企業によるメンタルヘルス対策の取り組み事例10選!ケアの重要性や具体例を紹介

仕事の質や生産性向上につなげるためにも、従業員のメンタルヘルスケアに力を入れることは重要です。メンタルヘルスが不安定な状態が続くと、ミスや事故の発生頻度が高まり、企業全体の意欲低下につながりかねません。そのため、メンタルヘルスケアに力を入れることは、従業員の心身の健康状態を良好に保ち、持続的な企業の成長を促します。
この記事では、厚生労働省が勧める3つの予防対策や4つのケア、メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業事例10選もあわせて紹介します。
目次
企業でメンタルヘルスケアが重要視される背景

そもそもメンタルヘルスケアとは、社員やパートなどの従業員や労働者の精神的な健康をサポートし、維持・向上に努めるための企業の取り組みや活動のことです。
近年、このメンタルヘルスケアが企業にとって重要視される背景には、さまざまな要因があります。
現在にかけて、社会の急速な変化やテクノロジーの変化などに伴い、人々は新たなストレスに直面しています。
これにより、メンタルヘルス不調に陥る従業員が増加傾向にあり、それが仕事の質や企業の生産性に影響をもたらしているのです。
実際に、2023年8月に厚生労働省が発表した資料に基づくと、過去1年間にメンタルヘルス不調によって1か月以上休業、または退職した従業員がいる事業所の割合は13.3%にのぼります。
これは、前年度の調査で10.1%であったため、増加傾向にあると考えられます。
参考/厚生労働省「令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」
一方で、社会全体でメンタルヘルスに対する認識が向上しており、インターネットが普及したことで、そのケアや治療方法についての情報収集がしやすくなりました。
それに伴い、メンタルヘルス対策やその重要性に関する啓発活動がますます増えています。
こうした背景から、メンタルヘルスケアに励むことは、仕事の質や生産性が向上し、そして企業の継続的な成功につながるため、多くの企業が重要視しています。
企業がメンタルヘルスケアに取り組むことで得られる効果

企業がメンタルヘルスケアに取り組むことで期待できる効果やメリットとして、主に以下のことが挙げられます。
・生産性の向上につながる
・離職者の低下が期待できる
・従業員の心身にかかわる健康を維持・向上につながる
・職場環境を改善できる
・企業イメージの向上が期待できる
・リスクマネジメントにつながる
従業員のためだけではなく、企業の経営戦略にとって欠かせないことがわかります。
生産性の向上につながる
企業がメンタルヘルスケアに力を入れると、従業員の集中力が高まり、仕事の効率や質の向上につながります。
反対に、ストレスや不安といったメンタルヘルス不調に悩む従業員は、仕事へのやる気や集中力が下がり、ミスや事故が増えたり、ペースが遅くなったりします。
また、仕事の遂行能力が低下し、パフォーマンスを十分に発揮できません。
そこで、メンタルヘルスケアを実施すると、従業員の心が安定化し、仕事へのモチベーションアップにつながります。
そして、従業員のポテンシャルを最大限引き出すことができ、企業全体の生産性向上に期待できます。
離職者の低下が期待できる
企業がメンタルヘルスにまつわる問題に対して十分なサポートを提供すると、従業員は心身の調子が改善し、長期にわたって職場に留まる可能性が高まります。
つまり、離職率の低下を抑えることにつながります。
これにより、優秀な人材の流出を抑制できるため、新人研修や採用活動にかかる費用を削減できたり、高い生産性を保持したりすることが可能です。
従業員の心身にかかわる健康を維持・向上につながる
メンタルヘルスケアは、従業員の心身にかかわる健康問題を抑制し、健康の維持・向上に期待できます。
企業が適切なメンタルヘルスケアを行うことで、従業員一人ひとりが迅速にメンタルヘルス不調に気付くため、トラブルの深刻化・長期化を防げます。
また、早い段階ならトラブルの悪化がしにくく、早期回復により不必要な病欠を減らすことが可能です。
加えて、従業員自身が進んでメンタルヘルスケアについての理解を深めれば、心の変化にいち早く気付き、安定化につながります。
職場環境を改善できる
企業がメンタルヘルスケアについて真剣に向き合うと、職場環境の改善につながります。
もし、職場内でハラスメントが発生すると、従業員はメンタルヘルス不調が深刻化し、職場への信頼感や所属意識が弱くなります。
実際に、2024年5月に厚生労働省が公表した職場のハラスメントに関する実態調査に基づくと、ハラスメントが原因で眠れなくなった方は25.0%、通院や服用をしている方は10.7%を占めていることが判明しました。
これらは、2020年度に実施した調査よりも増加傾向にあり、事態が深刻化しつつあります。
このように、ハラスメントが起こると従業員のメンタルヘルス不調が深刻化するため、従業員にとって働きやすい環境を整えることが大事です。
それが、企業の長期的な成功につながり、どんな困難な状況でも一致団結して乗り越える土台となります。
参考/厚生労働省「令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」
企業イメージの向上が期待できる
現代の社会では、従業員に対する企業の取り組みや社会的責任と、企業イメージや消費者の選択が強く関係しています。
メンタルヘルスケアを実施すると、職場環境が良ければ企業イメージがアップし、企業価値の向上に直結します。
これにより、スムーズに採用活動が行えたり、ビジネスを拡大できたりします。
また、従業員一人ひとりが働きやすい環境を整えると、ホワイト企業に認定される傾向です。
そして、人材が定着しやすくなるため、社内外からの評価が高くなりやすいです。
リスクマネジメントにつながる
メンタルヘルスケアに取り組むことは、リスクマネジメントにつながります。
リスクマネジメントとは、企業活動で起こりうるリスクを事前に想定し、取るべき対策を講じて、リスクの回避や損失を最小化するプロセスのことです。
メンタルヘルス不調になっている従業員は、集中力や注意力が低下し、ミスや事故といったリスクが上昇します。
もしかしたら、本人だけではなく周囲の従業員にも人命の影響を与え、最悪の場合、メンタルヘルス不調の原因が企業側にあると、訴えられる可能性もあります。
したがって、適切なメンタルヘルスケアを通して、これらのリスクを予防し、長期にわたって従業員の心が安定すれば、企業の安全性や信頼性を維持し存続することが可能です。
企業内でみられるメンタルヘルス不調のサイン

いち早く従業員のメンタルヘルス不調に気付くためには、行動面・精神面・身体面からくみ取れるサインを日頃から確認することが大事です。
これにより、早い段階で適切な措置が講じられ、トラブルの深刻化を防げます。
ここでは、具体的に従業員がどのような行動や様子が見られると、メンタルヘルス不調が起こっているのかについて紹介します。
行動面の不調サイン|いつもと違った行動が増える
メンタルヘルス不調によって起こす行動として、以下のことが挙げられます。
・ささいなことで怒る
・大好きだった趣味に興味関心がなくなる
・遅刻、早退、欠勤が増える
・職場での報連相や会話がなくなる
・ヒヤリハットが増える
・ネガティブな発言が多くなる
・表情に活気がなく、元気がなくなる
・服装が乱れ、衣服が不潔な状態が続く
こうした行動面の不調サインは、心の安定を保てなくなることで、いつもと違った行動が増えるのが特徴です。
たとえば、いつも欠勤がなかった従業員が連続して無断欠勤が続いたり、ミスが通常よりも増えたりしている場合は、メンタルヘルス不調の可能性があります。
従業員の様子を日頃から観察し、いつもと違うと感じたら、適切なメンタルヘルスケアを講じましょう。
精神面の不調サイン|ネガティブな感情を抱く
メンタルヘルス不調を起こすと、従業員の心が不安定になり、以下のような症状が現れる傾向です。
・業務へのやる気や集中力が欠けている
・すぐに不安を感じたりイライラしたりする
・自分への自信がなくなる
こうしたネガティブな感情が続くと、以下のような精神疾患を抱えるリスクが高まります。
・うつ病
・パニック障害
・不安障害
・適応障害
・睡眠障害
・依存症
精神疾患は回復するまでに多くの時間を必要とするため、企業全体で早期にメンタルヘルス対策を講じて予防することが大事です。
身体面の不調サイン|健康不安が増える
従業員がメンタルヘルス不調に陥ると、以下のように身体にも悪影響をもたらします。
・慢性的な頭痛、肩こり、腰痛など健康不安を抱える
・夜に熟睡ができない
・食欲や体重の増減が激しい
・疲労感が続く
・いつも以上に喫煙・飲酒を繰り返す
・体に不自然な傷がある
・めまいや微熱が続く
・胃痛、便秘、下痢などが治らない
従業員の体調変化とメンタルヘルス不調は関連しているケースがあります。
いつもと違う体調が2週間程度続いている場合は、メンタルヘルス不調を疑ってみると良いです。
また、従業員自身が体調の変化に気付いていなかったり、忙しさや劣等感のあまり体調不良を隠したりすることもあります。
たとえば、「最近体調は大丈夫?」「元気に過ごせている?」と聞いてしまうと、「はい、大丈夫です」や「元気に過ごせています」という回答が多くなり、本当の体調や気持ちが明確にわかりません。
代わりに、「今日は何時に起きたの?」「今朝は何を食べたの?」といった、はいやいいえでは回答できない質問をすると、具体的な状況がわかるため、メンタルヘルス不調に気付きやすいです。
企業のメンタルヘルスケアに効果的な3つの予防対策

企業によるメンタルヘルスケアには、3段階の予防対策と4つのケアが有効だと考えられています。
これらは、メンタルヘルスケアを進めるにあたって基礎となるため、しっかりと把握することが大事です。
最初に、3段階の予防対策を以下の段階に分けて解説します。
・【一次予防】メンタルヘルス不調を未然に防止する
・【二次予防】メンタルヘルス不調の早期発見と適切な措置
・【三次予防】職場復帰支援と再発予防
1つずつステップを踏みながら実施しましょう。
【一次予防】メンタルヘルス不調を未然に防止する
一次予防は、メンタルヘルス不調の未然防止に努めるための取り組みです。
不調が深刻化する前に要因を明確にし、ストレスが発生しない職場環境を構築します。
具体的には、以下のような取り組みを実施して、労働環境の改善につなげます。
・照明や空調といった物理的な環境を整備する
・最適な仕事量になるように調整する
・企業の組織形態を整える
・ストレスケアに関する研修や制度を導入する
・従業員間のコミュニケーションを促進する
こうした取り組みは、すぐに効果が出るわけではないものの、従業員のモチベーションアップやメンタルヘルスの意識向上につながります。
そのため、生産性アップや活性化させたい企業にとって、重要な基礎となります。
【二次予防】メンタルヘルス不調の早期発見と適切な措置
二次予防は、メンタルヘルス不調に陥っている従業員をいち早く発見し、適切な対応を講じるための取り組みです。
メンタルヘルス不調は長引くほど深刻化するため、早い段階で不調を見つけることが重要です。
そして、速やかに適切な措置を行うことで、うつ病や適応障害といった重大な精神疾患を発症する前に、いち早く心の健康を回復できます。
その際、以下のような取り組みを実施して、従業員が気軽に相談できるような職場環境を整えることが求められます。
・産業医とのカウンセリングを実施する
・メンタルヘルスを専門とする外部サービスと連携する
・相談窓口を設ける
・メンタルヘルスやストレスにまつわる研修を行う
・従業員同士が異変に気付き、サポートできる環境を整える
メンタルヘルス不調を速やかに発見するためには、従業員自らが異変に察知することと、上司や同僚などの周囲の従業員が気付くことが重要です。
また、定期的にストレスチェックを行ったり、産業医を雇用したりして、メンタルヘルス不調を速やかに察知・解決しやすい環境を整えることも大事です。
【三次予防】職場復帰支援と再発予防
三次予防は、メンタルヘルス不調で休職した従業員に対し、疾患の治療や職場復帰をサポートする取り組みです。
また、復帰後にメンタルヘルス不調が再発して離職を防ぐためにも、細やかなケアとフォローアップを実施します。
具体的には、以下のような取り組みを通じて、スムーズかつ健康的な職場復帰ができるように手厚くサポートします。
・職場復帰支援プログラムを策定する
・治療に専念できる体制を整える
・治療を行える医療機関を紹介する
・職場復帰時の受け入れ環境を整備する
・職場復帰支援プランを作成する
その他にも、休職手当を用意して治療に専念できる環境を整えたり、時短勤務や残業時間を制限して、職場に復帰しやすい環境を整えたりすることも大事です。
また、休職した従業員が職場復帰を果たすと、不安や焦りを感じて心が不安定になる恐れがあります。
途中まで順調に回復しても、不安や焦りで疾患が再発してしまっては元も子もありません。
そのため、産業医や専門家の意見に沿いながら、休職した従業員を手厚くサポートすることが大事です。
企業のメンタルヘルス対策に有効な4つのケア

3段階の予防対策に加え、厚生労働省が推奨する以下の4つのケアを実施することにより、メンタルヘルスのトラブルを未然に防ぐだけではなく、発生時に適切な対策を講じることが可能です。
・セルフケア
・ラインケア
・内部EAP
・外部EAP
これらのケアは、メンタルヘルス不調による休職や退職を避けるために重要です。
それぞれのケアをもとに、しっかりとメンタルヘルス対策を進めましょう。
参考/厚生労働省「こころの耳」
セルフケア|従業員自身が行うケア
セルフケアは、従業員自身のストレスと向き合い、適切な措置を実施するケアのことです。
メンタルヘルス不調に最も気が付きやすいのは、他ならぬ従業員自身です。
企業は、従業員自身の心が不安定になった際、早期に対応してもらえるようにセルフケアを手厚くサポートします。
セルフケアをうまく行ってもらうためには、メンタルヘルスやストレスに関する知識を正しく理解しましょう。
そして、ストレスチェックを通じて、従業員にストレスの認識を高めることも大事です。
加えて、従業員によってストレスへの対処法が異なるため、自身に合ったものを見つけるサポートをしましょう。
従業員自身がストレスへの対処法を理解することで、メンタルヘルス不調を抱えるリスクが低下します。
ラインケア|企業の管理者が実施するケア
ラインケアは、企業の管理監督者が、自分の部署・チームに属する部下に対して行うケアのことです。
管理監督者が行う役割として、以下のような取り組みがあります。
・職場環境の把握と改善をする
・従業員からの相談に乗る
・職場復帰の支援を行う
管理監督者は、従業員の異変にいち早く気付くことで、ストレス原因の特定や改善を実施します。
円滑に実施するためには、従業員とのコミュニケーションを積極的に取ったり、信頼関係を築いたりすることが大事です。
また、管理監督者は従業員の悩みや相談に沿って、適切な措置を講じる役割もあります。
従業員の心の健康を支えるためには、メンタルヘルスにまつわる研修を通じて、労働環境を改善するための施策を考える力を身につけることも大切です。
内部EAP|事業場内産業保健スタッフ等によるケア
そもそもEAPとは、従業員支援プログラムのことで、企業が従業員にまつわるメンタルヘルス不調や生活問題などに対して、専門家がサポートするプログラムです。
そのうち、内部EAPは企業内に常駐している産業医やカウンセラーなどが実施するケアのことです。
専門家の例として、産業医や産業保健師、衛生管理者などが該当します。
企業の専門家によるサポートを受けることで、よりメンタルヘルスケアを効果的に行うことが可能です。
また、従業員のケアにとどまらず、以下のようなことも担当します。
・メンタルヘルスに関する企画の立案・実施をする
・個人の健康状態を取り扱う
・従業員の相談に乗る
・相談できる仕組みを構築する
・職場復帰の支援を行う
このように、企業内に専門家が在籍していると、社内の事情や雰囲気にあわせたサポートを受けやすくなります。
外部EAP|事業場外資源によるケア
外部EAPは、メンタルヘルス対策を外部サービスに任せて実施するケアのことです。
内部EAPと同様のサポートを受けることが可能です。
外部サービスを取り入れることで、企業内では話しにくいことを相談できたり、必要なときに利用できるので費用削減につながったりします。
また、企業内で対応が難しい部分も、外部の専門家の助けを借りることで幅広く補えるため、メンタルヘルス対策がより充実することが期待できます。
企業によるメンタルヘルスケアの具体的な対策

ここでは、企業が実施すべきメンタルヘルスケアの方法や具体例を紹介します。
・ストレスチェックの実施
・産業医との連携や外部EAPの活用
・職場環境の把握・改善
・従業員同士によるコミュニケーションの活性化
・メンタルヘルスに関するセミナーや研修の開催
これらの対策を準備し、従業員に対して手厚いサポートを行うことで、メンタルヘルスに関するトラブル防止や、発生時に適切な措置を講じられます。
ストレスチェックの実施
ストレスチェックは、従業員がストレスにまつわる質問に回答し、メンタルヘルスの状態を可視化できるものです。
その結果を集計・分析すると、ストレスの度合いや原因が明確になるため、メンタルヘルス不調の疑いがある従業員を速やかに発見できます。
そして、こうしたリスクの高い従業員を対象に、適切なサポートやカウンセリングを行うことで、健康問題が深刻になる前にいち早く予防することが可能です。
また、ストレスチェックの結果は従業員自身だけではなく、企業全体で共有されるため、働きやすい環境を整備するのに役に立ちます。
産業医との連携や外部EAPの活用
企業内にいる産業医やエリア保健師や外部EAPによるカウンセリングを提供することで、従業員が抱えている心の悩みやストレスを話す環境を持つことが可能です。
カウンセリングは、プライバシーを尊重できる、匿名やオンラインでの相談も設けると効果的です。
加えて、常に相談できる窓口を設置することで、速やかに健康問題の発見と適切な対応が行え、精神疾患の発症予防につながります。
これにより、従業員の生産性やモチベーションの低下、長期休職や退職といった事態を防げます。
職場環境の把握・改善
メンタルヘルスケアに取り組むなかで、職場環境を根本的に見直し、改善することは重要です。
従業員にとって働きやすい職場環境とは、ストレスを抱えることなくメンタルを安定に保てるところです。
こうした環境を実現するためには、以下のような改善策を実施するのをおすすめします。
・照明や空調を調整する
・音環境を最適化する
・休憩スペースを増やす
・オープンスペースと個室をバランスよく設ける
改善策を施して職場環境からの物理的・精神的なストレスを減らすことで、従業員の生産性や満足度アップに期待できます。
従業員同士のコミュニケーション活性化
メンタルヘルスケアを実施するにあたって、従業員同士のコミュニケーション活性化は大事です。
最近では、リモートワークの増加に伴い、従業員が孤立しやすい環境になっています。
普段から他の従業員との交流がないと、ストレスや悩みなどを相談する機会がなくなり、メンタルヘルス不調の早期発見が困難です。
リモートワークをしつつも、従業員同士でコミュニケーションの活性化につなげるためには、顔を出しながら随時会話ができるような環境を整備するのをおすすめします。
また、1対1の面談やグループディスカッションを定期的に実施することで、積極的にコミュニケーションを取ることが可能です。
これにより、従業員間の理解が深まり、職場内の信頼関係を深められます。
また、職場の雰囲気やチームワークの向上にもつながります。
メンタルヘルスに関するセミナーや研修の開催
メンタルヘルスについて正しく理解するためには、セミナーや研修の開催が必要不可欠です。
全従業員を対象にメンタルヘルスに関する情報やストレス対策法などを提供するセミナーや、企業向けのメンタルヘルスサポート研修などを開催します。
また、専門家や経験者による実体験や最新の研究結果に基づいた情報提供を実施するのも有効です。
こうして企業全体でメンタルヘルスに関する理解を深めることで、不調の予防ができたり、従業員自身や周囲の人などが早期に不調の発見・対応が可能になったりします。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる企業事例10選

最後に、メンタルヘルス対策の導入事例一覧を会社ごとに紹介します。
自社と似た導入事例を参考にして、従業員のメンタルヘルス対策を進めてください。
心幸ホールディングス株式会社
心幸ホールディングス株式会社では、従業員の健康をサポートするサービスを提供しています。
その一つとして、形だけの健康経営ではなく、真の健康経営サポートを提供する「オフけん」というサービスがあります。
「オフけん」では、健康経営優良法人の認定取得サポートの他にも、メンタルヘルスケアセミナーを開催しています。
メンタルヘルスに関する基本的な知識提供はもちろん、ストレスの原因と対処法や、心の健康維持に欠かせない生活習慣や技術など、さまざまなテーマから選択可能です。
このセミナーを開催することで、メンタルヘルス不調を防ぐのに必要な知識やスキルを身につけられます。
その他にも、健康や運動などに関するさまざまセミナーを、企業のニーズに応じて開催しているのがポイントです。
また、健康診断だけではわからない、体成分や体力を測定できる「出前からだ測定会」を実施しています。
・体成分測定:体重・体脂肪率・筋肉量・内臓脂肪レベルなどを通じて、全身の筋肉量や脂肪量がわかる
・体力測定:握力、バランス力、ジャンプ力、反射神経、やわらかさ、腹筋力の6種類の運動能力がわかる
結果をもとに、運動指導士や管理栄養士によるカウンセリングを通じて、適切な運動方法やバランスのいい食事方法といった、従業員一人ひとりに合った最適なアドバイスを受けられます。
これらのサポートを受けることで、健康維持や健康意識の向上はもちろん、メンタルヘルス対策にもつながります。
人事の担当者をはじめ、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
アビームコンサルティング株式会社
アビームコンサルティング株式会社は、戦略立案からシステム導入といった幅広くサポートを行っている総合系コンサルティングファームです。
同社では、クライアントに最大限のパフォーマンスを発揮し続けるためにも、2014年に産業保健スタッフを配置しました。
当初は、従業員のメンテナンスケアに対する興味関心が薄かったため、全従業員を対象にe-ラーニングを通じて、健康管理に関する理解を深めています。
そして、2021年からストレスへの適切な対処法を身について早期回復できるよう、2021年からレジリエンスによるセルフケアを推進しています。
また、所属部署とプロジェクトのそれぞれの上司によって2つのラインケアが実施できるため、企業独自のマニュアルを作成して、役割や対応を明確にしているのもポイントです。
さらに、従業員一人に対して必ずカウンセラーが一人付いており、相談しやすい体制を構築することで、メンタルヘルス不調の早期発見に役立ちます。
参考/厚生労働省「アビームコンサルティング株式会社(東京都中央区)」
株式会社ニチレイ
株式会社ニチレイは、加工食品事業や低温物流事業をはじめ、幅広く事業を展開している企業です。
同社は、2005年に持株会社体制に移行し、4つの事業会社を有しています。
ただし、持株会社体制によって健康管理の責任主体が不明確になったことで、従業員の健康管理が行き届かなくなり、一時期現役で働いている方が亡くなる人数が増加しました。
そこから、「働きがいの向上は従業員の健康がベースである」という考え方に基づいて、健康経営を推進しています。
また、全国にエリア保健師を配置しており、さらに50人以上の事業所では産業医も選任しているのも特徴です。
そして、2023年からは産業医や保健師などが集まる医療職会議を開始しました。
その結果、従業員のメンテナンス不調に関する課題の共有や、産業医や保健師との連携強化につながりました。
参考/厚生労働省「株式会社ニチレイ(東京都中央区)」
大阪ガス株式会社
大阪ガス株式会社は、国内外でエネルギー事業を行っている企業です。
同社では、以前から健康づくりに力を入れており、2018年から健康経営優良法人のホワイト500に5年連続で認定され、2023年には健康経営銘柄にも選定されました。
健康活動を続けるにあたって、以下の7つの行動指針を掲げており、随時モニタリングしています。
・体重:適正体重を目指す・維持する
・食事:正しい食事習慣を身につける
・運動:適度な運動習慣を継続する
・飲酒:過度な飲酒を控える
・禁煙:就業時間内は喫煙を控える
・睡眠:十分な睡眠時間を確保する
・ストレス:ストレス状態を把握して適切に対処する
また、メンタルヘルス対策が身近に感じてもらえるように、「ヘルシー7オリンピック」というイベントを実施しました。
当イベントでは、7つの行動指針から自ら掲げた目標を達成できたら、スタンプがもらえるといった形式を採用して、従業員が積極的に健康活動を行うように促しました。
その他にも、毎年2回のウォーキングイベントを開催したり、健康診断の結果に基づいて必要な取り組みを実践したりと、従業員に配慮した健康活動を実施しているのが特徴です。
全組織・全関係会社には、産業医3名と看護師・保健師・臨床検査技師が合わせて22名いるのはもちろん、健康や健康経営を担っている「衛生担当」がおり、多くの専門家が在籍しています。
参考/厚生労働省「大阪ガス株式会社(大阪府大阪市)」
株式会社北川鉄工所
株式会社北川鉄工所は、金属素形材事業や産業機械事業などを営んでいる企業です。
メンタルヘルス不調による休職者が増え、休職者自身や上司が体調不良に気付けなかったことをきっかけに、メンタルヘルス対策の強化をし始めました。
最初に同社では、課題解決をする常勤の専門職がいないことが課題となっていたため、外部EAPを導入しています。
加えて、費用面の問題もあったため、必要な部分に予算が使えるような体制を整えました。
また、職場環境を改善するために、ストレスチェックの体制を毎年見直しています。
たとえば、集団分析の対象人数が10名以上のうち、高ストレス者が20%以上を占める職場を高ストレス職場と認定し、外部の専門機関と連携しながら職場環境改善の支援を実施しています。
こうしたさまざまな取り組みを講じた結果、メンタルヘルス対策の必要性が企業内で認められるようになりました。
参考/厚生労働省「株式会社北川鉄工所(広島県府中市)」
有楽製菓株式会社 豊橋夢工場
有楽製菓株式会社は、チョコレート菓子をはじめとした製造・販売を行っている企業で、豊橋夢工場は2011年に竣工した基幹工場です。
同社では、以前からワークライフバランスの実現に向けた取り組みを進めています。
しかし、4年間で8名の従業員が、人間関係やプライベートなどを原因としたメンタルヘルス不調による休職が発生し、そのうち約6割が職場復帰後に再度休職してしまう状況でした。
そこで、職場復帰支援による取り組みの見直しを実施し、以下のような改善策を施しました。
・面談の実施方法を見直す
・主治医の意見を積極的に取り入れる
・通勤トレーニングを実施する
・試し出勤を導入する
・復帰する職場の決定と復帰後のフォローを徹底する
このように、休職者に寄り添った職場復帰支援を実施した結果、再休職者の割合を6割から3割に減らすことに成功しました。
とはいえ、長く効果を実感できたわけではないため、メンタルヘルス対策の取り組みをさらに進め、いち早くメンタルヘルス不調に気付ける環境を構築できるように目指しています。
参考/厚生労働省「有楽製菓株式会社 豊橋夢工場(愛知県豊橋市)」
野村證券株式会社
野村證券株式会社は、資産運用や資金調達などのサービスを提供している企業です。
2016年に「NOMURA健康経営宣言」を行い、そこから以下のように数多くのメンタルヘルス対策を推進しています。
・女性の健康に関する研修を実施する
・「治療と仕事のガイドブック」を作成して、病気の治療と仕事の両立を支援する
・エリア保健師が従業員にメール連絡して相談を行う
・「メンタルヘルス相談窓口」の利用を促す
「メンタルヘルス相談窓口」を利用することを積極的に呼びかけた結果、全従業員の約70%が窓口の存在を認識しています。
このように、従業員の心の健康を守るために、さまざまな取り組みを実施しているのです。
参考/T-PEC「<健康経営インタビュー>野村證券株式会社」
日本電信電話株式会社・株式会社NTT ExCパートナー
日本電信電話株式会社は国内の電気通信事業をメインに、株式会社NTT ExCパートナーは人材領域でのコンサルティングや業務代行など、幅広く事業を展開している企業です。
配偶者や子どもの健康が不安定になると、従業員本人にも心身ともに影響を及ぼす可能性があります。
そのため、同社は従業員の家族も含めた健康の維持・増進という方針に沿って、以下のようなメンタルヘルス対策を進めています。
・配偶者に対して人間ドック費用の補助を行う
・NTTドコモのウォーキングアプリを家族全員が利用可能にする
・どこでもテレワークで働ける「リモートスタンダード」を導入する
・電話相談やメンタルヘルスカウンセリングで相談窓口を整える
・異動者向けの研修サービスを活用する
さらに、従業員が自身で仕事を選択・設計できる環境を整えることで、転勤や単身赴任を避けつつも、家族と一緒に生活できる働き方を実現しています。
参考/T-PEC「健康経営のトレンドをキャッチする情報誌『Cept(セプト)』24号」
味の素株式会社
味の素株式会社は、食品事業を主力として展開している企業です。
以前からメンタルヘルス対策に力を入れており、2017年から健康経営銘柄に複数回選定されました。
具体的な取り組みとして、セルフケアを重視して、年に1回行われる従業員と産業医との面談を実施しています。
これにより、メンタルヘルス不調の早期発見や適切な対処につながっています。
また、不調の再発防止に重点を置いた独自の復職プログラムを導入しているのもポイントです。
これにより、再発率が一般的な水準の半分になりました。
参考/味の素グループ「ASVレポート2023」
株式会社ベネッセコーポレーション
株式会社ベネッセコーポレーションは、幼児や学生を対象にした通信教育や国内教育を中心に展開している企業です。
同社は以前から、従業員による健康管理体制の強化を実施していました。
その一環として、2008年にヘルスケア体制を見直し、相談デスクを立ち上げました。
相談デスクでは、外部の産業医と、担当部署や専門家が連携して、従業員の相談内容を解決しています。
また、メンタルヘルス研修にも力を入れており、特に管理職への教育を強化しています。
さらに、ラインケアを充実させることで、いち早くメンタルヘルス不調を発見し、労働損失を最小限に抑える取り組みを実施しています。
参考/厚生労働省「株式会社ベネッセコーポレーション 東京本部(東京都多摩市)」
まとめ:企業にとってメンタルヘルス対策は必要不可欠

メンタルヘルス対策は、仕事の質や企業の生産性を向上させるために、必要不可欠な取り組みです。
そして、従業員の健康を守ることで、企業の成長と競争力を支える基盤となるため、継続的な成功をもたらします。
いち早くメンタルヘルス対策の効果を実感してもらうためには、自社だけで取り組むよりも外部サービスを利用した方が効率的です。
そこで、おすすめしたいのが健康経営をサポートする「オフけん」です。
「オフけん」では、健康経営優良法人の認定取得サポートはもちろん、メンタルヘルスケアをはじめとしたさまざまなセミナーを開催しています。
また、体成分や体力を測定できる「出前からだ測定会」も実施しており、企業の健康課題に応じて導入できるのがポイントです。
企業の経営戦略の一環としてメンタルヘルス対策を実施し、早期に効果を実感したい場合は、ぜひ「オフけん」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。