかを医師からの指摘により自認できる点は大きなメリットです。生活習慣を見直すきっかけにもなるでしょう。定期的な受診により、自身の健康状態の推移も把握可能です。健康状態がよくなっていることが可視化されれば、さらによい生活習慣を心がける動機にもなります。

これらの健康診断のメリットを従業員に示すためには、厚生労働省や自治体の作成するパンフレット等の資料の掲示のみでは不十分です。公的なパンフレットは情報量が多く見づらい傾向にあるため、企業独自の見やすい資料を作成するとよいでしょう。内容をわかりやすく噛み砕き、図や表、イラストを入れるなどの工夫も求められます。

産業医の導入を検討する

健康診断の実施を、企業の人事部門が担当するケースも少なくはありません。しかし、そのケースでは医療や健康の専門家ではないゆえに、健康診断の必要性を訴えるうえで説得力が乏しくなってしまう懸念があります。健康診断の必要性をより強くアピールするために、専門家である産業医の配置は検討の余地があるでしょう。

従業員に対する定期的な健康診断の説明を委ねたり、効果的な周知方法を教わったりなど、産業医が貢献してくれる場面は多々あります。産業医は相談内容の守秘義務を負っているため、心身で何かしらの問題が発覚した際に従業員が安心して相談できる点もメリットです。

健康診断で押さえておきたい基礎知識

ポイント

正確な健康診断の実施には、対象者や種類、検査項目などについての理解が不可欠です。ここでは、健康診断の制度や環境を適切に整えるために押さえておきたい基礎知識について解説します。

健康診断の対象者

健康診断の対象となるのは、まずは、正規で雇用している従業員です。いわゆる正社員は、必ず健康診断の対象としなければなりません。アルバイトやパートに関しては、正社員の週所定労働時間の4分の3を超えて勤務している場合に対象となります。正社員の週所定労働時間の4分の3に満たない非正規社員でも、同じく2分の1以上働いていれば「健康診断の実施が望ましい」とされています。法的な義務はないため対象としなくても罰則等はありませんが、健康経営に取り組むのであれば、このような非正規社員を対象として考慮してもよいでしょう。

対象の判断基準は、労働時間だけではありません。企業と直接労働契約を結んでいるか否かも、一つの判断基準となります。例えば、派遣スタッフのように直接雇用ではなく派遣会社と契約を結んでいるケースは、健康診断の対象外です。ちなみに、健康診断で必要となる費用は、原則企業側が負担します。従業員を多く抱える企業にとっては負担が大きくなりますが、健康経営の効果を考慮すれば決して高い投資とはならないでしょう。むしろ、積極的に対象者を増やした方が、長期的にみれば企業によい影響を与える可能性が高まると期待されます。

健康診断の種類

健康診断の種類は、大きく「一般健康診断」「特殊健康診断」に分けられます。一般健康診断は、仕事内容や勤務時間に関係なく、あらゆる従業員に対して実施されるもので、さらに5つに分類できます。「定期健康診断」は、常時働く従業員に対し、1年以内ごとに1回実施しなければなりません。「雇入時の健康診断」は、正規社員を雇い入れる際に実施します。この2つが、代表的な一般健康診断です。

これら以外には、特定の業務に従事する従業員に対し6カ月以内ごとに1回、および配置転換があった際に実施しなければならない「特定業務従事者の健康診断」があります。また、「海外派遣労働者の健康診断」は、海外で6カ月以上働く従業員に対し、海外派遣前と、帰国後に国内で働いてもらう前に実施しなければなりません。食堂や炊事場で調理を行う従業員に対して実施義務が生じるのが「給食従業員の検便」です。これは、雇用する際と配置転換を行った際に実施する必要があります。

特殊健康診断は、放射能や有機溶剤、特定化学物質など有害な物質を扱う従業員に対して実施するものです。また、高圧室内での業務や潜水業務に従事する従業員に対しての実施も義務付けられています。特殊健康診断は、原則として6カ月以内ごとに1回実施しなければなりません。また、雇用した際や配置転換の際にも実施する必要があります。「じん肺健診」や「歯科医師による健診」など、業務内容によってはさらなる健康診断の実施が求められるケースもあるため、事前の確認が不可欠です。

健康診断の検査項目

一般健康診断と特殊健康診断では、定められている検査項目に違いがあります。一般健康診断には、「既往歴、業務歴等の調査」「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」「腹囲、体重、身長、視力、聴力の検査」の検査項目が定められています。これらに「胸部エックス線検査等」「血圧の測定」「貧血検査」「肝機能検査」「血中脂質検査」「血糖検査」「尿検査」「心電図検査」を加えた全11項目です。

一般健康診断のうち「定期健康診断」と「雇入時の健康診断」に関しては、基本的に検査項目に違いはありません。ただし、新たな従業員を雇い入れる際には、「胸部エックス線検査」が「胸部エックス線検査および喀痰検査」となります。共通の検査項目として「胸部エックス線検査等」となっているのは、そのためです。また、「定期健康診断」に関しては、医師が必要ではないと判断した項目の省略が可能である点も押さえておきましょう。

特殊健康診断は、事業所により検査項目が変わります。事業所ごとに取り扱う物質や従業員の働く環境が異なるためです。例えば、有機溶剤を使用する事業所では、「業務経歴の調査」や「有機溶剤の業務による、健康被害の既住歴、自覚症状、他覚症状の調査」などを実施する必要があります。ほかに「有機溶剤の使用により認められる症状の有無」や「尿中の有機溶剤の代謝物の代謝物量の検査」「尿中のたんぱく質の有無の検査」も検査項目となっています。特殊健康診断に関しては、検査項目が労働基準監督署により厳しくチェックされています。職場環境や従事業務に合わせて正確に実施しなければなりません。

健康診断の実施率

基礎知識の一つとして、一般的な健康診断の実施率も押さえておきましょう。厚生労働省は「労働安全衛生法に基づく定期健康診断」と題し、関連資料をまとめています。これによると、健康診断の実施率は91.9%、受診率は81.5%であり、いずれも100%には届いていません。事業所規模が500人以上となると、実施率は100%となります。300〜499人の事業所では99.7%、100〜299人のところでは99.5%、50〜99人では98.2%と、事業所の規模が大きいほど実施率が高い傾向がみられます。

受診率も、実施率ほどではありませんが同様の傾向があるといえるでしょう。しかし、受診率のもっとも高い5000人以上の規模の事業所であっても87.8%となっており、90%には届きません。企業が実施をしているにもかかわらず、受診しない従業員が一定数いる状況となっています。実施率を高めるために企業が努力しても、従業員が健康診断を受けず受診率が上がらなければ、真の意味での健康経営の実現は困難です。自社に積極的に受診していない従業員がいる場合、企業はなんらかの対策を検討する必要が生じます。

健康診断実施後に企業がやるべきこととは?

パソコン

健康診断は、実施して終わりではありません。実施後に企業が負う義務がいくつかあります。まずは、従業員の健康診断結果を5年間保管する義務が生じます。検査結果は個人情報のため、慎重に取り扱わなければなりません。検査結果の保存にあたり、従業員からの承諾を得る必要もあります。受診と検査結果の保管に関しては、あらかじめ就業規則に盛り込んでおきましょう。事前の周知により、実施や情報の取り扱いがスムーズに行えます。

50人以上の従業員を抱える企業であれば、労働基準監督署へ健康診断結果の報告義務も生じます。50人以上とは、正社員だけではなく、健康診断の対象となっているアルバイトやパートなどの非正規社員も含んだ数字です。また、検査結果で異常の所見があった従業員に対しては3カ月以内に医師の意見を聞き、措置を決める必要もあります。もし、企業の対応が遅れ従業員の健康状態が悪化すれば、安全配慮義務違反となりかねません。適切な措置を迅速に講じるよう心がけましょう。

健康診断でよくあるQ&A

Q&A

健康診断の実施にあたり、かかる費用の相場や福利厚生費として処理が可能な条件などを知りたい企業や担当者も多いでしょう。ここでは、健康診断導入の際によくあるQ&Aをみていきます。

健康診断の相場は?

Q.健康診断の費用の相場は?
A.健康診断の費用はクリニックによって異なるものの、従業員1人あたり1〜1万5000円程度が相場といわれています。これは、従業員の人数や形式によっても変わります。費用に関しては事前の確認と比較が求められますが、受診のしやすさなど従業員への配慮とのバランスが大切です。

健康診断を福利厚生費として処理する条件は?

Q.健康診断を福利厚生費として処理するために必要な条件は?
A.健康診断を福利厚生費として処理するための条件は3つです。「従業員全員が健康診断を受けられる環境が整っている」「企業が費用を直接医療機関に支払っている」「かかった費用が常識の範囲内に収まっている」といった条件をクリアしている必要があります。

健康診断は家族や配偶者も対象?

Q.健康診断は従業員の家族や配偶者も対象となる?
A.従業員の家族や配偶者は企業が実施する健康診断の対象外となります。法律的に企業が健康診断実施の義務を負っているのは、直接労働契約を結んでいる従業員のみとなっているためです。企業は従業員の家族にまで責任を持って健康診断を実施する必要はありません。

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