健康経営はなぜ必要?企業が取り組む理由やメリット・デメリットを解説
近年、「健康経営」という言葉が企業の経営戦略において重要なキーワードとして注目されています。従業員の健康は、単なる福利厚生の一環ではなく、企業の持続的な成長や競争力強化に直結する重要な要素となっています。特に、働き方改革やリモートワークの普及に伴い、従業員の健康状態が企業の生産性やパフォーマンスに大きな影響を与えることが明らかになりつつあります。
この記事では、なぜ健康経営が企業にとって不可欠なものなのか、その理由と背景について詳しく解説し、さらに健康経営に取り組むことのメリットとデメリットについても触れていきます。
目次
健康経営とは?
健康経営とは、企業が従業員の健康を経営課題の一つとして位置づけ、戦略的に取り組むことを指します。単なる福利厚生とは異なり、健康経営は中長期的な企業の成長戦略として位置づけられ、従業員の健康を支えることで、企業全体のパフォーマンスを向上させることを目指します。
企業の健康経営では、以下のような取り組みが含まれます:
- 従業員の健康診断の徹底
- ストレスチェックの実施
- 職場環境の改善(例:エルゴノミクス※を考慮したデスクや椅子の導入)
- フィットネスの提供
- 栄養管理プログラムの提供
- メンタルヘルスのケアや相談窓口の設置
健康経営の最大の目的は、従業員が健康で安心して働ける環境を整えることで、結果的に企業全体の生産性を向上させ、長期的な成長を実現することにあります。
※エルゴノミクス(人間工学)とは、人間の特性を考慮して、ツールや環境を研究し、使いやすく快適にする学問です。エルゴノミクスデザインと呼ばれる、エルゴノミクスに基づいて設計された製品には、マウスやキーボード、フットレスト、オフィスチェアなどがあります。
企業はなぜ健康経営に取り組むべきか?その理由
企業が健康経営に取り組む必要性は何でしょうか。理由は大きく分けて3つあります。
生産性向上
従業員の健康状態が企業の生産性に直接影響を及ぼすことは、科学的にも明らかにされています。健康な従業員は、身体的・精神的なストレスが少ないため、業務に集中しやすくなり、長時間にわたって安定した高パフォーマンスを発揮することができます。逆に、体調不良や過度なストレスを抱えた従業員は、集中力が低下し、効率的な業務遂行が難しくなります。また、欠勤や遅刻、業務ミスが増えることで、生産性の低下につながります。
さらに、健康経営によって従業員が健康的な生活習慣を維持しやすい環境を提供すれば、慢性的な病気のリスクを低減し、日常業務においても持続的な集中力を保つことができます。具体的な取り組みとしては、健康診断の充実や、運動や栄養に関する社内プログラムの導入、ストレスマネジメントセミナーの開催などが挙げられます。これらの取り組みによって、従業員のエンゲージメント(職場への熱意や積極性)が向上し、業績改善や売上増加に貢献します。
離職率の低下
健康経営を推進する企業は、従業員にとって働きやすい環境を整備し、健康に対するサポートを行うことで、職場環境の満足度を向上させることができます。これは、従業員の安心感や企業への信頼感を高め、結果的に離職率の低下をもたらします。特に現代の労働市場においては、優秀な人材を確保し、定着させることが企業の競争力を左右します。
職場環境が整っておらず、過度なストレスや健康リスクが高い環境にいると、従業員は精神的・肉体的な負担から疲弊し、転職を検討する可能性が高くなります。一方、企業が従業員の健康を大切にし、適切な労働環境を提供することで、従業員は長期的に働き続ける意欲を持ちやすくなります。これにより、優秀な人材の流出を防ぎ、採用コストや研修コストの削減にもつながります。
企業イメージの向上
健康経営を推進する企業は、社会的責任を果たしている企業として外部から高く評価される傾向があります。特に、消費者や求職者が企業を選ぶ際、社会的な価値や企業の取り組みが重要視されるようになっています。そのため、健康に配慮した経営方針を掲げる企業は、投資家、取引先、顧客、さらには求職者に対しても好意的なイメージを与えます。
さらに、健康経営を推進する企業は、社会的な貢献度が高い企業として、CSR(企業の社会的責任)の観点からも評価されます。具体的には、従業員の健康を支える施策を通じて、地域社会や業界全体に対する貢献も果たすことができ、企業のブランドイメージが向上します。また、政府や自治体が推進する健康経営の認定制度に参加し、受賞することで企業の信頼性が高まり、マーケティングやリクルーティングの面でもプラスの効果が得られます。
このように、企業の健全な経営方針は、多様なステークホルダーとの関係を強化し、長期的に企業価値の向上に貢献します。
医療費の削減
従業員の健康管理が適切に行われることで、病気の予防や早期発見が可能になり、医療費の削減が実現します。特に、生活習慣病の予防やメンタルヘルスの改善を図ることによって、医療費や保険料の負担が大幅に軽減されます。企業が定期的に健康診断や健康指導を行い、従業員が自身の健康状態を把握しやすい環境を提供することは、病気や怪我のリスクを抑え、長期的な休職や業務離脱を防ぐ効果があります。
また、慢性的な健康問題を抱える従業員が少なくなれば、欠勤や労災のリスクも低下し、結果的に企業の医療費負担が減少します。企業側にとっても、従業員の健康維持に投資することは、医療費や労働損失コストの抑制に加え、全体的な業務効率の向上をもたらす、非常にコストパフォーマンスの高い取り組みと言えます。
このように、健康経営に取り組むことは、従業員の健康管理を通じて、企業の財務健全性を強化する手段でもあります。
健康経営の効果に関する実態調査
心幸グループでは、 健康経営優良法人を取得している企業の経営者101名を対象に、健康経営の効果に関する実態調査を実施しました。
結果として、健康経営優良法人を取得した企業の54.5%が、「労働生産性向上」を目的に健康経営優良法人を取得したと回答しました。その他にも、「従業員の健康のため」や「企業イメージアップ」も兼ねている企業も見受けられます。
健康経営の有効性を裏付ける調査の詳細な情報は、無料でダウンロード可能です。
健康経営が注目される背景
近年、健康経営が企業経営において重要視されるようになった背景には、いくつかの社会的・経済的な要因があります。
労働環境の変化
近年、多くの企業では長時間労働や過重な業務負担が常態化しており、これが原因で従業員のストレスが増加し、健康問題が深刻化しています。特に、メンタルヘルスの問題が顕著に見られ、過労やうつ病などによる長期休職や退職が社会問題となっています。このような背景から、企業が従業員の健康を守ることは、単なる福利厚生の一環ではなく、企業経営の持続可能性に直結する課題として捉えられるようになりました。
また、デジタル化やグローバル化の進展により、労働者は24時間いつでもどこでも業務を遂行できる環境が整いつつありますが、これにより従業員のワークライフバランスが乱れ、心身の健康が損なわれるリスクが高まっています。そのため、企業は従業員の過重労働を防ぎ、ストレスの軽減や健康の維持を図ることが不可欠となっています。
このように、労働環境の変化に伴い、健康経営を導入し、従業員の健康を支える取り組みが企業にとって重要な課題となっているのです。
政府の政策
日本政府は、少子高齢化や働き方の多様化に対応するために、「働き方改革※」を推進しています。これに伴い、労働環境の改善や、ワークライフバランスの確立が企業に強く求められています。特に、長時間労働の是正や年次有給休暇の取得促進、育児や介護と仕事の両立支援などが政策の柱として掲げられており、これらの取り組みを実現するために、健康経営が不可欠とされています。
政府は「健康経営優良法人認定制度」などの施策を通じて、企業が従業員の健康管理に積極的に取り組むことを促進しています。この制度は、従業員の健康維持・増進を重要な経営課題と位置づけ、その成果を評価するものです。こうした政府の取り組みにより、企業に対して健康経営の実践が一層推奨され、従業員の健康サポートが経営の一環として認識されるようになっています。
さらに、政府の政策は、社会全体の医療費削減という視点からも重要です。健康経営に取り組む企業が増えれば、従業員の病気予防や早期治療が進み、結果的に医療費の増加を抑える効果が期待されます。
※「働き方改革」とは、長時間労働の是正、多様な働き方の推進、同一労働同一賃金の実現を目指す日本政府の政策です。残業時間の制限や有給休暇取得の義務化により労働者の健康を守り、テレワークやフレックスタイム制の導入で柔軟な働き方を支援します。また、正社員と非正規社員の待遇格差をなくし、公平な労働環境を整えることが目的です
労働者のニーズの変化
現代の労働者は、従来の給与や福利厚生のみに加えて、働きやすい職場環境や健康サポートを強く求めるようになっています。特に若年層の労働者は、仕事とプライベートのバランスを重視する傾向があり、企業がどれだけ健康的な職場環境を提供しているかが、就職や転職先を選ぶ際の重要な基準となっています。
これに応えるために、企業は従業員の心身の健康をサポートする施策を導入し、ワークライフバランスを整えるための柔軟な働き方(テレワーク、フレックスタイム制など)を推進しています。こうした取り組みにより、企業は従業員満足度を高め、優秀な人材を引き留めることが可能になります。
また、メンタルヘルスへの関心が高まっている現代では、職場でのメンタルケアやストレスマネジメントの重要性が認識されています。企業が従業員の健康を積極的に支援することで、働きやすさが向上し、労働者のパフォーマンス向上や企業へのロイヤリティの増加にもつながります。
少子高齢化と労働力不足
日本は少子高齢化が進行しており、生産年齢人口が減少しています。このため、企業は優秀な人材を確保し、持続的に働ける環境を整えることが競争力を維持するために不可欠です。特に、熟練した労働者の知識や技術の流出を防ぐためにも、健康経営を通じて従業員の定着率を高めることが求められています。
また、高齢社会においては、定年延長や再雇用の導入が進む中、高齢従業員の健康管理が重要となります。年齢を重ねた従業員が長く働けるようにするためには、企業が健康維持のサポートを行うことが不可欠です。高齢従業員が健康を維持しながら働き続けることができれば、労働力不足を緩和し、企業の持続的な成長を支えることができます。
さらに、少子化によって若年労働力の供給が減少しているため、企業は限られた人材を最大限に活用する必要があります。従業員一人ひとりが健康で高い生産性を維持できるようにサポートすることが、企業の競争力強化に直結する時代となっているのです。
健康経営投資のROI(投資利益率)
健康経営への投資は、ROI(投資利益率)の観点でも高いリターンが期待できる戦略です。ROIとは、投資に対してどれだけの利益を得られたかを示す指標であり、健康経営への投資が企業のパフォーマンスにどの程度寄与するかを定量的に評価するのに適しています。以下に、健康経営のROIについて具体的に説明します。
生産性向上によるROI向上
健康経営に投資することで、従業員の健康が改善され、結果として生産性が向上します。研究によれば、健康プログラムに投資した企業は、従業員の集中力やパフォーマンスが向上し、全体の業務効率が改善されるという報告が多くあります。この生産性の向上は、企業の売上や利益に直接つながり、ROIを大幅に引き上げる要因となります。
たとえば、従業員が健康を維持することで欠勤が減少し、職場の作業負荷が均等に分散されるため、業務遅延やミスが減り、全体の効率が向上します。これにより、健康経営に投資した分のリターンが得られる形となり、ROIがプラスに転じることが期待できます。
医療費削減によるコスト削減とROI改善
健康経営への投資がもたらすROIの大きなメリットの一つは、医療費や保険料の削減です。従業員が健康であるほど、病気やケガによる医療費の支出が少なくなり、企業が負担する医療関連のコストが減少します。アメリカの研究では、企業が健康プログラムに1ドル投資するごとに、約3ドル以上の医療費削減が見込めるという報告があります(※)。これにより、健康経営への投資が中長期的に大きなコスト削減効果をもたらし、ROIが向上します。
また、長期休職やメンタルヘルスの不調による離職を防ぐことで、採用や研修にかかるコストも削減されます。これも、健康経営への投資が直接的に企業の財務状況を改善し、ROIを押し上げる要因となります。
※参考/日本総研「デジタルで変容する米国の「The Healthy Company」」
離職率の低下によるROIへの影響
従業員が健康で働きやすい環境を提供することで、離職率が低下し、企業は優秀な人材を維持することが可能になります。従業員の定着率が向上することで、採用コストや新人研修コストが大幅に削減され、これがROIを向上させる重要な要素となります。
新しい人材を採用し、教育するコストは非常に高いため、健康経営によって離職を防ぎ、既存の従業員を長期間維持できれば、結果的に人材にかかるコストを最小限に抑えられます。この長期的な効果は、企業の持続的な成長と高いROIに寄与します。
従業員のエンゲージメント向上とROI
健康経営に取り組むことで、従業員の健康状態が向上すると同時に、従業員のエンゲージメント(仕事に対する情熱や意欲)も向上します。健康的な環境で働ける従業員は、企業に対してポジティブな感情を持ちやすくなり、モチベーションが高まります。エンゲージメントの高い従業員は、生産性が高く、創造性や業務効率も向上するため、企業全体のパフォーマンスに良い影響を与えます。
エンゲージメントの向上によって業績が伸び、収益が増加することで、健康経営に投じた投資のリターンが高まり、ROIが改善されます。
企業イメージの向上と長期的なROI
健康経営に投資する企業は、社会的責任を果たしている企業としての評価が高まります。健康経営の認定制度を取得したり、従業員の健康に積極的に取り組んでいる企業は、投資家や消費者、求職者から信頼されやすくなります。この信頼性や企業イメージの向上は、長期的なビジネスチャンスの増加や、取引先との関係強化につながり、最終的には収益増加による高いROIをもたらします。
たとえば、健康経営が評価されて企業のブランド力が強化されると、顧客からの信頼が増し、新規ビジネスの獲得につながることもあります。これにより、健康経営への投資がビジネス成長を促進し、長期的なリターンをもたらす効果が期待されます。
補足/健康経営プログラムの費用対効果とROIの測定
ROIを具体的に測定するためには、健康経営プログラムにかかる費用と、それによって得られる効果を定量化する必要があります。たとえば、健康診断やメンタルヘルスケアプログラムの導入にかかる費用と、それによって削減された医療費や生産性向上による売上増加を比較することで、健康経営への投資がどれだけの利益を生んでいるかを計算できます。
ROI = (投資による利益 – 投資額)÷ 投資額
このようにROIを定量的に測定することで、健康経営の費用対効果を明確にし、企業が継続的に投資する価値を確認することが可能です。
企業が健康経営に取り組むメリット
健康経営には多くのメリットがあり、企業にとっても従業員にとっても利益をもたらします。ここでは、その主要なメリットをまとめます。
生産性の向上
健康な従業員は集中力が高く、業務効率が向上します。従業員が心身ともに健康であれば、欠勤や遅刻が減少し、ミスも少なくなるため、業務の質が安定します。また、メンタルヘルスの問題が改善されることで、チーム全体のコミュニケーションが円滑になり、チームワークや協力体制が強化されます。
これにより、企業全体の生産性が向上し、最終的には利益に直結します。さらに、健康的な生活習慣を促すことで、従業員はエネルギーレベルが高まり、仕事に対する意欲が増します。
離職率の低下
従業員の健康をサポートすることで、企業への信頼感や安心感が向上し、結果的に離職率が低下します。従業員が長期間にわたり働きやすい環境を提供することで、優秀な人材が企業に留まりやすくなり、採用コストや新人研修コストの削減につながります。
また、職場に対する満足度が高まることで、従業員が自発的に業務に取り組むようになり、組織全体の安定感が増すことが期待されます。特に、柔軟な働き方を提供することで、家庭やプライベートの事情を持つ従業員も離職を防ぎやすくなります。
医療費の削減
健康経営により、定期的な健康診断やメンタルヘルスケアを実施することで、従業員が抱える健康問題を早期に発見・予防することができます。これにより、慢性的な病気や過労による健康悪化を未然に防ぎ、企業が負担する医療費や保険料を削減できます。
具体的には、生活習慣病の予防プログラムや、ストレスマネジメントセミナーなどを導入することで、従業員の健康リスクを減らし、医療コストの負担が軽減されます。また、これにより従業員の欠勤や長期休職が減少し、業務の停滞も防ぐことができます。
企業イメージの向上
健康経営に積極的に取り組む企業は、外部から「従業員を大切にする企業」としての評価が高まります。特に、健康経営優良法人認定やCSR(企業の社会的責任)活動として健康経営を進めることで、投資家や取引先、顧客からの信頼を得やすくなります。
また、求職者に対しても、働きやすく健康的な職場環境を提供する企業として魅力的に映り、優秀な人材を採用しやすくなります。このように、健康経営は企業のブランドイメージを強化し、競争力の向上に寄与します。
従業員のエンゲージメント向上
健康的な職場環境を整えることで、従業員のエンゲージメントが向上します。エンゲージメントが高い従業員は、仕事に対して積極的かつ熱心に取り組み、自己成長を図ろうとする意識が強まります。
特に、健康に対するサポートが充実している企業では、従業員が安心して働けるため、仕事へのモチベーションやパフォーマンスが向上します。また、健康的な職場環境は、従業員同士のコミュニケーションや協力意識を高め、組織全体のパフォーマンス向上に繋がります。
リスクマネジメントとしての効果
健康経営は、従業員の健康状態を管理することで、労働災害やメンタルヘルスの問題を未然に防ぐリスクマネジメントの一環としても機能します。
過労やうつ病などの問題が深刻化する前に対策を講じることで、従業員が健康で安心して働ける環境を提供し、結果として労働災害や訴訟のリスクを軽減します。また、企業が従業員の健康を守る姿勢を示すことで、法的トラブルを避け、企業の信頼性を高めることができます。
企業が健康経営に取り組むデメリットとは?
健康経営には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや課題も存在します。ここでは、企業が健康経営に取り組む際の主なデメリットについて解説します。
初期コストの負担
健康経営を導入するためには、健康診断の充実、健康促進プログラムの実施、メンタルヘルス対策、従業員教育など、多岐にわたる投資が必要です。これには、医療機関との契約、福利厚生施設の整備、システムの導入など、初期費用がかかるため、中小企業にとっては特に大きな負担となります。
さらに、これらの投資がすぐにリターンを生むわけではないため、導入初期のコスト負担を企業全体でどう吸収するかが課題となります。
効果の見えづらさ
健康経営の効果は、すぐに目に見えて現れるものではなく、中長期的に改善されることが多いです。生産性向上や医療費削減、離職率低下といった成果が出るまでに時間がかかるため、投資対効果(ROI)を短期間で確認することが難しい場合があります。
そのため、経営陣が健康経営の投資効果を実感しにくく、投資継続の判断が難しいことがあります。また、効果が定量化しづらい部分があり、経営判断に時間がかかることもあります。
管理負担の増加
健康経営を効果的に運用するためには、従業員の健康状態を定期的にモニタリングし、適切な対策を講じる必要があります。これに伴い、人事や総務部門の業務が増え、管理負担が大きくなる場合があります。
特に、メンタルヘルスケアや従業員のストレスチェック、健康指導など、専門的な対応が必要となる分野もあり、専門の人材や外部機関との連携が求められます。また、全従業員のデータを適切に管理し、プライバシーを守るためのシステム整備も課題となります。
従業員の反発や不満
健康管理や健康プログラムが強制的に感じられる場合、従業員から反発や不満が生じることがあります。例えば、健康診断の義務化や食生活の改善プログラム、運動の推奨などが従業員のプライベート領域に踏み込むと感じられることがあります。
また、プライバシーの侵害や、個人の健康に関する情報の取り扱いに慎重さを求める声もあります。このため、健康経営を導入する際は、従業員の意見を十分に取り入れ、無理のない範囲での施策を展開する必要があります。
全従業員への効果が限定的な場合がある
健康経営は、全ての従業員に同じような効果をもたらすわけではありません。特に、既に健康的なライフスタイルを送っている従業員や、健康への意識が高い従業員に対しては、健康プログラムがあまり効果的でない場合があります。
さらに、メンタルヘルスや生活習慣病など、個々の健康状態に応じた対応が必要なため、効果が従業員ごとにばらつくことがあります。これにより、一部の従業員にとっては健康経営の恩恵が実感しにくくなる可能性があります。
継続的な取り組みが必要
健康経営は、一度導入すれば終わりではなく、継続的に施策を改善し、アップデートしていく必要があります。これには、常に従業員の健康状態を把握し、変化に対応する柔軟な管理体制が求められます。
さらに、健康関連のプログラムや制度は、企業内外の環境変化に応じて見直しを行う必要があり、継続的な投資が求められます。これに伴い、長期的な予算計画やリソースの確保が課題となり、企業にとってはリソース管理の負担が増すことが考えられます。
健康経営に取り組むべき企業の特徴
健康経営に取り組むべき企業には、いくつかの特徴があります。これらの特徴を持つ企業は、従業員の健康管理が企業の持続的な成長や競争力向上に寄与するため、健康経営の導入が特に効果的です。以下に、その特徴を詳しく説明します。
労働時間が長く、従業員のストレスが高い企業
長時間労働や過度な業務負荷が常態化している企業では、従業員の心身の健康に悪影響が出やすく、健康経営への取り組みが急務です。こうした企業では、従業員のストレスや疲労が蓄積しやすく、結果的に生産性の低下や離職率の上昇、病気やメンタルヘルスの問題が発生しやすくなります。
健康経営により、ストレスマネジメントや働き方改革、メンタルヘルスケアなどを強化し、従業員が健やかに働ける環境を整備することが、企業の持続可能な経営に寄与します。
従業員数が多く、多様なニーズに対応する必要がある企業
従業員数が多い企業では、各従業員の健康状態や生活習慣が異なるため、一律の施策では対応しきれないことがあります。特に、年齢や職種、家庭環境によって必要なサポートが異なるため、柔軟で多様な健康施策を展開する必要があります。
健康経営に取り組むことで、従業員の多様なニーズに応じた健康サポートを提供し、全従業員が健康的に働ける職場環境を整えることが可能です。たとえば、若年層にはストレスケア、高齢者には生活習慣病の予防など、個々の健康課題に対応した取り組みが効果的です。
離職率が高く、人材確保に課題を抱えている企業
離職率が高い企業は、従業員が健康的に働ける環境が整っていない可能性があり、人材の流出を防ぐためにも健康経営が重要です。特に、従業員が過度なストレスや健康リスクを抱えている場合、早期に対策を講じることで、離職を防ぎやすくなります。
また、健康経営を導入することで、働きやすい企業というイメージが外部に広まり、求職者や従業員からの信頼を得やすくなります。これにより、優秀な人材の確保がしやすくなり、離職率の低下や定着率の向上につながります。
高齢化が進んでいる企業
従業員の年齢層が高くなると、生活習慣病や体力の低下、健康リスクが増加します。そのため、高齢従業員が多い企業は、特に健康経営の重要性が増します。高齢化に伴う健康問題を早期に対策することで、従業員が長く健康に働き続けられる環境を整えることができます。
たとえば、定期的な健康診断やフィットネスプログラム、栄養指導などの健康サポートを提供することで、従業員の健康リスクを軽減し、定年延長や再雇用の際も、元気に働き続けられる体制を作ることが可能です。
競争が激しい業界に属する企業
競争が激しい業界では、従業員の生産性やパフォーマンスが企業の競争力を大きく左右します。そのため、従業員の健康管理が重要な戦略となります。従業員が健康で高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えることで、業界内での競争優位性を保つことができます。
特に、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める健康経営は、競争の激しい業界において優秀な人材を確保・維持し、業績を向上させるために効果的です。
イノベーションや創造性が求められる企業
健康な従業員は、創造性やイノベーション力が向上しやすいというデータがあります。従業員の健康が改善されると、集中力が増し、業務のパフォーマンスが高まるため、新しいアイデアや問題解決能力が向上します。イノベーションが求められる企業では、従業員のストレスや疲労を軽減し、よりクリエイティブな環境を提供するために、健康経営が有効です。
たとえば、GoogleやAppleなどの大手企業は、健康経営を推進することで従業員の創造性を高め、革新的な製品やサービスを生み出しています。
CSR(企業の社会的責任)を重視する企業
社会的責任を果たすことが企業のブランド価値向上につながると考えている企業も、健康経営に取り組むべきです。従業員の健康を守ることは、企業の社会的責任(CSR)の一環としても重要な要素です。健康経営を通じて、従業員やその家族、地域社会に貢献することで、企業の社会的評価が高まり、ブランドイメージの向上につながります。
CSRを重視する企業にとって、健康経営は、持続可能な経営や社会貢献を実現するための重要な戦略の一部となります。
健康経営の成功事例:具体的な企業の取り組み
ここでは、真の健康経営をサポートする「オフけん」による健康経営の推進事例を紹介します。
名正運輸株式会社
名正運輸では、2021年よりオフィスに健康を届ける「オフけん」の真(シン)健康経営サポートを導入しました。その成果として、2022年から2024年にかけて「健康経営優良法人」の認定を連続で獲得しています。
この取り組みの中核となる施策の一つが、「オフけん健康管理アプリ」の導入です。このアプリにより、従業員はスマートフォンを通じて自身の健康診断結果を含む健康情報に簡単にアクセスできるようになりました。同時に、企業側も従業員の健康データをデジタルで効率的に管理できるようになり、双方にとって大きなメリットをもたらしました。
さらに、社員の健康増進を目指し、喫煙対策にも力を入れています。「禁煙サポート」プログラムを通じて、喫煙者の約3割が禁煙に挑戦する意欲を示すという成果を上げました。
これらに加えて、健康関連の動画コンテンツの配信や、「出前からだ測定会」にて体成分測定や肌年齢測定のイベントを実施するなど、多角的なアプローチで従業員の健康意識向上と健康促進に取り組んでいます。これらの総合的な健康経営の施策により、実効性のある健康経営の実現に向けて着実に前進しています。
株式会社アイ・シー・アール
アイ・シー・アールでは、オフけんの「禁煙サポート」プログラムを導入し、従業員の健康意識向上に取り組んでいます。このプログラムを通じて、喫煙が健康に及ぼす深刻な影響について、従業員の理解を深める機会を設けました。具体的には、喫煙が癌、心筋梗塞、脳卒中などの重大な疾病のリスクを高めることを、科学的根拠に基づいて説明しました。これにより、従業員は喫煙の危険性を改めて認識し、自身の健康管理の重要性を再確認することができました。
特筆すべきは、女性従業員が多数を占める職場環境での取り組みです。喫煙や受動喫煙が美容面にも悪影響を及ぼすという事実を強調しました。この情報が、美容への関心が高い女性従業員にとって、禁煙を決意する強い動機付けとなっています。
さらに、この「禁煙サポート」プログラムの効果は、従業員個人にとどまらず、その家族の健康増進にも波及することが明らかになっています。つまり、このプログラムは従業員とその家族の双方に恩恵をもたらす、包括的な健康促進策として機能しているのです。
このように、当社の禁煙支援の取り組みは、職場の健康文化を変革し、従業員とその家族の生活の質向上に貢献する、極めて有意義なプログラムとなっています。
ローバル株式会社
ローバルは、100年続く持続可能な企業として社会に貢献し続けることを目標に掲げており、その実現に向けて「健康経営」を経営戦略の中核に据えています。特に、従業員の平均年齢が上昇傾向にある中、社員の活力維持・向上が喫緊の課題となっていました。
この課題に対処するため、ローバルは「オフけん」が提供する真(シン)健康経営サポートを採用しました。この包括的なプログラムの一環として、以下のような具体的な施策を展開しています:
- 半年に一度の「オフけん 出前からだ測定会」の開催 これにより、従業員が定期的に自身の健康状態を客観的に把握する機会を設けています。
- 日常的な健康管理ツールとしての「オフけん 健康管理アプリ」の導入 従業員が日々の体調を簡単に記録・モニタリングできる環境を整備しました。
- 健康セミナーの実施 栄養学や運動科学に基づいたセミナーを通じて、従業員の健康リテラシーの向上を図っています。
これらの取り組みにより、ローバルは従業員一人ひとりの健康意識を高め、自主的な健康管理を促進しています。同時に、会社全体の健康レベルを向上させることで、組織としての活力と生産性の向上を目指しています。
健康経営を導入するためのステップ
健康経営を導入するためには、企業全体で従業員の健康を支援し、企業の持続的な成長につながる仕組みを構築することが重要です。以下に、健康経営導入のためのステップと、健康経営優良法人認定の取得について説明します。
1.経営トップのリーダーシップと意思表明
健康経営を導入する際には、まず経営トップがリーダーシップを発揮し、従業員の健康を重視する姿勢を明確に表明することが重要です。経営層が健康経営を経営戦略の一部として位置づけ、企業全体で従業員の健康をサポートする方針を明示することで、全社的な取り組みがスムーズに進みます。
- 健康経営を「企業の持続的成長に欠かせない要素」として強調する。
- 経営層からの発信を通じて、全従業員に取り組みの意義を伝える。
2.現状の把握と課題分析
従業員の健康状態や企業の労働環境の現状を把握し、健康経営に向けた課題を分析します。以下の手法を用いて、従業員の健康リスクや改善すべきポイントを特定します。
- 健康診断の受診率や結果の分析:生活習慣病やメンタルヘルスのリスクを特定する。
- ストレスチェックや従業員アンケートの実施:職場環境や働き方の問題点を把握。
これにより、企業全体としてどのような健康課題があるかを明確にし、優先的に取り組むべき分野を特定します。
3.健康経営の方針と目標設定
企業のビジョンに基づき、健康経営の方針と具体的な目標を設定します。健康課題や従業員のニーズを把握し、それに基づいた具体的な改善目標を設定します。たとえば、メンタルヘルスケアの強化、生活習慣病予防、ワークライフバランスの改善などが考えられます。
- 従業員の健康管理方針を策定し、年度ごとの目標を定める。
- 例えば、「メンタルヘルスケア体制の強化」「フレックスタイム制の導入」などの明確な目標を設定。
4.健康施策の実施
現状の課題に基づき、従業員の健康を改善するための具体的な施策を導入します。以下のような施策を実施し、従業員が健康的に働ける環境を整えます。
- 定期健康診断の充実:一般的な健康診断だけでなく、がん検診や特定健診の実施。
- メンタルヘルスケア:社内カウンセリングの導入や外部メンタルヘルス専門家との連携。
- 運動・栄養支援:スポーツジム利用補助や栄養指導を含む健康プログラムの実施。
- ワークライフバランス向上:テレワークやフレックスタイム制度の導入による働きやすさの向上。
5.健康経営優良法人認定取得の準備
「健康経営優良法人」とは、経済産業省が推進する認定制度です。企業が従業員の健康を大切にし、健康管理を経営戦略の一環として推進することを促進するために設けられています。
健康経営優良法人認定を目指す企業は、これまでの施策を基に認定基準を満たしているか確認し、認定取得の準備を進めます。認定取得には以下のような要件を満たすことが必要です。
- 経営理念や方針に健康管理を明示:経営層が健康経営を推進する姿勢を公式に表明し、従業員の健康管理体制を整備する。
- 健康管理の推進体制を確立:社内で健康管理を推進する担当部署や担当者を明確にする。
- 具体的な健康施策の実施:健康診断の受診率向上や生活習慣病予防、メンタルヘルスケアの導入など。
- 法令遵守:労働基準法や関連法令を遵守し、適切な労働環境を提供していること。
健康経営優良法人認定を申請するためには、認定要件を満たしていることを確認し、必要書類を作成して提出します。
- 申請書類の提出:必要な書類を作成し、提出する。
- 審査と認定:審査を経て、認定基準を満たしていれば健康経営優良法人として認定を受ける。
認定を受けた企業は「健康経営優良法人マーク」を使用でき、企業イメージ向上に役立てることができます。
6.効果測定と継続的改善(PDCAサイクル)
認定取得後も、健康施策の効果を継続的に測定し、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを通じて施策を改善していくことが重要です。従業員の健康状態の改善状況や施策の実効性を確認し、次のアクションに反映させます。
- 従業員アンケートや健康診断結果の分析:施策が効果を発揮しているか確認。
- 改善点の特定:不十分な点を改善し、新たな施策を導入する。
- 効果的な健康経営を継続的に実施:従業員の健康状態に応じて施策を柔軟に変更し、常に最適なサポートを提供。
オフけん「健康経営優良法人認定取得サポートパック」
「オフけん」は、企業の健康経営を支援する専門サービスとして、近年注目を集めている経済産業省認定の「健康経営優良法人」の取得をトータルにサポートしています。
多くの企業が直面する以下のような課題に対して、オフけんは効果的なソリューションを提供しています:
- 毎年の煩雑な申請手続き
- 取り組みの開始方法に関する不明点
- サポート費用が高い
オフけんの「健康経営優良法人認定取得サポートパック」の特徴は以下の通りです:
- 包括的な「健康管理アプリ」が標準装備(利用者数の制限なし)
- アプリを通じて、厚生労働省推奨の「ストレスチェック」を実施可能
- 厚生労働省が推進する「健診結果のデジタル化」にも対応
- リーズナブルなサポート費用
特筆すべきは、オフけんのサポートを受けた企業の「健康経営優良法人」認定取得率が100%(2024年度実績)という実績です。健康経営の推進や「健康経営優良法人」認定の取得をお考えの企業様には、ぜひオフけんのサービスをご検討いただくことをおすすめします。
オフけん「出前からだ測定会」
オフけんが提供する「出前からだ測定会」は、職場の雰囲気を向上させるのにおすすめのイベントです。
測定会では、全身の筋肉量や脂肪量が分かる「体成分測定」、握力やバランス力、ジャンプ力、反射神経、やわらかさ、腹筋力が分かる「体力測定」を実施します。結果はその場でプリントアウトし、専門知識を持つスタッフによるカウンセリングまで行います。
からだ年齢が判明し、社内ランキングが分かるので、社員同士のコミュニケーションも活発になります。社員を元気にすることで、業務効率がアップし、生産性の向上にも役立つため、企業の元気にもつながるでしょう。
職場の雰囲気を向上させるだけでなく、従業員の健康促進も目指せるおすすめの社内イベントです。
まとめ
健康経営は、企業の未来を切り開くための戦略的な投資です。従業員の健康を守ることは、企業の成長と競争力を支える基盤となり、長期的には大きなリターンをもたらします。
一方で、導入にはコストや課題も伴いますが、これを乗り越えていくことで、企業と従業員が共に成長する持続可能な経営体制を実現することが可能です。今こそ、健康経営を真剣に考え、未来への投資として取り組むべきです。
元気な会社は社員が元気!健康経営サポート
オフけん(運営:心幸ウェルネス)では、「健康経営優良法人」認定取得サポートを中心に、企業の健康経営をバックアップしています。形だけの健康経営ではなく、従業員の健康と幸福に真剣に向き合う取り組みを提案。真の健康経営を実現しています。「からだ測定会」では、体成分測定・体力測定により従業員一人ひとりのからだ年齢が明らかに!他にも、健康セミナー、禁煙サポートなどのサービスを通して、従業員の健康意識を向上させ、元気な会社づくりに貢献します。
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