企業が行うメンタルヘルスケア|最適なマネジメント方法とは?
企業におけるメンタルヘルスケアとは、従業員の精神的健康をサポートし、維持・向上させるための組織的な取り組みや活動のことを指します。従業員のメンタルが仕事の質や生産性の向上や、組織の成長に深く関連しているため、多くの企業でその対策が重要とされています。この記事では、企業がメンタルヘルスケアを行うことで得られるメリットや、取り組まない場合のデメリット、そして具体策を詳しく紹介していきます。
目次
メンタルヘルスケアとは
企業におけるメンタルヘルスケアは、従業員の精神的健康をサポートし、維持・向上させるための組織的な取り組みや活動を指します。これは、従業員の生産性や仕事の質、そして組織の継続的な成功と深く関連しているため、多くの企業が重要視しています。
そもそも、メンタルヘルスとは、精神的な健康や心の状態を指す言葉です。具体的には、個人の感情、認知、社会的機能などの状態を示し、その人が日常生活での課題に対して適切に対応し、ストレスや困難に耐える能力、自分自身や他者との関係を築き、維持する能力が含まれます。
メンタルヘルスは、身体的健康と密接に関連しており、どちらも全体的な健康と幸福感に影響を与えます。メンタルヘルスが乱れると、ストレス、うつ病、不安障害などの心的疾患のリスクが高まる可能性があります。
逆に、メンタルヘルスが良好であれば、生活の質が向上し、生産性や学習能力が高まり、対人関係やコミュニティ活動への参加が促進されるといわれています。
メンタルヘルスは生活環境、経験、遺伝、生物学的要因など、多くの要因が影響を与えるため、時々変動するものとして捉える必要があります。それゆえ、定期的なセルフケアや、必要に応じた専門家との相談が重要です。
企業は、従業員のメンタルヘルスをサポートすることで、従業員の満足度や離職率の低下、生産性の向上などのポジティブな効果を期待できます。従って、組織全体としてのメンタルヘルスケアの推進が、競争力の強化や経営の持続性につながると言えるでしょう。
メンタルヘルスケアが重要視される背景
近年、メンタルヘルスケアが重要視されている背景には、複数の要因があります。社会の急速な変化、情報過多、テクノロジーの進化とともに、人々は新しい形のストレスに直面しています。それにより、メンタルヘルスに関連する疾患が増加しており、それが企業の生産性や経済にも影響をもたらしています。
一方で、社会全体のメンタルヘルスへの認識が向上しており、そのケアや治療についての情報収集もインターネットにより容易になってきました。これに伴い、予防の重要性やメンタルヘルスの啓発活動も増加しています。
このような背景から、メンタルヘルスケアは個人の生活の質や幸福、そして社会全体の健全な成長のために不可欠と認識されています。
企業がメンタルヘルスケアに取り組むメリット
企業がメンタルヘルスケアに取り組むと以下のようなメリットがあります。「社員のため」というだけでなく、経営戦略としても非常に有効であることがわかります。
生産性の向上
メンタルヘルスが良好な従業員は集中力が高まり、仕事の効率や質が向上します。逆に、ストレスや不安などのメンタルの問題に悩む従業員は、仕事のペースが遅くなったり、ミスが増える可能性があります。企業がメンタルヘルスケアを重視することで、従業員の最大のポテンシャルを引き出すことが可能になります。
離職率の低下
従業員の満足度が高まり、企業へのコミットメントが強まると、長期的に組織に留まる意欲が高まります。これにより、人材の流出を抑えることができ、採用や研修にかかるコストの削減や、企業文化の継承がスムーズに行われるようになります。
従業員のロイヤルティ向上
企業が従業員のメンタルヘルスを真剣に考慮することで、従業員は組織への信頼感や所属意識を強く感じます。これが、長期的な組織の成功や、困難な状況下でも一致団結する力を生む土壌となります。
病欠の減少
メンタルヘルスの問題は、身体的な健康問題を引き起こす可能性もあります。企業が適切なサポートを提供することで、不必要な病欠を減少させることができ、業務の遂行に対する影響を最小限に抑えることができます。
企業イメージの向上
現代の社会では、企業の社会的責任や従業員への取り組みは、ブランドイメージや消費者の選択に大きな影響を与えます。メンタルヘルスへの積極的な取り組みは、企業の評価を高め、良いリピュテーションを獲得する手助けとなります。
リスク管理
ストレスや過度な疲労は、事故や過誤の原因となることがあります。適切なメンタルヘルスケアにより、これらのリスクを予防し、企業の安全性や信頼性を維持することができます。
企業がメンタルヘルスケアに取り組まないデメリット
企業がメンタルヘルスケアに取り組まない場合、様々な弊害が生まれます。企業としての競争力や持続可能性に対しても大きな影響を与えるため、メンタルヘルスケアへの取り組みは、経営上の重要な戦略として位置づけるべきです。
生産性の低下
ストレスや不安が増加すると、従業員の集中力や認知機能が低下することが研究で示されています。これにより、タスクの完了に時間がかかるだけでなく、ミスも増加する可能性が高まります。例えば、プロジェクトの進行が遅れる、クライアントへの対応が悪化するなどの具体的な影響が考えられます。
高い離職率
継続的なストレスやメンタルヘルスの問題に対するサポートが不足していると、従業員は長期的なキャリアを企業内で見越すことが難しくなります。離職する従業員に対する新規採用や研修のコストは、企業の財務に大きな負担をもたらします。
増加する病欠
ストレスやうつ症状は身体的な症状を伴うことが多く、これが病欠の主な原因となります。継続的な病欠は、チームの業務の進行に支障をきたし、他の従業員への負担を増大させます。
悪化する企業イメージ
従業員からのネガティブなフィードバックやSNS上での悪評が、企業のブランドや評価を下げるリスクがあります。潜在的なクライアントや優秀な人材を魅了する能力が損なわれる可能性が高まります。
リスクの増加
メンタルヘルスの問題が影響すると、従業員の判断ミスや事故のリスクが増加します。製造業での機械の操作ミスや、サービス業でのクライアントへの誤った情報提供などが考えられます。
医療費や保険料の増加
企業の健康保険のコストは、従業員の健康状態に大きく影響されます。メンタルヘルスの問題が増加すると、治療のための医療費が増加し、これが結果として保険料の上昇に繋がる可能性があります。
企業ができるメンタルヘルスケアのマネジメント方法・具体例
企業ができるメンタルヘルスケアの方法や具体例には、以下のようなものがあります。対策を通して、企業は従業員のメンタルヘルスの維持や向上に効果的に寄与することができます。
カウンセリングの提供
心の専門家によるカウンセリングを提供することで、従業員が心の悩みやストレスを話す場を持つことができます。企業が直接雇用するカウンセラーか、外部のカウンセリングサービスと提携して、定期的または必要に応じてカウンセリングを受けられるよう実施します。
カウンセリングは匿名で行い、プライバシーを尊重することが重要です。これにより、個人のストレスや悩みを早期に解消し、心的疾患の発症を予防。また、従業員のモチベーションや生産性の維持に貢献できます。
ワークショップやセミナー
メンタルヘルスに関する情報やストレス対策、リラクゼーション方法などを教えるワークショップやセミナーを開催します。専門家や経験者を講師として招き、実体験や最新の研究結果に基づく情報提供を実施。
従業員は、メンタルヘルスに関する知識や意識が向上し、その結果、自己ケアや他者へのサポートが増加し、予防や早期対応が期待できます。
リモートワークの導入
在宅や外部の場所での業務を可能とする制度を導入します。リモートワークを導入することで、従業員のワークライフバランスをサポート。ただし、適切なコミュニケーションツールやセキュリティ対策が必要です。
これにより、通勤ストレスの削減や、より柔軟な働き方が実現します。家庭や私生活とのバランスが向上し、全体的な生活の質の向上が期待できます。
リフレッシュ休暇
メンタルのリカバリーなどを目的とした長期休暇を導入します。連続して取得できる休暇を設けることで、従業員の長期的な健康をサポート。この間の業務の代替手段や体制を整えることがポイントです。
長期的な疲労やストレスからの回復、メンタルのリフレッシュに効果があり、続く業務への集中力やモチベーションの向上にも寄与できるでしょう。
健康診断の実施
従業員の健康状態をチェックするための定期的な診断にて、メンタルヘルスに特化した質問項目を追加し、早期の支援や介入が可能となるようにします。メンタルヘルスの問題を早期に発見し、適切なサポートや治療へのアクセスを促進。長期的な休職や離職のリスクを低減します。
リラクゼーションスペースの設置
企業内に、休憩やリラクゼーションのための専用スペースを設置します。静かで落ち着いた空間を提供し、マッサージチェアやアロマ、音楽などのリラクゼーションツールを準備しておくと良いでしょう。
これにより休憩時間など短時間でのリフレッシュやストレスの緩和が可能に。業務中の生産性の維持や、日常のストレス対策にもなります。
コミュニケーションの促進
従業員同士、または上司と部下の間のコミュニケーションを深化させる取り組みを行います。定期的な1on1の面談やグループディスカッションを実施することで、オープンなコミュニケーション文化の醸成を目指します。
これにより、チーム内の信頼関係の強化や、従業員間の理解が深まります。職場の雰囲気やチームワークの向上も期待できます。
ヘルスケアアプリの導入
スマートフォンやPCで利用できるメンタルヘルスケアアプリを提供します。瞑想やストレス緩和、睡眠の質向上などをサポートするアプリを導入し、従業員の日常的なメンタルヘルスケアをサポート。
毎日の生活の中で容易にメンタルケアが行えることで、定期的なケアによるストレスの軽減や、自己認識の向上が期待できます。
ストレスチェックの実施
ストレスチェックは、主に従業員のメンタルヘルスの状態を把握するためのもので、特定の質問項目を通じてストレスの度合いや原因を明らかにします。結果に基づき、リスクが高いと判断された従業員に対しては、適切なサポートやカウンセリングを提供することが推奨されます。
これにより、心的疾患の発症リスクを低減させるとともに、早期の介入を促進することができます。
パルスサーベイの導入
パルスサーベイは、定期的に従業員の意見や感じている職場の雰囲気をリアルタイムでキャッチするためのアンケート調査です。
これにより、組織の課題や従業員の満足度、コミュニケーションの質などを短期間で把握し、迅速な改善策を検討することができます。
メンタルヘルスケアの基本的な考え方
職場におけるメンタルヘルスケアには「3つの段階」があり「4つのケア」が効果的だと考えられています。これらはメンタルヘルスケアを推進する上での土台となるため、経営者や総務人事部門の担当者であれば基本概要を知っておきましょう。
メンタルヘルスケア「3段階の予防策」
「3段階の予防策」は、ストレス対策をいつ実施するかの考え方を基盤にしたフレームワークです。
一次予防【未然防止】
一次予防は、メンタルヘルスの不調を引き起こすストレスを予防する初期段階の取り組みです。具体的には、個々のストレス緩和ケアと労働環境の改善を目指す活動が含まれます。この段階では、ストレスマネジメント研修やストレスチェック制度を通じて、労働者のメンタルヘルス意識を向上させることが重要です。
要するに、一次予防の目的はストレス源となる職場環境の問題を特定し、それを改善することにより、ストレスを発生させない職場を構築することです。
・ストレスケアの推進
・ストレスマネジメント研修
・ストレスチェック制度の導入 など
二次予防【早期発見と対処】
二次予防は、メンタルヘルスの不調が現れた際に早期に発見し、適切に対応するための取り組みです。この段階での主要な活動には、相談窓口の設置、産業医との面談の機会の提供、及びメンタルヘルスの専門サービスとの連携が含まれます。
目的は、不調を早く認識し、重大な精神的疾患の発症を防ぐことです。それを支えるために、職場の風土や体制を整え、従業員が気軽に相談できる環境を構築することが求められます。
・産業医とのカウンセリング体制の構築
・メンタルヘルス専門の外部サービスとの連携
・相談窓口の設置 など
三次予防【職場復帰支援・再発予防】
三次予防は、メンタルヘルス不調で休職した労働者の治療と再度の職場への復帰をサポートする取り組みです。この段階では、労働者の精神的なケアや休職中のフォロー、そして復帰時の適切なサポートやリハビリ出勤の提供が重要となります。
目的は、復帰後の再発や離職を防ぐため。細やかなケアとフォローアップが求められます。
・職場復帰支援プログラムの構築
・職場復帰支援プランの作成 など
企業が行う「4つのケア」
「3段階の予防策」と「4つのケア」を計画的に持続的に行うことで、労働者のメンタルヘルスの問題を未然に防ぐとともに、発生した場合も適切に取り組むことが可能です。
メンタルヘルスのトラブルによる休業や退職を避けるため、メンタルヘルスケアの基本的な考えをもとに、対策を進めていきましょう。
セルフケア【労働者本人】
セルフケアは、労働者本人が自身のストレスと向き合い、その存在に気付いた際に適切な方法で応じることです。
セルフケアをうまく実践するためには、適切な知識が不可欠であり、事業者が労働者に対して情報や研修を提供することが求められます。まずは、ストレスの認識を高めるために、ストレスチェックを行うことは効果的です。
・ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
・ストレスチェックなどを活用したストレスへの気付き
・ストレスへの対処
ラインによるケア【職場マネージャー】
ラインケアは、管理者や監督者が職場内のストレス原因を理解し、それを改善する役割を持っています。
マネージャーは労働者の悩みや相談を受け入れ、労働環境の改良などの適切な措置を講じます。管理者や監督者が労働者の心の健康をサポートするためには、メンタルヘルスに関する研修を受けて、予防的な視点を養うことが重要です。
・職場環境等の把握と改善
・労働者からの相談対
・職場復帰における支援 など
産業保健スタッフ等によるケア【会社全体】
産業保健のプロフェッショナルたち、例えば産業医や衛生管理者などは、職場でのサポート役として活動します。セルフケアやラインケアの取り組みをサポートし、推進する役目を果たします。
個別のケアサポートにとどまらず、メンタルヘルスに関する研修の計画や実施、労働者の相談に乗るための制度や仕組みの構築も担当します。
・具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
・個人の健康情報の取扱い
・事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
・職場復帰における支援、など
事業場外資源によるケア【外部との連携】
外部専門機関によるケアは、メンタルヘルスの専門家たちが提供するサービスや知識を取り入れるアプローチです。
企業内での相談を避けたい労働者や、企業独自のメンタルヘルスの課題を外部の専門家の助けを借りて対応したい場合に、このようなケアが特に役立ちます。
・情報提供や助言を受けるなど、サービスの活用
・ネットワークの形成
・職場復帰における支援、など
メンタルヘルスケアの今後の展望
近年、企業におけるメンタルヘルスケアへの認識は飛躍的に向上しています。この背景には、労働者の心の健康が組織の生産性や持続可能性に深く影響するとの認識が広まっているためです。
今後の展望として、AIやテクノロジーを駆使した心の健康サポートツールの導入が進むことが予想されます。これにより、早期のストレス検出や対処が可能となるでしょう。また、フレキシブルな勤務体系の採用が進められ、従業員のワークライフバランスの向上が図られる可能性があります。さらに、社内教育においてもメンタルヘルスの重要性を伝える研修が増加し、全従業員が心の健康を維持する手助けを受けられる環境が整備されるでしょう。これらの取り組みは、企業の持続的な成功にも寄与すると予測されます。企業に合ったメンタルヘルスケアの推進が求められます。
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