福利厚生のトレンドは?近年の動向や人気の福利厚生をまとめて紹介!
企業が従業員のために設ける福利厚生。法律で定められているものもありますが、企業として導入の際に頭を悩ませるのは、独自で取り入れる法定外福利厚生でしょう。この法定外の福利厚生にはトレンドがあり、ニーズも含めその在り方は時代とともに変化しています。本記事では、主にトレンドに焦点を当て、ニーズや人気の高い福利厚生についてまとめて紹介・解説します。
目次
福利厚生に関する近年の動向
まずは、福利厚生の在り方を時代の移り変わりとともに考えます。ニーズに沿った福利厚生を取り入れるには、時代による福利厚生の変化を知ることが重要です。
ハコモノの福利厚生は縮小傾向にある
バブル期には多くの日本企業が世界でも屈指の成長を遂げていました。そのような中で、福利厚生の一つとして設けられたのが、豪華な社員住宅や保養施設などです。いわゆる「ハコモノ」と呼ばれる福利厚生施設であり、企業独自で保有・運営している点も一つの特徴でした。
企業の経営者の多くが成長期の感覚から抜け出せなかったためか、バブル崩壊後も、この傾向は2010年代の後半まで継続。2017年頃までは、住宅や施設関連が福利厚生費の半分近くを占めていたようです。
日本がデフレへと陥り、経営が厳しくなる企業が増えるとともに、従業員のニーズにも変化が訪れます。特に、労働者の価値観に関しては多様性を帯び、社員寮や保養施設などに大きなメリットを見出す人の数は徐々に減ってきました。それにともない、ハコモノの福利厚生は縮小に転じているのが現状です。
ヒトの支援が重視されるようになっている
福利厚生の動向として目立ってきているのがヒト、つまり、従業員への支援です。日本は少子高齢化が深刻化し、多くの企業が従業員の確保が容易ではなくなってきている実感を持ち始めています。
豪華な施設があれば人が集まる時代はすでに終わっており、従業員個人に対してサポートしなければ、働く人たちも魅力を見出してはくれません。また、優秀な人材の確保と同時に、従業員の人材育成も企業にとっては重要であり大きな課題です。
福利厚生を、こうした人材育成にも向けることで、人手不足解消を実現しようとする傾向が出てきています。このような、自社に必要な従業員のスキルの習得を後押しするタイプの福利厚生はハコモノに対して「ヒトモノ」と呼ばれることもあります。
従業員への支援を重視する企業は実際に増えているとともに、さらに注目度が増しているため、多くの企業にとって福利厚生の参考とする価値がありそうです。
働き方改革を推進する福利厚生も人気
日本は国として「働き方改革」を推し進めています。少子高齢化に伴う労働者の減少や働き方の多様化などに対応し、生産性向上や労働者のための社会・企業を作り上げることが主な目的です。そのため、企業にも従業員のワークライフバランスの実現に向けた働き方改革の推進が求められています。
そのようなタイミングで、流行してしまったのが新型コロナウイルスです。人類にとって大きな危機ともいわれたコロナ禍ですが、日本では遅れていた在宅勤務やリモートワークの導入が早まったというメリットもありました。
その後、さらにこのような働き方のニーズが高まり、コロナウイルスに関連した制限等が少しずつ緩和される中においても、リモートワークなどを継続している企業は少なくありません。
従業員からのニーズが高いままであることも大きな要因でしょう。働き方改革や福利厚生の一環として在宅勤務やリモートワークを可能とし、さらに仕事のしやすい環境を整える企業も実際に増えてきています。
福利厚生のトレンドは?注目の福利厚生を紹介!
ここからは、トレンドに注目しながら、実際にニーズのある福利厚生のジャンルについて紹介します。
健康関連の福利厚生
まず、紹介するのが健康関連の福利厚生です。従業員の健康にフォーカスした福利厚生が注目される背景や具体的な制度などをみてみましょう。
注目されている背景
健康志向の高まりにより、自分や家族の健康を重視する人が増えてきています。しかし、仕事をしていると、なかなか健康を優先した生活を送れないと悩む人も多々います。実際に、生活習慣病やうつ病、アルコール依存症など現代社会で働くからこそ発症しかねない病気を心配する声は少なくありません。また、従業員が過労により自殺や休職等へと追い込まれてしまう問題もあります。企業が就業規則などに注意をしていても、起こらないとは言い切れない問題です。人や環境によっては、そのような問題を他人事と捉えられない従業員も多いでしょう。
このような背景を受けて、従業員の健康促進に努める「健康経営」に向けた取り組みを進める企業が増えています。従業員の健康は、企業にとって大きなメリットとなるためです。休職者や離職者があとを絶たなかったり、ましてや自殺者が出たりすれば、企業のイメージダウンは避けられません。また、従業員が元気で生き生きと働くことで、不健康な状態と比べても確実に生産性が高まります。ひいては、企業の業績アップにもつながるでしょう。
福利厚生の例
健康関連の福利厚生の例として、健康診断や人間ドックの補助制度が挙げられます。健康診断は、企業が従業員に受けさせる義務があるため、法定福利厚生といえます。それとは別に、さらに細かな健康診断や病気の早期発見へとつながる検査をオプションとして導入する企業も少なくありません。
禁煙のための補助制度、例えば、禁煙外来補助制度も、この種の福利厚生の一つです。タバコは吸っている本人だけではなく、周りにいる人の受動喫煙も問題となっています。家族のためにやめたいけれどもやめられない従業員に対し、禁煙外来をサポートする福利厚生は、健康経営に必須な取り組みといえます。
診療や入院が必要になった際、そのための費用を補助する制度もあります。医療面での従業員の金銭的負担の軽減となり、積極的な診療も促すため、やはり健康経営へとつながります。
従業員の悩みや問題に対するメンタルサポートも、健康関連の福利厚生の一例です。具体的には、相談窓口の設置やカウンセラーの配置などがあります。
また、スポーツジムに関する福利厚生もあるでしょう。企業が社屋に簡易的なジムを設置したり、スポーツジムそのものを運営したりするケースもあります。スポーツジムを経営する事業者と法人契約を結び、従業員が割安で利用できる制度を整える企業も増えてきています。
多様な働き方を推進する福利厚生
時代や社会情勢の変化への対応を目的として、多様な働き方を推進するための福利厚生も注目を集めています。その背景と、実際に取り入れられることの多い福利厚生例をみてみましょう。
注目されている背景
労働人口が減少し、人手不足に悩む企業も出始めています。企業が人を選ぶより人が企業を選ぶ時代となっているきっかけの一つが人手不足ともいえるでしょう。求職者に選んでもらわなければ、その企業の人手不足はさらに深刻化してしまいます。
そうした事態を防ぐための重要な手段が多様な働き方の実現です。多様な働き方を実現させられれば、フルタイムで勤務できない人の雇用も可能です。これまでの制度では、さまざまな事情により企業を辞めざるを得なかった人たちの離職を食い止める施策ともなり得ます。
新型コロナウイルス感染症の流行があったとはいえ、テレワークなど新しい働き方の導入も促進されているのはご存知の通りです。一定の効果をみせていることから、多様な働き方につながる福利厚生はさらに注目度が上がってきています。
福利厚生の例
このタイプの福利厚生例としては、在宅勤務やテレワークの従業員に対する手当があります。
自宅等で作業するためには、環境を整えなければいけません。パソコンやソフトの導入費用や、在宅ワークによって余計に発生する自宅の光熱費などをサポートするための手当です。
画一的な時間管理をせず、従業員が自由に就業時間を決められ柔軟に働けるフルフレックス勤務制度もあります。
成果を出すことは求められるものの、自分に合った働き方ができるため、より生産的かつ効率的な働き方ができる人も出てくるでしょう。男性従業員の育休の取得促進を目的として、特別有給休暇制度やお祝い金制度を設ける企業もあります。
育児・介護サポート関連の福利厚生
育児や介護に関する福利厚生もトレンドです。注目されている背景や、具体的な福利厚生の例を紹介します。
注目されている背景
やはり、コロナ禍の影響を受け、生活に根ざした福利厚生のニーズが高まる傾向がみられます。
テレワークなど働き方の多様化もそうですが、育児や介護に直面する従業員へのサポートも企業の責任であるという風潮が高まってきています。育児支援や介護支援に関する福利厚生を取り入れることで、従業員の離職率を減らせるでしょう。出産や子育て、介護を理由に退職する必要がなくなるためです。人材定着にもつながり、採用や育成にかかるコストの削減も可能です。
また、そのような福利厚生が充実していることで、人生の各イベント時への安心感へとつながり、入社を希望する人材の増加も期待できます。優秀な人材確保につながりやすいことも、各業界や企業が注目している理由です。
福利厚生の例
代表例としては、育児休業制度や介護休暇制度などが挙げられます。ベビーケア休暇や子どもの看護休暇などを取り入れる企業も少なくありません。これらは、子育てや介護のための休みを取りやすくする制度です。企業が難色を示すことなく、むしろ積極的に促すことで利用率も高まり、前述のようなメリットへとつながります。
あわせて、補助金を支給する企業もあります。ベビーシッターや介護サービス、家事代行サービスなどを利用した際に補助金を支給する福利厚生制度です。補助金の支給により復職を早める効果が期待できます。また、社内託児所の設置も、早い復職を実現する福利厚生となるでしょう。社内に設置できないため民間の託児所などと提携し、必要な従業員に紹介する福利厚生を設ける企業もあります。
自己啓発・能力開発の福利厚生
つづいて紹介するのは、自己啓発や能力開発に関連した福利厚生です。なぜ注目されているのか、その理由や一例を紹介しましょう。
注目されている背景
従業員のスキル向上のための福利厚生は、企業にとって重要な投資となり得ます。仕事のための学びに関わる金銭的サポートが受けられれば、従業員のモチベーションや企業全体の生産性に好影響を及ぼすためです。
結果的に、業績の向上も期待できます。また、この種の福利厚生は、優秀な人材の確保にも貢献するでしょう。自らのスキル向上へと直結する制度が整えられていることで、特に上昇志向の高い従業員の離職を防げます。社内でしっかりと人材育成ができるため、スキルだけではなく企業の理念や方向性も共有できる従業員の育成も可能です。
このような福利厚生は、人材を「資本」と捉え、その価値を引き出すことで企業価値の向上を図る経営概念である「人材資本経営」にもつながります。
福利厚生の例
自己啓発や能力開発に関連した福利厚生には、資格取得補助制度があります。資格取得の勉強や試験にかかる費用、あるいは資格試験に合格した際の金銭的サポートが、これにあたります。
自己啓発書やビジネス書籍などの購入補助制度もあるでしょう。従業員の購入する書籍の内容などには注意を払わなければならず、一定の制限を設ける必要もあるものの、モチベーション向上に効果の見込める制度となり得ます。
この種の福利厚生で多くの企業が取り入れているのが、社内研修の充実です。従来よりもさらに意味があり、能力開発へとつながる研修を設けられれば、従業員や企業全体の生産性や効率性のアップが期待できます。外部の研修や講習の受講費の補助制度を取り入れる企業も少なくありません。
人気の福利厚生にはどんなものがある?
ここからは、トレンドを踏まえたうえで人気のある福利厚生について紹介していきます。
住宅手当・家賃補助
多くの人にとって、住宅にかかる費用は生活費の中でも大きな割合を占めています。経済的負担が大きいため、住宅手当や家賃補助は非常にニーズのある福利厚生制度です。
従業員が個人で契約し住んでいる、あるいは購入した自宅に対して手当を支給する制度がある一方で、企業側が社宅や独身寮を提供する制度もあります。
従業員にとって大きくなりがちな負担を軽減するということは、この種の福利厚生を設ける場合、手当の金額が大きくなるなど企業にとってもそれなりに大きな負担となります。この点を認識したうえでの導入の検討が必要です。
住宅関連の福利厚生制度は従業員にとってはニーズがあるものの、減少傾向がみられます。とりわけ、自社で保有する寮や社宅に関して、縮小や廃止を進める企業も少なくありません。保養施設ほどではないもののハコモノの要素を持ち、運営・維持費の負担が大きいためでしょう。
食事補助
食事関連の福利厚生には、社員食堂の設置や食事のデリバリー、食事チケットの配布などがあります。
特に、栄養バランスが整えられた食事を低価格で食べられる福利厚生が人気です。健康志向への高まりと合致するため、多くの労働者から求められる傾向がみられます。
企業が積極的に取り入れることにより従業員の健康への意識の高まりも期待でき、健康経営の実現も可能です。また、家計へのサポートにつながる点も、人気の理由でしょう。食事補助があれば、多くの家庭にとって住居費の次に支出割合が高い食費の節約へとつながります。
休暇制度
法律で定められている有給休暇制度などとは別に、企業として独自に休暇制度を取り入れるのもトレンドです。
ライフイベント時の慶弔休暇は代表的な例でしょう。また、記念日に取得可能なアニバーサリー休暇や、長くまとまった休暇が取得できるリフレッシュ休暇などを積極的に取り入れる企業も増加しています。
取得のための条件等も各企業が独自に設ける必要がありますが、従業員への休暇制度は企業にとっても大きなメリットをもたらす可能性があります。
休みやすい環境を整えることで従業員満足度や企業へのエンゲージメントが向上。離職率や休職率の低下へとつながり、人手不足の解消効果も期待できます。
住宅関連以外にも!縮小傾向にある福利厚生は?
トレンドを知るためには、ニーズが増えているものだけではなく、逆に減っているものに焦点を当てることも重要です。福利厚生には、保養施設や住宅関連のハコモノ以外にも縮小傾向がみられるものがあります。
例えば、家族手当です。家族手当の多くは慣習的に取り入れられ、さらに、専業主婦や子どもと暮らす従業員向けの制度設計となっているケースが多々あります。女性の社会進出が進み、また、家族の在り方そのものも多様化しているため、従業員の実情やニーズと合わなくなってきているのです。
どこまでを福利厚生として制度化しているのかは企業によりますが、社員旅行や飲み会なども減りつつあります。勤務時間以外にも同僚や上司・部下などと顔を合わせることに抵抗感を抱く人は少なくありません。それよりもプライベートの充実を望む人が増えてきており、同じ職場の従業員同士で過ごすための福利厚生や制度、催し物はニーズが減っていると言わざるを得ないでしょう。
財形貯蓄制度や持株会制度も同様です。終身雇用が崩れつつある中、長期的な資産形成を企業に頼るのではなく、自身で行う労働者が増えています。福利厚生や企業独自の制度としてのニーズは決して高くはありません。
トレンドの福利厚生を導入するときのポイント
トレンドとなっている福利厚生を、単に導入しても成功するとは限りません。ここでは、福利厚生制度の導入が失敗に終わらないために意識したいポイントを解説します。
従業員のニーズを踏まえて決定する
導入する福利厚生は、トレンドか否かのみで決定してはいけません。自社のニーズ、特に従業員のニーズに合っているかどうかが重要です。
ニーズに合わないものの導入は利用率が下がり、形骸化してしまう恐れがあります。導入にかけたコストも無駄になってしまうでしょう。導入前に、従業員からの意見や要望を聞くなどの情報収集が不可欠です。
あわせて、現行の福利厚生制度の利用率や満足度に関する調査を実施。結果を元に、必要な制度と不要な制度を明確化し、真にニーズのある福利厚生制度を構築・導入します。
不公平感をなくす
福利厚生の利用には、一定の条件を設ける必要があります。コストが増大となり、それ以上のベネフィットを企業が得られないためです。
しかし、そこに不公平感が生じてはいけません。厳格な条件を設けるがあまり、利用できる人とできない人が出てきてしまうと、特に後者の従業員から不満が噴出する可能性が高まるでしょう。そもそも福利厚生の対象となるのは、原則としてその会社で働く全ての従業員です。
従業員の不満は離職率の増加へとつながります。社外にもその情報が漏れれば、新たな人材確保にも問題が生じかねません。導入の際は、社員の誰もが利用しやすい不公平感の少ない制度の構築が重要です。
例えば、食に関する福利厚生は利用率が高くなりやすく、条件等も厳しくする必要があまりないため、取り入れやすい制度となります。トレンドにも合致しているため、多くの企業が検討する価値の高いジャンルの福利厚生制度です。
企業ブランディングに活かす
話題性があり、かつ独自性の強い福利厚生制度の導入は、社外へのPR効果も期待できます。
それがトレンドに沿ったものであれば、より大きな効果が得られるでしょう。知名度や企業価値の向上が狙え、新たな人材確保の際に応募者数の増加にもつながります。
トレンドの福利厚生を導入した際は、自社のコーポレートサイトや採用ページなどでの積極的なアピールが有効です。企業ブランディングへと活かせれば、既存の従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上にもつながります。
【よくある質問】トレンドの福利厚生を導入するメリットは?
福利厚生のトレンドを理解し時代にマッチした制度をいち早く導入することは、社外への、特に就活生、転職者へのアピールとなります。優秀な人材確保に役立つでしょう。
また、従業員の定着率の向上も期待できます。人材の流出を防止でき、労働人口減少の影響を最小限に抑えることが可能です。
トレンドの福利厚生で企業の成長につなげよう!
福利厚生による従業員の健康や生活のサポートは、人材という経営資源への投資を意味します。結果的に、企業の成長へとつながるでしょう。重要な点は、自社のニーズにマッチした福利厚生制度の導入です。
企業の福利厚生をサポートしている「心幸グループ」では、様々な福利厚生支援サービスを展開しています。
たとえば、以下のサービスを提供しています。
- 企業内売店・コンビニの設置・運営
- 企業内食堂の設置・運営
- 置き社食コンビニ「オフめし」の設置・運営
- キッチンカー業者派遣「ごちショウ」の提供
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- からだ(体測定・体成分)測定会、健康セミナー、栄養講習会の実施
- 企業内トレーニングジムの管理・運営、トレーニング指導
- スポーツ用品や健康器具の販売
心幸グループでは、それぞれの企業に合った福利厚生サービスが提供可能です。トレンドや導入方法に関する悩みを抱えている企業は、ぜひ一度、問い合わせてみましょう。
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