はたらく人を元気にするウェブマガジン 福利厚生研究所 by SHINKO

法定福利費率とは?計算方法や注意したいポイントをわかりやすく解説!

法定福利費率とは?計算方法や注意したいポイントをわかりやすく解説!

法定福利費率とは?計算方法や注意したいポイントをわかりやすく解説!のアイキャッチ画像
更新日|2023年4月19日
所長|いくた
この記事の概要

福利厚生とされる費用には、法定福利費と法定外福利費の2種類があります。つまり、法律によって必ず出さなければならない費用と会社独自の判断で決めて良い費用に分かれているということです。法で定められている福利費については、必ず出さなければなりません。この記事では、法定福利費について、割合や計算方法を詳しく説明していきます。

目次

【基礎知識】まずは法定福利費について理解しよう

福利厚生と書いた写真

まず、法定福利費とは何を指すのか、基本的な知識を説明します。

法定福利費とは

法定福利費とは、法律によって事業者に負担が義務付けられている福利厚生の費用のことです。通常は給料から天引きする形で従業員から徴収します。勘定科目では「法定福利費」として分類されるもので、その種類は健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険、そして子ども子育て拠出金の6種類です。

このうち、雇用保険と労災保険は「労働保険」に、健康保険料、厚生年金保険、介護保険、子ども子育て拠出金は「社会保険」に分類されます。義務となっているわけですから、人を雇い入れたとき、事業者はこれらの保険料を負担しなければなりません。

社会保険は、法人は会社全体での加入が義務となっており、個人の場合でも5人以上の雇用があれば加入の義務を負います。労働保険については、雇用形態や人数、法人個人にかかわらず義務とされています。

法定福利費と法定外福利費の違い

福利厚生費には、法定福利費法定外福利費の2種類があります。法定福利費とは社会保険や労働保険のような法律で定められている福利厚生にかかる費用のことです。対して、法定外福利費は、法律の定めがない福利厚生にかかる費用のことをいいます。法定福利費のように事業者の負担が義務となっている費用とは違い、法定外福利費は事業者によって自由に決めることが可能です。

一般的な法定外福利費を例にあげてみると、住宅手当や通勤手当、健康診断、慶弔見舞金といったものがあります。これ以外にも、家族手当や資格取得手当て、特別休暇なども法定外福利費にふくまれます。会社の特性を活かしたユニークなものが多いのも、法定外福利費の特徴です。ただし、一部の従業員だけに支出する費用については、法定外福利費に該当しません。

法定福利費率とは

メモ帳とペン

法定福利費率とは、法定福利にかかる費用を事業主が負担する割合のことです。

法定福利は法律で定められたもので、法定福利費の負担は事業者の義務となっています。ただし、義務といっても費用全額を事業者側が負担するわけではありません。費用は、労働者自身も負担することになっており、実際に負担する割合は法定福利の種類によって異なります。

法定福利費率は?企業が負担する法定福利費の計算方法

電卓

では、ここからは法定福利費率や法定福利費の事業者負担額の計算方法を説明していきます。なお、実際の保険料率は年度や都道府県などによって変わります。

健康保険料

健康保険の保険料率は、約10%になっています。そして、その10%を事業者と労働者が折半する形でそれぞれ負担します。

そのため、事業者が負担する割合は約5%です。事業者負担率が5%の場合、労働者の労務費×5%=事業者が負担する健康保険料となります。

ただし、健康保険料率はそれぞれの都道府県によって異なるため確認が必要です。実際の健康保険率の確認は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の公式サイトで確認できます。

厚生年金保険料

厚生年金保険料も、事業者と労働者で折半します。

2021年度の厚生年金保険料率は18.3%で、それを折半するため事業者負担額は9.15%です。これで計算すると、従業員の労務費×9.15%=事業者が負担する健康保険料となります。

介護保険料

介護保険は40歳になったら納めることが義務付けられている保険で、老化が原因となって起こるケガや病気で介護が必要になったときに利用できます。

介護保険料率は年度によって異なり、2021年度1.79%です。この1.79%を事業者と労働者で折半してそれぞれ負担します。つまり、事業主負担額は0.9%となり、従業員の労務費×0.9%=事業者が実際に負担する健康保険料です。

雇用保険料

雇用保険率は業種によって違うため、どの業種に該当するかで変わってきます。雇用保険は、労働者が離職したときに受給できるもので、次の仕事を決めるまで生活費の心配をすることなく就職活動を行うための重要な保険です。

2021年度の雇用保険の保険料率は1.2%で、事業者は0.8%を、労働者は0.4%を負担します。農林水産業、清酒製造業、建設業については異なる利率が設定されています。なお、計算式は賃金総額×雇用保険料率です。

労災保険料

労災保険料は、労働者の業務中に負ったケガや業務が起因となる病気の際に適用される保険です。もちろん、死亡した際にも保証されるもので、労働者の家族にとってもなくてはならない保険といえるでしょう。

労災保険料は、すべて企業が負担することが原則となっています。保険料率は事業の種別に応じて細かく設定されており、一般的な事業の場合の労災保険料率は0.3%です。保険料の計算式は、賃金総額×労災保険料率になります。

子ども子育て拠出金

子ども子育て拠出金は子育て支援を目的とした保険で、誰もが負担するものです。

そのため、労働者に子どもがいるいないにかかわらず事業者は負担しなければなりません。事業者の負担額は、労災保険料と同じく全額です。子ども子育て拠出金の負担率は0.34%で、標準報酬月額×0.34%という計算式で算出されます。

給与総額に対して法定福利費が占める割合はどのくらい?

円グラフ

労働者を雇用する以上、事業者は法定福利費を負担する必要が出てきます。実際の負担割合はそれぞれ違いますし、すべてを全額負担するわけではありません。それでも、雇用する人数が増えれば増えるほど事業者の負担が大きくなるのは事実です。

単に人材不足という理由で採用を増やしてしまうと、利益より出費の方がかさむこともあるでしょう。一度雇用してしまえば、事業者の事情だけで簡単に解雇することは原則としてできません。そのため、新たな採用を考えるにしても、1人あたりにかかる法定福利費の負担がどれくらいになるかあらかじめ把握しておくことが重要になってきます。

2013年の調査によれば、労働者の給与総額に占める法定福利費の割合は14.7%という結果が出ています。これを金額にすると、事業者側が負担する法定福利費は労働者1人あたりの平均は1カ月で約8万1000円です。

50名雇用している場合は単純計算で1カ月405万円ほど負担していることになります。実際には業種や地域、年度によって細かく負担率が変わるものもあるので、法定福利費の負担は支払給与の15~20%と余裕を持たせて見ておくといいでしょう。

企業が法定福利費を負担することにはメリットがある!

メリット

相応の出費にはなりますが、事業者が法定福利費を負担することにはメリットがあります。具体的にどのようなものか、見ていきましょう。

従業員とその家族を守れる

メリットの1つは、労働者とその家族を守れることです。社会保険にしても労働保険にしても、加入していることでさまざまなリスクから労働者本人はもちろん、その家族も安心して働くことができます。

中には、子ども子育て拠出金のようにすべての労働者が恩恵を受けられるわけではない保険もあります。しかし、労災保険に加入していれば業務上の事故に備えておけますし、万が一、死亡という重い事態になったときも家族への保証が可能です。

雇用保険があれば、労働者が失業状態に陥ったときでも生活費にあてることが可能になります。失業状態とは、労働者が自ら退職を願い出る場合だけに限定されてはいません。経営の悪化による事業縮小など事業者側の事情で止むを得ず整理解雇が必要になることもあるでしょう。そのような不測の事態にも、雇用保険があれば労働者と家族を守ることができます。

これらの保険があることで労働者は安心して働けますし、何か起こったときもただちに困ることはありません。しかも、保険料の半額または全額を事業者が負担することで、労働者の負担を軽減できるわけです。もしも労働者が全額負担するとしたら、その分、給料が減ることになり、労働者とその家族にとって大きな負担です。

就職先を探す際も、社会保険と労働保険が完備されているかどうかを条件にする人は多く、求人を出しやすいのもメリットといえます。

社会的な信用を失わずに済む

法定福利厚生は法律で定められたもので、雇用者の人数に関係なく法定福利費を負担する義務を負います。たしかに、雇用する人数が増えれば増えるほど事業者の負担は大きくなりますが、だからといって加入しなければ違法になります。個人事業主の場合は、雇用する人数によって強制ではない法定福利厚生もありますが、法人は原則として雇用人数は関係ありません。

もしも、事業者が社会保険に加入していない場合、年金事務所から加入をうながされます。そのまま従えば特に問題はないでしょうが、拒否したときは立入検査が実施され、強制的に加入させられます。場合によっては、最大2年分の社会保険料の支払いが事業者に命じられるかもしれません。そのうえ、6カ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金を課せられることもあります。そのような事態になれば、その事実が公になる可能性が高くなり、社会的な信用を失うことになるでしょう。

一度失った信用を取り戻すのは大変なものです。信用を落としてしまえば顧客離れが起こる可能性が高まりますし、労働者離れも起こりやすくなります。業種によっては、他社に渡したくない重要な技術者や有能な営業社員が流出するかもしれません。また、金融機関からの融資を受ける際の条件が厳しくなる可能性も出てきます。そうなれば、会社自体の立て直しが困難になることも考えられ、元の状態に戻すまでに時間がかかることもあります。

建設業における法定福利費について

建設現場

法定福利費について注意しておきたいのは、建設業においては他の業種とやや異なることです。では、どのような点に注意しておけばいいのかを説明していきます。

法定福利費は見積書への記載が必要!

建設業の場合、工事の見積書を作成する際に法定福利費を記載しなければなりません。これまで、法定福利費の取り扱いは建設業の場合は不明瞭な状態でした。しかし、2018年に国土交通省が作成した「法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順」によって明らかにされています。建設業は、一人親方と呼ばれる実質1人で請け負う形態から大勢の労働者を雇用する法人までさまざまです。

一人親方の場合は、国民健康保険と国民年金のみの加入になりますが、個人事業者と法人は加入する保険が変わってきます。雇用人数が5人未満の個人事業者は雇用保険、国民健康保険、国民年金の加入が必要で、雇用人数が5人以上の個人事業者とすべての法人は雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入が必要です。建設業で見積もりを提出するときは、該当する社会保険料を確保したうえで内訳を明示しなければなりません。

建設業の現場作業員となると、肉体労働が中心となるためリスクの高い仕事になります。突発的な事故やケガに見舞われる可能性が高いことから、社会保険加入の徹底を目的として見積書の記載が実施されています。さらに、法定福利費の負担義務を果たさない企業への対策となっているので、必ず守るようにしましょう。

法定福利費の計算方法は?

見積書の内訳に明記する必要があるのは、健康保険料と厚生年金保険料、雇用保険料のうち事業者が負担する金額です。法定福利費は、労務費総額×法定保険料率の計算式で求めることができます。法定保険料率は、保険によって異なります。

健康保険料や厚生年金保険料などそれぞれの法定保険料率を労務総額にかけるだけです。

法定福利費率に関してよくあるQ&A

Q&A

最後に、法定福利費率に関してよくあるQ&Aを紹介していきます。

法定福利費率を計算するときの注意点は?

まず注意しておきたいことは、それぞれの保険料率はすべて同じではないことです。

雇用保険にしても労災保険にしても、年度や都道府県、業種などによって保険税率は変わります。今回、この記事で紹介した税率は一例であり、自社の保険税率を正しく把握しておくことが大切です。また、労働者が加入している保険によって掛ける保険料率が異なるため、保険ごとの加入者の確認も必須になります。

「企業の負担率16%」とは?

法定福利費について調べていると「企業の負担率16%」という言葉を耳にすることは多いかもしれません。

事業者の社会保険料の負担率は、合計すると約15%です。社会保険と労働保険の事業者負担部分の保険料率を合算したときは約16%になります。

法定福利費は保険料率などをよく確認して計算しよう!

計算する女性

法定福利費は、全部で6種類あります。法定福利厚生は原則として加入が義務付けられているもので、それにかかる法定福利費は事業が負担しなければなりません。加入していない場合、保険によっては罰則が設けられているので注意が必要です。また、それぞれ保険料率が異なるため、しっかり確認してからミスのないように計算しましょう。

はたらく人を元気にする会社

メルマガ会員登録

メルマガに登録して、
最新の情報をキャッチ!

  • 福利厚生研究所の記事更新のお知らせ
  • 福利厚生や健康経営のおすすめ情報
  • 心幸グループ(運営元)のキャンペーン情報
  • 健康経営サポートオンラインセミナーのご案内 等

メールのアイコンMAIL MAGAZINE

    メールアドレス*