健康経営優良法人とは?認定基準や申請方法・認定のメリットを解説
健康経営優良法人認定制度とは、経済産業省が推進する、企業の健康経営を促進するための制度です。
大企業から中小企業まであらゆる企業が参加でき、年間1回の申請制度により、申請企業に対して審査が行われます。認定基準に適合した企業は、健康経営優良法人として認定され、認定マークの使用が許可されます。この認定は対外的に健康経営に取り組んでいる証となり、事業活動にもさまざまな良い影響をもたらします。
今回は、健康経営優良法人認定制度の概要・大企業向けのホワイト500および、中小企業向けのブライト500について解説していきます。各認定制度の評価項目や、申請の流れを理解するとともに、健康経営への取り組みは企業経営にどのようなメリットがあるのか理解していきましょう。
目次
健康経営優良法人とは
健康経営優良法人認定制度は、2016年に経済産業省が設立した制度であり、特に優れた健康経営を行う大企業や中小企業などの法人を明確にすることで、従業員や求職者、関係企業、金融機関などからの評価を受けられる環境を整備することを目的としています。この制度では、健康・医療新産業協議会健康投資ワーキンググループによって定められた評価基準に基づき、日本健康会議が「健康経営優良法人」を認定しています。
健康経営に注目する企業は年々増加しており、「健康経営優良法人2023」では、大規模法人部門に2,676法人(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加)、中小規模法人部門に14,012法人(上位法人には「ブライト500」の冠を付加)が認定が認定されました。
そもそも健康経営とは?
健康経営とは、以下の意味を持ちます。
「従業員等の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」
引用:経済産業省
企業で働く人々の健康管理を、従業員に任せきりにするのではなく、従業員の健康管理に企業が主体的に取り組むことが事業拡大につながるという考えがポイントとなります。
優秀な従業員が心身ともに健康な状態であれば、パフォーマンスも上がり、事業活動に貢献が期待できます。また、従業員の健康に企業が投資していくことで、離職防止・従業員満足度の向上の効果もあるでしょう。
健康経営に取り組んだ企業の中で、とくに優れている企業に送られるのが健康経営優良法人認定のため、この認定を受けている企業は社会的信頼度も増大します。健康経営優良法人のロゴマークを使用すれば、ひと目で認定の証明となりますし、関係企業や金融機関などからの評価もあがりやすくなります。
大規模法人と中小規模法人の従業員数
健康経営優良法人の認定は、大企業法人と中小企業法人にわかれて審査されます。それぞれの規模要件は以下の通りです。
大企業と中小企業をわける際には、「卸売業・小売業・サービス業・製造業その他」の4つの業種別に、それぞれ従業員数の要件があります。中小企業の部門では、従業員数の要件に加えて資本金または出資金額の要件もあるので確認してください。
上記以外の法人は、下記図のように細かく要件が決められています。こちらもあわせて参考にしてください。
なお、基本的には総務省の日本標準産業分類を適用し、分類していきます。
大規模法人向けの「ホワイト500」認定
健康経営優良法人認定の中に、「ホワイト500」という大規模法人向けの認定制度があります。
健康経営優良法人の大規模法人部門の中で、健康経営度調査結果の上位500法人が「ホワイト500」として認定されます。 「健康経営優良法人2020」から制度の変更があり、それまでは大規模法人部門の認定法人全体を「ホワイト500」としていました。ホワイト500に入るには、より確かな自社の取り組みを実施し、アピールすることが求められます。
最新版ホワイト500の企業一覧はこちらからご確認いただけます。
参考:ACTION!健康経営 健康経営優良法人2023 発表
中小規模法人向けの「ブライト500」認定
大規模法人に続けて、中小規模法人への健康経営の普及を進めていくために設けられたのが「ブライト500」認定です。大規模法人向けのホワイト500と同様に、とくに健康経営への取り組みが優秀な上位500の中小企業へ認定される冠です。
基準は、「健康経営優良法人のなかでも優れた企業」「地域において健康経営の発信を行っている企業」です。大規模法人部門の優良法人の条件と同レベル基準を達成する必要があります。
最新版ブライト500の企業一覧はこちらからご確認いただけます。
参考:ACTION!健康経営 健康経営優良法人2023 発表
健康経営銘柄との違い
健康経営優良法人についての質問で、「健康経営銘柄との違いはなんですか?」という質問がよくあげられています。
健康経営銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する顕彰制度であり、長期的な視点から企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力的な企業として紹介することで、企業による健康経営の取り組みを促進することを目的としています。
「健康経営銘柄2023」では、31業種から49社が選定されました。
参考:経済産業省「健康経営銘柄2023」に49社を選定しました!
健康経営が注目された背景
そもそもなぜ、健康経営が昨今のように注目されるようになったのでしょうか。
- 働き方改革の推進:働き方改革が進む中、労働環境の改善や健康管理の重要性が高まっています。
- 人材確保のための競争:人材確保のためには、魅力的な職場環境を提供することが求められており、健康経営はその重要な要素の一つとなっています。
- コスト削減の必要性:健康経営を実践することで、従業員の健康維持につながり、医療費などのコスト削減につながるとされています。
- SDGsの取り組み:企業においても、社会的責任を果たすことが求められる中、健康経営はSDGsの目標達成にも関連しています。
これらの要因が重なり、健康経営が注目されるようになっています。
健康経営優良法人への注目度も右肩上がり
2016年に開始した健康経営優良法人認定制度への注目度は、近年ずっと右肩上がりとなっています。
〇健康経営アワード2017
「健康経営優良法人2018」として、大規模法人部門に235法人、中小規模法人部門に95法人が認定
〇健康経営アワード2018
「健康経営優良法人2018」として、大規模法人部門に539法人、中小規模法人部門に775法人が認定
〇健康経営アワード2019
「健康経営優良法人2019」として、大規模法人部門に813法人、中小規模法人部門に2501法人が認定
〇健康経営アワード2020
「健康経営優良法人2020」として、大規模法人部門に1481法人(うち500法人を「ホワイト500」とする)、中小規模法人部門に4723法人が認定
〇健康経営アワード2021
「健康経営優良法人2021」として、大規模法人部門に1801法人(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加)、中小規模法人部門に7934法人(上位法人には「ブライト500」の冠を付加)が認定
〇健康経営アワード2022
「健康経営優良法人2022」として、大規模法人部門に2,299法人(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加)、中小規模法人部門に12,255法人(上位法人には「ブライト500」の冠を付加)が認定
〇健康経営アワード2023
「健康経営優良法人2023」として、大規模法人部門に2,676法人(上位法人には「ホワイト500」の冠を付加)、中小規模法人部門に14,012法人(上位法人には「ブライト500」の冠を付加)が認定
この盛り上がりに伴い、企業による従業員への健康増進に関わる取り組みに対して、独自のインセンティブを付与する自治体や金融機関も増え、まさに健康経営ブームが到来しているといえるでしょう。
健康経営優良法人を取得するメリット
健康経営優良法人の認定を取得するメリットについて、ポイントをまとめていきます。
健康経営優良法人の認定を受ければ、従業員の健康に気配りをしている「ホワイト企業」というイメージを醸成することができます。優良法人の名のもとに、優良で信頼性のある企業として企業ブランディングにも効果的であり、採用や事業活動にプラスの影響を与えやすいのがメリットです。
また、一口に健康といっても、体と心それぞれの健康へアプローチする必要があります。
- 過度な残業防止、業務間インターバルの導入、有休消化推奨など=働き方改革に通ずる施策の検討
- 在宅ワークが続く従業員へ運動促進をする施策
- 定期的な健康診断
- パワハラやモラハラなど、各種ハラスメント防止
- 産業医面談の推進
- 育児や介護、プライベートと仕事を両立させて心の状態を良好に保つためのアプローチ
- 社内コミュニケーションの活性化、1on1の実施など従業員同士の信頼関係構築と心理的安全性の醸成など
健康経営の施策は多岐にわたりますが、バランスよくさまざまなアプローチをおこなうことで、従業員の長期定着、パフォーマンス向上などのメリットも期待できるでしょう。
健康経営に実際に取り組み、成果を上げている企業事例もあわせて参考にしてみてください。
参考事例:“よこしまスタート”で発足。「健康経営素人」が30超の施策を実施してわかったこと
健康経営優良法人2023認定基準とは
健康経営優良法人の認定要件は、大規模法人と中小規模企業法人で異なります。それぞれの要件と、申請ステップを確認しましょう。
健康経営優良法人2023・中小規模法人部門の評価項目
健康経営優良法人2023の、中小規模法人部門の評価項目は以下のとおりです。
認定までの流れ
1.経済産業省が実施している「従業員の健康に関する取り組みについての調査」に回答
2.回答結果をもとに健康経営優良法人の要件に適合しているか判定してもらう
3.健康経度が上位50%であれば申請資格を獲得可能。その後、保険者と連名で申請する
4.認定審査を受ける
5.日本健康会議より認定
健康経営優良法人2023・大規模法人部門の評価項目
続いて、健康経営銘柄2021と健康経営優良法人2021の大規模法人部門の評価項目をみてみましょう。
認定までの流れ
中小法人部門は大規模法人部門の流れと異なります。
1.所属する保険者が実施する「健康宣言」に参加
2.認定基準に該当する自社の具体的な取り組みについて申請書に記載
3.保険者経由で申請
4.認定審査を受ける
5.日本健康会議より認定
中小規模法人部門では、所属している保険者(全国健康保険協会および健康保険組合)が健康宣言の取り組みをもとに申請しますので、保険者が健康宣言しているかどうかをまずは保険者に問い合わせる必要があります。
健康経営優良法人の申請の流れ
申請スケジュールについて、健康経営優良法人2023を例にとって確認していきましょう。
まず、健康経営銘柄と、健康経営優良法人の大規模法人部門および中小規模法人それぞれの申請フローは以下の図のとおりです。
まとめ
健康経営優良法人とは、企業主体となって健康経営に真剣に取り組み、健康経営優良法人認定の評価項目を満たした企業に与えられる認定です。一人ひとりが自主的に健康維持に向き合うのではなく、国・地域・保険者・民間企業が一丸となって健康に取り組むことで、さまざまな相乗効果が生まれます。
健康経営優良法人認定の認定企業数は急増しており、健康経営テーマの産業も盛り上がっていくと期待できるでしょう。
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