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企業が取り組むSDGs・サステナビリティ事例と自社の課題解決に向け知るべき情報を解説

企業が取り組むSDGs・サステナビリティ事例と自社の課題解決に向け知るべき情報を解説

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更新日|2025年1月16日
所長|おおたに

目次

SDGsとサステナビリティの関連と基本概念

ここ数年で「SDGs」や「サステナビリティ」という言葉を耳にする機会は増えています。

まずは、これらの言葉の意味について基本的な部分を解説していきましょう。

SDGsとサステナビリティには深い関わりがあり、SDGsはサステナビリティを実現するための具体的な行動指針として位置づけられています。簡潔にまとめると「SDGsは、サステナビリティを実現するための具体的な目標のセット」であり「サステナビリティという理念を実現するための“道しるべ”がSDGsである」とも言えるでしょう。

SDGsは2030年を目標とした具体的なアクションや政策を明確にガイドするもの、一方のサステナビリティは長期的かつ抽象的な理念を示していて考え方や価値観なども広く含む概念です。SDGsの各目標は環境・社会・経済の課題を包括的に解決することを目指していて、その実現はサステナブルな世界の構築につながると考えられています。

それぞれの言葉の意味を正しく理解できれば、企業としての取り組みを進める上でもスムーズです。

企業がサステナビリティを取り入れるにあたっては、SDGsとの関係性について意識をしておくと、スムーズに施策を立てやすくなるでしょう。

なおSDGsとサステナビリティについては、以下でもう少し詳しく解説をします。

「SDGs」とは?

「SDGs」は、Sustainable Development Goalsの略です。2015年に国連が採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に基づき策定された国際的な目標で、2030年までに達成すべき17の目標とその下にある169のターゲットと232の指標から構成されています。

貧困の撲滅や気候変動対策、平等な教育機会、ジェンダー平等などが含まれる地球規模の課題解決を目指すための共通フレームワークであり、日本国内だけでなくグローバルな取り組みが求められている分野です。

各目標には具体的な達成基準や、進捗を測るための具体的な指標も設定されています。

SDGsは「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」という理念をもち、社会全体が持続可能な発展を目指していくのも特徴で、政府だけでなく企業や市民、教育機関にも関与が求められています。

また持続可能な社会を築くことを通じて、次世代により良い地球を引き継ぐことを目指しています。

「サステナビリティ」とは?

「サステナビリティ」は単なる環境保護活動ではなく、経済や社会の発展を含む包括的な考え方を表しています。具体的には環境・社会・経済の3つの側面をバランス良く発展させ、現在の人々のニーズを満たしつつも将来における世代のニーズを損なうことなく、生活を享受できる環境を維持することを目的としています。

また経済的な発展だけでなく、社会の平等や幸福を重視している点も特徴です。

サステナビリティの実現には、私たち一人ひとりの行動が求められています。企業や政府がそれぞれの役割を果たしながら相互に協力し合い、調和を考えて長期的に地球と共存していくための基盤を築くことが必要とされています。

小さな意識の積み重ねが未来の持続可能な社会を形作っていくという考えから、企業のみならず個人の意識改革も必要とされています。

企業がSDGsに取り組むメリットと目的の考え方・必要な方針を解説

企業がSDGsに取り組むメリットや目的は、多岐にわたります。

ここでは「ブランド価値の向上」「リスク管理」「新たなビジネスチャンスの創出」「従業員のモチベーション向上」の4つの視点から、考え方や必要な方針を説明します。

社会的なブランド価値の向上

環境や社会に配慮した活動は、消費者や投資家からの信頼を高めます。企業としてのSDGsへの取り組みは、企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)活動として広く認識されるにつれ、社会的なブランド価値や企業価値 を高める効果が期待できます。

また、SDGsに積極的に取り組むことを通じて、他社と差別化された「社会貢献型ブランド」として認知されるメリットも十分に考えられるでしょう。

企業のイメージが上がれば、メディアからの注目が集まりやすくなるだけでなく、投資家からの資金調達機会も広がりやすくなります。

リスク管理の実現

SDGsの視点を取り入れることは、企業が直面する環境的・社会的・法的なリスクを事前に特定し、軽減する手段にも通じます。環境問題や法規制の変化への対応力を強化する取り組みには、事業リスクを低減するメリットもあるでしょう。

具体的な例としては、気候変動や資源枯渇への対策を講じることで事業の持続可能性を確保しやすくなったり、SDGsに基づいた運営によって将来的な環境規制や労働基準の強化にも柔軟に対応しやすくなったりといったメリットが挙げられます。 また、労働環境や原材料調達の改善を通じて、倫理的なリスクや不買運動を防ぐ効果も期待できるでしょう。

新たなビジネスチャンスの創出

サステナブルな製品やサービスへの需要が世間から高まっていくにつれ、SDGsに取り組んでいる企業は成長機会に恵まれます。SDGsへの取り組みは、イノベーションや市場開拓の機会を生み出すと考えられています。

例えば、再生可能エネルギーや循環型経済、エコ製品などは環境配慮型商品やサービスへの需要が増加するにつれて、新たな市場を開拓しています。

従業員のモチベーション向上を目指す

SDGsへの取り組みは、企業内での従業員のモチベーション向上にもつながります。社会貢献活動を通じて従業員の満足度が向上すると、採用力や定着率にも改善を図れるでしょう。

また、近年は若手世代を中心にSDGsに積極的な企業で働きたいニーズも高まっていることから、次世代の人材を育成するにあたっても有利に働きます。

企業がSDGs・サステナビリティに取り組む際の具体的なステップは?

ここからは実際に、企業がSDGsを取り入れる際の具体的な進め方を解説します。

それぞれのステップを自社の事例に当てはめて考えていくと、具体的な施策を組み立てやすくなるだけでなく、現状において足りていないものを確認するヒントにも役立ちます。

SDGsの理解を深め目標を設定する

まずは、自社の課題を把握する必要があることから、環境への影響や社会的責任を分析します。CO₂排出量や地域社会への影響など、自社の事業活動が環境や社会に与える影響を評価しましょう。

そのうえで、自社が優先すべきSDGs目標を見つけ、特定していきます。事業内容や影響範囲に基づき、関連性の高い目標を選びます。このとき、自社が最も他者に影響を与えやすい分野を見極め、目標を絞り込むことが大切です。

サステナビリティにおける戦略と方針を策定する

必ず行うことのひとつに、サステナビリティ戦略を明確化する点が挙げられます。SDGsを経営方針や中長期ビジョンに反映し、企業活動全体をサステナブルにする方向性を打ち出しましょう。SDGs目標は、現場で実行可能になるレベルまで細分化する必要があります。

また、KPI (重要業績評価指標)の設定も重要です。例えば「2025年までにCO₂排出量を30%削減する」や「年間廃棄物リサイクル率を50%以上にする」など具体的な数値とともに目標を掲げ、達成状況を測定するための指標を設けるとともに進捗を管理しましょう。

企業として実行計画を具体化する

企業としての実行計画は、大きく「環境面」「社会面」「経済面」の3つの側面から具体化します。

シンプルに要点のみをまとめましたので、参考にしてください。

・「環境面」では、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー対策、廃棄物削減を推進する。

・「社会面」では、ダイバーシティ&インクルージョンを促進し、地域社会との協力を強化する。

・「経済面」では、持続可能な調達や責任あるサプライチェーンを構築する。

このように生産プロセスの見直しやリサイクル率、地域活動を含むコミュニティ支援などを自社の経営や課題を考慮して、可能な限り具体的に決めていきましょう。

社内外へのコミュニケーションを図る

社員教育や、ステークホルダーへの情報発信も重要です。

社員向けには、サステナビリティへの意識を高めるために定期的なワークショップやeラーニングの提供を実施するなどSDGsやサステナビリティの基礎知識を社員全体で共有するよう導きましょう。

また、ステークホルダーへの情報発信については、サステナビリティレポートを公開したりウェブサイトを通じて取り組みや成果を公開したりする方法が効果的です。

定期的な評価と改善を繰り返し行う

達成状況をチェックするとともに、自社内でモニタリングとレビューを行います。KPIをもとに進捗を評価し、現実的な課題を洗い出しましょう。このときに未達成の分野を細かく洗い出して改善策を検討すると、よりスピーディに軌道修正をしやすくなります。

また、自社内だけでなく外部の意見を取り入れる意識も大切です。専門家やNGOからのフィードバックを活用できるよう、社外への協力も求めていくといいでしょう。

課題解決や社会的価値への評価が高い先進的な取り組みを進める企業の成功事例を紹介

各企業はSDGsの理念に基づき、自社の強みや市場ニーズに応じた取り組みを成功させています。環境や社会への配慮が事業成長と両立できることを示し、他の企業への模範となっている事例を3つ紹介いたします。

ユニリーバ・・・持続可能な製品の売上が全体の60%超を誇る

ユニリーバは「サステナブル・リビング・プラン(Sustainable Living Plan)」を掲げ、環境負荷を軽減しながら人々の生活を向上させる製品を推進しています。

ユニリーバは、SDGsができる以前からサステナビリティな社会の実現に向けて取り組みをいち早く開始していた企業でもあり、企業文化としてサステナビリティの理念が従業員の間で受け継がれ続けているのも特徴です。

現在ではSDGs目標の多くと結びついた取り組みが同社の成長を支える柱となっていて、具体的には「ダヴ(Dove)」ブランドでは環境に配慮したパッケージを採用し2020年春のリニューアルでボトルのプラスチック使用量について約11%の削減を達成したり、現在では日本では展開をしていませんが世界的に認知度の高い「ベン&ジェリーズ(Ben & Jerry’s)」ブランドでは酪農場での温室効果ガス排出量を削減したりといった取り組みを進めています。

日本で展開をしている同社のブランドである「ラックス」「ダヴ」「クリア」などのパッケージには、2019年から再生プラスチックを使用し、再生プラスチックへの切替を推進していることでも知られています。 また、環境負荷への配慮として生産工程でのCO₂排出量や水使用量、廃棄物の削減を達成しています。

参考/国連の持続可能な開発目標(SDGs) | Unilever

参考/プラスチックへの取り組み | Unilever

パタゴニア・・・製品寿命を延ばす「修理」サービスを提供

アウトドアブランドのパタゴニアでは、消費者と環境への責任を実践していて、これまでの使い捨て文化に挑むことで環境負荷を低減しています。

パタゴニアはほとんどの衣料品会社と同じように自社の製品を製造せず製造工場も所有していないなかでも、優れた環境保護と社会貢献を優先したビジネスモデルを構築していることへの評価が高い企業です。

具体的にはアパレル業界内でも特に高い水準での、製品へのリサイクル原料の積極的な使用や、消費者が実践できるようボタンやジッパースライダーの直し方を自社のWEBで公開したり、充実した修理サービスの提供をしたりといった製品の寿命を延ばして廃棄物を削減するための取り組みを行なっています。

またリサイクルとリユースにも積極的で、回収された製品をリサイクルして新製品を製造したり、古着や傷んだ品を買取ってリユース市場で再販売したりする取り組みも評価されています。

製品寿命を大幅に延ばす施策が、顧客の信頼を獲得している好事例でしょう。

参考/社会的責任 | パタゴニア | Patagonia

参考/お手入れと修理 | パタゴニア | Patagonia

トヨタ自動車・・・ハイブリッド車や燃料電池車の開発によって低炭素社会への貢献を推進中

トヨタ自動車は、「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げた上で持続可能なモビリティ社会を目指していて、新車から排出される二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスのカーボンニュートラルや、車の生産にかかる工程や時間を短くし工場で使う電気の量を少なくする工夫などを進め、工場から排出するCO2をゼロにする取り組みを行なっています。

またハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)の普及で、温室効果ガス削減に大きく貢献していて1997年に世界初の量産型ハイブリッド車「プリウス」を発売して以降、世界中で2000万台以上のHVを販売した実績を有します。

また、燃料電池車(FCV)の開発にも積極的で2014年に「MIRAI」を発売し、FCV市場をけん引しているだけでなく、水素燃料を利用することを通じて車両の走行時にCO₂を一切排出しない社会も目指しています。

ハイブリッド車の普及によりCO₂排出量を大幅に削減している実績が評価されているほか、燃料電池車による水素社会の実現に向けて次世代モビリティ市場をリードしている存在です。

参考/SDGsへの取り組み | サステナビリティ | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

参考/環境にやさしいクルマづくり | カーボンニュートラルと環境への取り組み | クルマこどもサイト | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

サステナビリティへの企業の取り組みにおけるノウハウの組み立て方と情報の集め方

ここからは、実際に企業がサステナビリティ施策に取り組むにあたって必要とする具体的な手法とノウハウの構築方法、情報の集め方について解説します。

他企業等とのパートナーシップを活用する

他企業やNGO、行政機関などと協力をすることで、サステナビリティ課題の解決を効率化し、スケールアップを実現しやすくなる効果が期待できます。

パートナーシップの活用にあたっては自社のリソースや技術を活かしながら異業種の専門知識や経験を取り込むのが一般的で、例えば自動車メーカーならばエネルギー企業と協力して電気自動車用充電インフラを整備するなど、自社の事業と関連した業種や業界と協力する方法が適しています。

また、業界全体で共有する課題に取り組むならば、協議会や共同研究に参加すると最新の情報を得られるだけでなく、他企業との意見交換の場にも恵まれます。

社内でテクノロジーの積極的な導入を推進する

最新の技術を活用して環境負荷を軽減しながら、資源の効率的な利用を実現していきましょう。

製造プロセスやエネルギー消費をシミュレーションして、自社事業における効率化の最適解を導き出すことができれば、多くの業務を効率化する取り組みにもつながります。

この分野ではAIやIoT(Internet of Things:インターネット・オブ・シングス)の活用が適していて、AIを活用して廃棄物やエネルギー使用量をリアルタイムで最適化したり、IoTセンサーを用いて設備の稼働状況をモニタリングし省エネやメンテナンス効率を向上させたりといった方法があります。

また太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」の採用や、二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する技術である「カーボンキャプチャー技術」の活用も、今注目を集めている「グリーンテクノロジー」の導入につながります。なお「グリーンテクノロジー」とは、人間の活動が環境や社会に与える悪影響を最小限に抑える技術の開発と利用を指す言葉で「グリーンテック」とも呼ばれ、SDGsと深い関係のある概念です。

グローバル基準への準拠を心がける

サステナビリティへの取り組みでは、国際的な基準やガイドラインを参考にしましょう。サステナビリティの取り組みは、国内だけでなくグローバルに認知される水準へ引き上げる意識が求められています。

主要な基準としては、国連の「SDGs」や「パリ協定」における目標のほか「GRI(Global Reporting Initiative)」や「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」のガイドラインをチェックするといいでしょう。

また、ISO14001(環境マネジメントシステム)やBコープ認証といった認証制度を活用し、第三者の信頼を得る方法もあります。 グローバルな環境データを収集・分析することは、自社の取り組みが国際的にどの位置にあるかを把握する上でも役立ちます。

従業員の巻き込み体制を整備する

従業員の一人ひとりがサステナビリティの実践者として、主体的に参加できる環境を整えましょう。

新入社員向けにサステナビリティ研修を導入するなど社内教育を強化し、必要に応じて社員の意識向上を図るワークショップやオンライン講座も実施します。

また、サステナビリティに貢献した従業員やチームを評価・表彰するなどのインセンティブ制度の導入も有効です。例えば、環境目標達成に寄与する行動に対して報奨金や特典を提供するなどの工夫を取り入れると、従業員の意識改革にもつながりやすいでしょう。

体制を整備する上ではトップダウンによる押し付けにならないよう、従業員が主体的に企画・運営できるエコプロジェクトやボランティア活動を推進するのも一案です。

まとめ:企業におけるサステナビリティ事例の実現に向けて

企業がSDGsやサステナビリティに取り組むことは単なる社会貢献のみならず、長期的な競争力を高める手段でもあります。

現状の課題に対する適切な計画と行動、継続的な改善を通じて、持続可能な未来を描いていきましょう。

サステナビリティへの取り組みを成功させるには、パートナーシップの活用で外部知見を取り入れながらテクノロジーの導入で効率化を進めるとともに、グローバル基準に準拠した信頼性を構築することが重要です。

さらに、従業員の主体的な関与を促すことで、組織全体が一丸となって持続可能性を意識した企業運営を実現できるでしょう。

  • 心幸グループのサステナビリティな食生活の提案についての記事はこちら

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