福利厚生費の上限はいくら?限度額や条件を項目別で徹底解説!
福利厚生の充実は、従業員の身体やメンタル面での健康を維持するため、欠かせません。しかし、福利厚生費は計上すれば上限なく認められるわけではないため、注意が必要です。福利厚生費として認められなかった場合、会社だけでなく従業員にとっても損になります。そこで今回は、経費が福利厚生費として適用されるための上限や条件について詳しく解説します。
目次
福利厚生費に上限はある?
交通費や食事補助など項目別に上限が定められているものもありますが、原則福利厚生費全体の計上に上限金額はありません。ただし、上限がないからといっても、いくらまでも計上できるものでもないため、注意が必要です。
具体的に、福利厚生費は常識の範囲内の金額で計上しなければなりません。計上した金額が常識を逸脱したようなあまりに高額な場合、経費が福利厚生費として認められない可能性があることは認識しておきましょう。
福利厚生費の相場はどのくらいなのか?
「常識の範囲内」という表現は、あいまいでよく分からないと感じる人もいるのではないでしょうか。その場合は、福利厚生費の平均額を一つの目安にするとよいでしょう。一般社団法人日本経済団体連合会が行った調査によると、2019年における福利厚生費の相場は1人1カ月あたり約11万円でした。
費用の内訳としては、法律で定められている法定福利費が約8万5,000円、会社が任意で行う法定外福利費が約2万5,000円となっています。また、この金額は平均給与の約30%です。このことから、金額としては約11万円、給与における割合としては30%程度であれば「常識の範囲内」に収まるといえるでしょう。
福利厚生費の上限はいくら?項目別に解説
福利厚生費の種類は、大きく分けると法定福利費と法定外福利費の2つです。ここからは、それぞれの項目別に上限や条件について詳しく解説します。
法定福利費は会社負担割合が法律で定められている
法定福利費とは、企業が従業員に代わって負担することが法律で定められている福利厚生費のことです。主に、社会保険に関する費用となっており、会社の負担率は各法律によって定められています。
健康保険
健康保険は、従業員とその家族に病気やケガなどがあった際、医療費の一部を支給する保険です。健康保険の保険料は、会社が加入している健康保険組合に支払います。保険料率は、都道府県によって異なりますが、おおむね給与と月あたりのボーナス額を足した額の10%前後です。
例えば、会社が全国健康保険協会に加入していて、従業員が東京都に住んでいるとしましょう。給与が毎月30万円、ボーナスが年額で120万円の場合、標準報酬月額は「30+120万円÷12カ月」で40万円となり27等級です。この場合、保険料は従業員が40歳未満であれば4万221円、40歳以上であれば4万6,945円です。このうち、会社は健康保険料の半分を負担するため、従業員が40歳未満なら会社負担額は2万110円、40歳以上の場合は2万3,472円となります。
厚生年金
厚生年金は、国民年金に上乗せして給付される年金です。原則、厚生年金の適用事業所で常用的に雇用されている70歳未満の一定の人が被保険者となります。パートタイマーやアルバイトの人でも、適用事業所で一定条件を満たす常用的な雇用関係にある場合は被保険者です。
厚生年金は、国民年金と同じく日本年金機構が運営しているため、厚生年金の保険料も国民年金機構に支払います。厚生年金保険料は、毎月の給与額と月あたりのボーナス額に保険料率18.3%を乗じた額です。求められた保険料額を会社と従業員とが半分ずつ負担します。
例えば、先述の例と同じく東京都で毎月の給与が30万円で1年間のボーナス総額が120万円の従業員の場合、標準報酬額が40万円となるため、厚生年金保険の等級は24です。同等級の保険料額は7万5,030円で、会社と従業員それぞれの負担額は3万7,515円となります。
介護保険
介護保険は、介護を必要とする人に対し、介護サービスの費用の一部を支給する保険です。介護が必要な家族がいる人の負担を軽減し社会全体で支えるため、2000年に制度が創設されました。
介護保険は、40歳以上のすべての人が加入しなければなりません。65歳以上の人は第1号被保険者、40~64歳までの人は第2号被保険者として区分されています。第1号被保険者の人は、要介護状態や要支援状態にあると認められた場合に介護サービスを受けることが可能です。第2号被保険者は、加齢に伴う疾病が原因で要介護状態になったと認定された場合に介護サービスを受けられます。
介護保険制度は、従業者が居住している市区町村が運営しており、介護保険料は健康保険料に含まれています。例えば、会社が全国健康保険協会に加入している場合、2022年度の介護保険料は標準報酬月額の1.64%です。その半分を会社が負担します。
雇用保険
雇用保険は、従業員が失業した場合などに失業給付などを支給し、失業後の生活や雇用の安定を図るための保険です。従業員が雇用保険法に基づいた加入条件を満たしている場合、会社は従業員を雇用保険に加入させなければなりません。
雇用保険の負担割合は、会社の業種によって異なります。2022年10月1日から2023年3月31日までの場合、一般の事業を行う企業の雇用保険料率は1.35%です。そのうち0.85%が会社負担、従業員負担は0.5%です。農林水産業や清酒製造業の雇用保険料率は1.55%、そのうち会社負担は0.95%となっています。
ただし、農林水産業でも園芸サービス業や酪農業、養鶏業、養豚業などは一般事業と同じ雇用保険料率となるので注意しましょう。建設業の雇用保険料率は1.65%、会社負担はそのうちの1.05%です。
労災保険
労災保険は、従業員の勤務中または通勤中の病気やケガ、死亡などの際に支給される保険です。正式名称は労働者災害補償保険で、業務災害や通勤災害における保険給付と社会復帰促進等の事業を行っています。
費用徴収を行っているのは、都道府県労働局です。労災保険は、全額会社負担となっており、従業員負担はありません。保険料率は、会社の事業によって異なります。なぜなら、労災の発生する可能性が高い業種ほど保険料率が高く設定されているためです。
例えば、2022年度の場合、卸売業や小売業の保険料率は0.3%、食料品製造業の保険料率は0.6%です。一方、林業の保険料率は6%、金属鉱業の保険料率は8.8%、採石業の保険料率は4.9%となっています。
子ども・子育て拠出金
2015年以前、子ども・子育て拠出金は、児童手当拠出金と呼ばれていました。15歳未満の子どもがいる家庭に給付される児童手当や、子育てに関する国の事業の財源として使用されます。
他の社会保険料と一緒に日本年金機構へ納付し、子ども・子育て拠出金には従業員負担はなく、全額会社負担です。拠出金額は、毎年改定されます。2022年度は、標準報酬月額の0.36%となるため、例えば厚生年金の24等級であれば、拠出金額は「41万円×0.36%」で1,476円です。
法定外福利費は項目により上限や条件がある
法律によって定められた福利厚生費以外にも、会社が独自で定めた福利厚生費を法定外福利費として計上することができます。一般的に、実務で福利厚生費という場合、この法定外福利費を指すことが多い傾向です。経費が法定外福利費として認められるには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
・金額が常識的な範囲内
・すべての従業員が対象
・現金支給ではない
・社内で定められた福利厚生の基準に則った支出
また、法定外福利費は項目によってそれぞれに上限や条件があります。以下、各項目について詳しく解説します。
交通費
通勤にかかる費用は、交通費として福利厚生費に計上できます。ただし、公共交通機関を利用する場合、福利厚生費として認められるのは最も経済的で合理的な通勤方法を選んでいる場合となるため、注意しましょう。
例えば、新幹線や特急列車の費用を福利厚生費として計上できるのは、それが最も経済的かつ合理的な手段と認められる場合のみです。そのため、どのような場合でも認められるわけではありません。
また、公共交通機関を利用する場合、福利厚生費となるのは一人あたり1カ月15万円までです。超過した場合は、超過分が給与の一部として課税対象となり、マイカーや自転車を利用する際は片道の通勤距離によって上限額が決まります。例えば、2km以上10km未満の場合の上限額は4,200円、10km以上15km未満の場合の上限額は7,100円です。
出張手当
出張手当は、日当や旅費日当とも呼ばれます。出張にかかった旅費のうち、飲食代や備品代、通信費などが出張手当の対象です。ただし、交通費や宿泊代は出張手当ではなく交通費に含まれるため、注意しましょう。出張手当は、金額が妥当な範囲内であれば全額を出張手当として福利厚生費に計上できます。
しかし、出張手当に関しては国税庁が妥当な金額として具体的な金額や基準を提示しているわけではありません。そのため、それぞれの会社が独自で目安となる出張旅費規程を作成しておく必要があります。出張先の物価などを考慮して、1泊あたりの目安をあらかじめ決めておきましょう。
食事補助
飲食代の半分以上を従業員が負担して、会社側負担が一人あたり月額3,500円以下であれば、食事補助として福利厚生費に計上できます。例えば、従業員が1カ月に1万円の食事をし、会社側がそのうち3,000円を負担した場合は、福利厚生費として計上可能です。
しかし、6,000円を会社が負担した場合は、飲食代の半分以上を従業員が負担する要件を満たしていないため、食事補助費として認められません。また、従業員が6,000円を負担し、会社が4,000円を負担した場合も、企業側負担が一人あたり月額3,500円以下の要件を満たしていないため、認められません。
ただし、残業時や深夜勤務者に対して食事を現物で支給する場合は、全額を福利厚生費として計上できます。この場合に限って食事代補助として現金支給もできますが、その際には1食あたり300円が上限です。
慶弔見舞金
慶弔見舞金は、従業員やその家族の結婚お祝い金や葬儀の香典、ケガや病気をした際の見舞い金などです。慶弔見舞金の範囲は幅広く、見舞いの品や式場に飾る装花の費用も慶弔見舞金として福利厚生費に計上できます。
また、企業によっては就任・昇進祝い金や創立記念祝い金のような独自で設定した慶弔見舞金を設けているところもあります。慶弔見舞金は、現金支給でも問題ありませんが、金額は常識の範囲内となることが必要です。
また、慶弔見舞金は正しい使われ方をしているかを問われるケースがあります。そのため、支給する際には結婚式の招待状や公的確認書類、退院証明書、罹災証明書などを本人から提出してもらい、社内で保管しておくようにしましょう。
社宅
社宅の費用も、福利厚生費として計上できます。その際の条件は、従業員が賃貸料相当額の半額以上を支払っている場合です。例えば、家賃が10万円の住宅を会社が借り、それを従業員に貸し出すとしましょう。会社が4万円を負担し、従業員が6万円を負担する場合は、社宅費として福利厚生費に計上できます。
しかし、会社が5万円以上を負担する場合は福利厚生費として認められません。また、従業員が契約した賃貸住宅の家賃を会社が負担する場合も、社宅とは認められないため、注意が必要です。そのほか、従業員に住宅手当として現金で支給する場合も、福利厚生費として計上することはできません。
歓送迎会や新年会
歓送迎会や、新年会といった宴会費用も福利厚生費として計上できます。ただし、その場合には会がやむを得ず出席できない従業員を除く、すべての従業員を対象としたものでなければなりません。
また、会社負担費用が社会通念上一般的な範囲となることも重要なポイントです。目安としては、一人あたり5,000円程度を上限とするとよいでしょう。さらに、会社の負担額はどの会でも一律となる要件も満たしている必要があります。
社員旅行
社員旅行や、慰安旅行のためにかかった費用を福利厚生費として計上するためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。まず、挙げられるのは旅行が4泊5日以内であることです。たとえ、会社が行った社員旅行や慰安旅行であっても、旅行のスケジュールが4泊5日を超えた場合は、福利厚生費として計上できません。
また、その旅行にはパートやアルバイトも含めた全従業員の半数以上が参加していることも満たすべき条件の一つです。そのほか、「一人あたりの旅費が10万円以内」「旅行に参加できない従業員に対して現金などを支給していない」などの条件も満たす必要があります。
健康診断
社員を対象とした健康診断や人間ドッグ、予防接種の検診費用も福利厚生費として計上できます。しかし、その場合にもいくつかの条件を満たしていなければなりません。まず、挙げられる条件は、健康診断や人間ドッグがすべての従業員を対象としていることです。
ただし、人間ドックは40歳以上など、内容によって年齢ごとに制限を設けることは問題ありません。また、その際の費用は会社が各医療機関に直接支払っている必要があります。会社が従業員に現金を支給して個人的に受診してもらう場合には、給与扱いとなるため、注意しましょう。
さらに、金額が「社員の健康管理上必要とされる程度の常識の範囲内」という要件を満たすことが必要です。費用があまりに高額な場合、福利厚生費として認められないことがあります。
保養所
会社が保養所や別荘などを購入したり借り上げたりした場合、従業員がそれらの施設を利用するための費用を福利厚生費として計上できます。ただし、その際には3つの要件を満たしていなければなりません。
まず、挙げられるのは、金額に妥当性があることです。具体的な金額の決まりはないですが、「無償で利用できる」「有料でも施設が豪華すぎる」といった場合は、給与扱いになる可能性があるため、注意しましょう。
また、施設を全従業員が利用できることも要件の一つです。例えば、保養所や別荘を一部の役員しか利用できないような場合、そのための費用は福利厚生費ではなく役員の給与扱いとなります。最後に、社内規定への明記と利用実績の記録です。福利厚生費として計上するためには、従業員の利用状況が分かるように記録を残しておかなければなりません。
上限以外にも注意!福利厚生費として認められないケース例
経費が福利厚生費として認められるためには、金額の上限以外にもいくつか注意したいポイントがあります。ここからは、福利厚生費として認められないケースを紹介します。
家族経営している場合
福利厚生費は、経営者以外の従業員やその家族の身体面や精神面での健康にかかわる経費です。家族経営の会社の場合、たとえ家族が従業員として会社に雇用されていたとしても、その家族は従業員とはみなされません。
そのため、経営者家族の従業員の宿泊費や医療費、食費などを福利厚生費として計上することはできません。なぜなら、それらの費用は家計で負担すべきものとされているからです。もし、会社がそれらの費用を負担した場合は、福利厚生費ではなく給与として扱われます。
個人事業主で従業員がいない場合
福利厚生費は、あくまでも経営者以外の従業員とその家族のためのものです。そのため、経営者の事業主自身の食費や医療費、宿泊費などは福利厚生費として認められません。
つまり、個人事業主で従業員がいない場合は、福利厚生費の対象となる従業員がいないことになります。従業員がいない会社の場合、どのような福利厚生費も計上することはできないと考えてよいでしょう。
福利厚生費の上限に関して注意したいこと
最後に、福利厚生費の上限に関していくつか押さえておくべきポイントを紹介します。
社内ルールとしてはっきり明記しておく
福利厚生費は、全従業員を対象にしたものでなくてはなりません。また福利厚生費として計上できる金額の上限や守るべきルールは、あらかじめ定められているため、事前に社内規定や就業規則に福利厚生のルールをしっかりと記載しておきましょう。
社内規定や就業規則に守るべき事柄を明確に記載しておけば、すべての従業員がいつでも目を通して確認することができます。また、社内規定や就業規則への記載は、会社が福利厚生をすべての従業員に公平に付与していることの証明にもなるでしょう。
従業員にわかりやすく説明する
経費を福利厚生費として計上するためには、金額の上限や定められた条件を守る必要があります。そのため、福利厚生の対象となる全従業員に福利厚生の利用方法やルールなどを周知させなければなりません。福利厚生費として計上したほうが会社だけでなく、従業員にとってもメリットがある点をしっかりと説明しておけば、従業員からの協力を得られやすくなるでしょう。
また、場合によっては福利厚生の利用に関するレシートやレポートなどが必要になることもあります。正しく福利厚生を活用していることを証明しなければならないケースがあることも事前に通知しておくと、スムーズに進めることできるでしょう。
福利厚生費とならなかった場合は課税対象になる
「金額が上限を超えてしまった」「出費が福利厚生費として認められなかった」といった場合は、超過分や認められなかった分が福利厚生費ではなく給与扱いとなります。給与扱いとなってしまうと非課税ではなくなり、会社は源泉徴収をして税金を納付しなければなりません。万が一、納付を怠った場合には、追徴課税が課されるため、人事や総務、経理の担当者は福利厚生の制度をしっかりと理解しておくことが必要です。
また、あとから出費を給与扱いに変更する手続きには手間がかかってしまうため、ミスが起こらないように前もってよく確認しておくようにしましょう。
福利厚生費として計上するときは要件をよく確認しよう!
福利厚生費に金額の上限はありませんが、福利厚生費の各項目には金額の上限や一定の条件があります。そのため、しっかりと確認して計上することが大切です。
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